日本語に「一人称」がたくさんあるワケ 【ことばのふしぎ大冒険14】

第5話 自分は「私」「あたい」「拙者」?(2)

コピーライターの川上徹也氏とグラフィック・クリエイターの春仲萌絵氏による新感覚・日本語エンタメ本が話題だ。今回のテーマは「日本語にたくさんの一人称、二人称があるワケ」。大人になると、いろいろな一人称を使い分けている?

本記事は発売中の書籍『もえとかえる ことばのふしぎ大冒険』の一部を抜粋・編集したものです。

前回のお話はこちら

かえる大納言
「それは……『日本語は相手によって自分の立場を変える』から!

だケロ」

一人称が変わると人格も変わる?

かえる大納言
「日本では、そのときどきの自分に合わせて、『自分のよび方を変える』必要があったんだケロ」

もえ
「は? そのときどきの自分?? どゆこと?」

かえる大納言
「たとえば、37歳の男性サラリーマン・よしおの場合と、19歳の女子大生・まいの場合を見てみよう」

もえ
(だれ??)

もえ
「おお、自分をさす言葉が変わると、人格が変わってる」

かえる大納言
「そうなんだケロ。

自分をさす言葉が変わると、しゃべる言葉も変わり、その結果、人格までも変えてしまうのが日本語……かもしれないね」

もえ
「大人ってたいへんだー」

自分は「自分」、相手も「自分」?

かえる大納言
「ちなみに、大阪、京都など関西の一部の地域では、話し相手のことを『自分』ってよぶこともあるよ」

もえ
「あー、テレビで芸人さんがそういうふうにしゃべってるの、見たことあるかも。

『自分、ようしゃべるカエルやなぁ』みたいな感じでしょ」

かえる大納言
「じつは日本語には、こんなふうにもともと自分のことをさしていた言葉が、時代をへて『相手』のことをさす言葉としてつかわれるようになることがあるんだケロ』

もえ
「たとえば?」

かえる大納言
「たとえば、迷子の男の子に対して『ぼく、迷子なの?』とよびかけることがあると思うけど、これも、もともと自分のことをさす『ぼく』という一人称を、相手のことをさす二人称としてつかっているんだケロ」

かえる大納言
「あと、乱暴な言葉だからもえ殿はつかっちゃダメだけど、ケンカのときに相手のことを『てめぇ』といったりすることがあるケロ」

かえる大納言
「この『てめぇ』っていうのは、もともと自分のことをさす『手前』という言葉からきているケロ。

日本語には『手前みそ』って言葉もあって、これは『自分でつくったみそ』という意味。

だけど、慣用句として『自慢をする』という意味でつかったりするよ」

<次回>
かえる大納言のライバル、襲来!?

つづきはこちら!
※公開日(12月20日)までリンク無効
※毎週土曜・水曜に更新

『もえとかえる ことばのふしぎ大冒険』
川上徹也、春仲萌絵(著)
定価:1,540円(税込)
ISBN:978ー4-06-533053-1
イラスト©春仲萌絵
読者対象:小学校4年生以上

日常生活のなかにある「ことばのふしぎ」を通じて、国語の楽しさ・奥深さが、マンガとイラストで楽しく学べる新感覚・日本語教養エンタメ本です。

かわかみ てつや

川上 徹也

Kawakami Tetsuya
コピーライター

大阪大学人間科学部卒業後、広告会社勤務を経て独立。「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」の第一人者として知られる。言葉のプロとして日本語の成り立ちや語源についても研究を続けており、その奥深さや美しさを「やさしく深くおもしろい」をモットーに伝えていくことを使命にして、作家活動を続けている。 著書は『マンガで笑って、言葉の達人!超こども言いかえ図鑑』(Gakken)、『仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ』(ポプラ社)、『ザ・殺し文句 』(新潮新書)、『400年前なのに最先端! 江戸式マーケ』(文藝春秋)などがある。海外にも20冊以上が翻訳されている。

大阪大学人間科学部卒業後、広告会社勤務を経て独立。「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」の第一人者として知られる。言葉のプロとして日本語の成り立ちや語源についても研究を続けており、その奥深さや美しさを「やさしく深くおもしろい」をモットーに伝えていくことを使命にして、作家活動を続けている。 著書は『マンガで笑って、言葉の達人!超こども言いかえ図鑑』(Gakken)、『仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ』(ポプラ社)、『ザ・殺し文句 』(新潮新書)、『400年前なのに最先端! 江戸式マーケ』(文藝春秋)などがある。海外にも20冊以上が翻訳されている。

はるなか もえ

春仲 萌絵

Harunaka Moe
グラフィック・クリエイター

1997年生まれ。埼玉県出身。跡見学園中学・高校、学習院大学経営学科卒業。2017年よりグラフィックレコーディングを開始し、多くのイベントや会議、セミナー等へ参加。グラレコのほかに図解イラストやホワイトボードアニメーションなど、グラフィックの力を使って想いを彩る「グラフィック・クリエイター」として幅広く活動中。やわらかさ、あたたかさ、エモさにこだわった手描きのイラストや文字での表現を得意とする。 主な仕事として『400年前なのに最先端! 江戸式マーケ』(川上徹也/文藝春秋)の図解イラスト、テレビ朝日「おるおるオードリー」やTOKYO FM「山崎玲奈の誰かに話したかったこと。」(ダレハナ)でのグラレコなどがある。

1997年生まれ。埼玉県出身。跡見学園中学・高校、学習院大学経営学科卒業。2017年よりグラフィックレコーディングを開始し、多くのイベントや会議、セミナー等へ参加。グラレコのほかに図解イラストやホワイトボードアニメーションなど、グラフィックの力を使って想いを彩る「グラフィック・クリエイター」として幅広く活動中。やわらかさ、あたたかさ、エモさにこだわった手描きのイラストや文字での表現を得意とする。 主な仕事として『400年前なのに最先端! 江戸式マーケ』(川上徹也/文藝春秋)の図解イラスト、テレビ朝日「おるおるオードリー」やTOKYO FM「山崎玲奈の誰かに話したかったこと。」(ダレハナ)でのグラレコなどがある。