社会起業家・平原依文 8歳の中国留学と人生を変えた母の言葉

親子で楽しくかしこく学ぼう、SDGs×教育 #4

編集者&ライター:奈良岡 周

幼少期は中国、カナダ、メキシコ、スペインで過ごし、多感な時期に多様な価値観に触れて育った社会起業家でSDGs教育支援会社代表でもある平原依文さん。幼少時代はどんな子どもだったのでしょうか。「社会の境界を溶かす」がライフパーパス(人生の目的)となった留学のきっかけや、8歳の平原さんをひとりで中国へ見送ったお母さんの教育方針、子どもが多様な視点を持つために親ができることについてお話を伺いました。
(全4回の4回目)

社会起業家でSDGs教育支援会社代表でもある平原依文さん 撮影:矢野拓実

子どもたちは“体験”を通して学んでいく

アドベンチャーワールドさんとのコラボイベント(2022年開催)では、30名近くの子どもたちが参加してくれました。オンラインではありましたが、動物たちのそばにぎりぎりまで近づいたり、事前に参加家族宅に届けられたパンダの食料の竹を手にしてみたりと、学校教育とは違った“体験”をしていただきました。

日本にとって主要課題とされている「【目標14】海の豊かさを守ろう」「【目標15】陸の豊かさも守ろう」に関しても、体験を通しての驚きや発見が子どもたちの好奇心に火をつけたのではないか、と手ごたえを感じています。

印象的だったのは、子どもたちから質問が次から次へと出てきたこと。参加してくれたある女の子が、「イルカの天敵って何ですか?」「パンダの天敵って?」と、なぜか天敵シリーズの質問ばかりしてきて、とてもかわいらしかったです(笑)。

参加された親御さんからも「自分も知らなかったことがいっぱいだった」「あのかわいいパンダの食べている竹がSDGsの掲げている課題に繋がっているとは思わなかった」などと感想をいただきました。次に動物園に行ってパンダを見る時の視点は確実に変化していると思います(笑)。

世界の共通言語であるSDGsを“体験”を通して学んでいけるイベントは、今後も企画していきます。SDGsネイティブともいえる子どもたちには、いろんな体験にチャレンジしてもらいたいですね。

子どもが多様な視点を持つため、親ができること

私が学生時代から抱いている人生の目的に「社会の境界線を溶かすこと」があります。日本国内だけを見ても様々な境界線がたくさんありますが、動物と人間の生活にも境界線がありますし、親子の間にもあります。

私自身の「人生を変えた体験」についてお話しさせていただきます。幼少期から中国、カナダ、メキシコ、スペインと、いろんな国に留学し、生活した体験によって多様な価値観に触れ、「自分の人生の羅針盤」を持ちました。

最初の留学は8歳の時。学校で同級生からいじめを受けたのですが、私の次のターゲットとなった中国人の同級生の芯の強さに刺激を受け、親を説得し、たった一人で中国にわたりました。

私の母は、中国の全寮制の学校へ単身で転校することとなった私を巡って周囲からさんざん叩かれたそうです。「育児放棄なんじゃないか」「何を考えているのか」「それでも親なのか」などと。
成人してから「あの時、どうして私のことを信じて中国に送り出してくれたの?」と母に聞いたところ、「他人と比べるんじゃなく、自分の呼吸に合わせることが大事だから」と答えました。

私の母は学生時代に陸上競技を本格的にやっていたのですが、走っている最中で一瞬でも後ろを振り向くと抜かされてしまうのだそうです。

「親子も一緒で、二人が呼吸を合わせて、同じ方向に進むことが大事。いいと思えたら、それが成功」と。

「期待はしないけど信じるの。他の子や家族と比較せず、あなたとの呼吸を合わせることを、ママはいちばんにしてきた」――なぜなら、子どもを愛しているから。母がこれまでこだわりぬいてきた教育方針がずっと心に響いています。

親子間で感情をおさえていませんか?

こうして送り出してくれた母の愛情は実にありがたいものでしたが、いっぽうで小さい子どもが単身で中国に留学するのは大変なことだらけでした。日本とのカルチャーギャップの中で特に驚いたのは、中国の人たちが誰にも遠慮せず、喜怒哀楽豊かにしゃべっていることです。

子どもながらに、自分の気持ちをストレートに出すのは悪いこと……という価値観があったのですが、相手に伝えるために全力を尽くすこと、正しく伝わるように自己表現をすることって大事だな……と感じたんです。

日ごろ感情をおさえていると、家族でもお互い何を考えているかわからないことってありますよね。そんな時は、休みの日をつかってアドベンチャーワールドのような場所に親子で出かけてSDGsについて楽しく学んだり、SDGsがテーマの絵本を一緒に読みながら身近な社会課題についてわいわいディスカッションするのはいかがでしょうか。

たとえば「なんでお寿司屋さんには女性の職人さんがいないの?」など、日常のテーマから「【目標5】ジェンダー平等を実現しよう」について子どもの考えを聞けたりもするでしょう。

私が人生をかけて取り組んでいるSDGs教育には、正解というものがありません。なぜなら取り組むことによって社会が変わり、また新たな課題が出てくるからです。その繰り返しによって地球を維持できるはずです。

まず親子でSDGsの17のゴールについて話をしてみること、私たちの生活の中で今からできることは何か?の対話を始めてみませんか。

構成/奈良岡周 撮影/矢野拓実

平原依文(ひらはら・いぶん)
HI合同会社 代表/青年版ダボス会議 One Young World 日本代表

早稲田大学国際教養学部卒業。小学2年生から単身で中国、カナダ、メキシコ、スペインに留学。「地球を一つの学校にする」をミッションに掲げるWORLD ROADを設立し、世界中の人々がお互いから学び合える教育事業を推進。2022年にはライフパーパスである「社会の境界線を溶かす」を実現するために、HI合同会社を設立。SDGs×教育を軸に、学生と企業が一緒になって社会課題を解決するプロジェクトを主軸に活動。共同著書『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』(いろは出版)。

平原依文さんおすすめ! 子どもたちに学びを届ける「おはなしSDGs」シリーズ

子どものためのSDGs入門書「おはなしSDGs」シリーズ<第二期>セット。各巻では、SDGsの17のゴールからひとつをピックアップし、一流の童話作家が「物語の楽しさ」を第一に書き下ろしで執筆しています。平原さんがシリーズの中で特に注目したのは『ジェンダー平等を実現しよう すし屋のすてきな春原さん』

【シリーズ「おはなしSDGs」の特色】
・各児童文学賞受賞作家やベストセラー作家など、現代を代表する一流童話作家の書き下ろし作品です。「物語の楽しさ」を第一に書かれた作品は、どの一冊をとっても、すぐれた児童小説として楽しむことができます。

・実力のあるイラストレーターによる挿絵が多数掲載され、確実に物語を読み通す手助けとなります。

・各巻とも、SDGsが掲げる17のゴールのうちの一つがテーマとなっており、いま世界が協力してその目標に向かわなくてはならない理由が自然と理解できるストーリーが展開されます。

・本文中に、物語とリンクさせるかたちで、関連する図表、グラフ、年表などが入ります。さらに、各巻の巻末で、テーマとしたSDGsのゴールについてくわしく解説しますので、テーマ学習の教材としても使用できます。

・SDGs全体について解説する「総論編」も刊行します。さまざまなゴールをテーマにした物語と、「総論編」を併読することで、SDGsについての理解がさらに深まるように設計されています。

・A5判、80ページ(一部カラー)。朝読書にもぴったりのボリュームです。

ならおか あまね

奈良岡 周

編集者&ライター

編集者&ライター。出版社にて雑誌(女性ファッション誌、情報誌、週刊誌)、書籍(実用、人文、エンタメ、文芸、漫画など)の編集を経...