「自分はこれが好き」と伝えられる子どもを育てる 人気美術講師が園児〜中学生に「好きノート」を書かせる理由
「こどもアトリエ みかづき」の親子で楽しむアート 第5回「絵の中にとびこもう〜部分コラージュ2種〜」
2024.04.13
幼稚園から中学生の子どもたちを対象とした少人数制の造形絵画教室「こどもアトリエ みかづき」。
この教室(アトリエ)では、のびのびと創作できる空間を子どもたちに提供し、自由で個性あふれる創作活動をサポートしています。
このアトリエで自分の感性に気づくことで、子どもたちの潜在能力が花開き、想像力という才能の実が大きく育っていくのです。
そんな「みかづき」の主宰者である、デザイナーのあじとみあつこさんが、子どもの個性を伸ばすアートワークを紹介してくれます。親子でも楽しめる独創的なアートワークを、ぜひ楽しんでみてください。
“好き”をあつめるノートって?
こんにちは。『こどもアトリエ みかづき』のあじとみあつこです。
2年前、アトリエに通う子どもたち全員にノートを1冊ずつ手渡し、ここに自分の「好き」を集めるよう、すすめました。時間があるときに、興味があるもの・好きなものを描いたり、切り抜きを貼ったりしてほしいと。
そして、ときどき提出してもらうね、と伝えました。
この“すきノート”は、本人にとってはネタ帳のようなもの。何を表現しようかと迷ったときのヒントになります。
親にとっては子どもの成長記録、大切なアルバムになるでしょう。さらに、わたしにとってはコミュニケーションの素になるだけでなく、課題づくりや制作時のアドバイスをするのに役立ってくれています。
たとえば、5歳の女の子が「ゆめかわがすき!」とユニコーンやウサギをノートにたくさん描いているのに、作品の色づかいは特にパステル調のゆめかわでないことに違和感を感じることができました。その後、クレパスの混色「アイスクリームタワー(白であま~くおいしくな~れ)」をある日の課題にしたことがあります。
クレパスの色には限りがあるけれど、白をかさねることでビビッドなピンク色も、好みの淡いパステルカラーに変えられることを伝えることができました。
エピソード⑤「見せられないすきノート……」
幼年〜小学校低学年の“すきノート”は、ネタ帳というより自由帳。そして、わたしとの交換ノートのような楽しみ方です。
そもそも、アトリエの日にはこちらがたずねなくても競うように話してくれる子が多いので、1人1人の好みは把握できているかもしれません。
わたしがもっとも“すきノート”を必要としているのは、高学年や中学生の子たちです。
ノートを始めたきっかけでもありますが、高学年以上で在籍歴の長い子どもたちを集めたクラスでは、集中力が養われて制作中の脱線や余談が減っていきます。
「この間の連休どこか行ったー?」……すら言い出せない雰囲気の時があります(笑)
この瞬間、私のアドバイスはもちろん、存在すら必要でないことは明らか! 少しの虚しさはあるものの、喜ぶべき状況ですよね。
ただ、個別に課題を提案しているクラスだからこそ、興味のカケラを拾いたいときは、会話もしくは“すきノート”が必要というわけです。
「推しは青色か……このグループはよく知らないなぁ……」
「え! 休日に作り置き!?? お料理するの!?」
ノートの中にはトレンドと驚きがいっぱい。調べないとわからない、調べてもよくわからないジャンルもあり、新たなコミュニケーションの素となります。