友だちと一緒に探究する意義とは
4歳児クラスの探究活動では、さらに活発化した「周囲との関わり」が見られました。
友だちがマイクロスコープで観察している隣で順番を待っていた子が、ただ見ているだけではなく「これは何だろうね?」と疑問を共有しながら自分も観察し、「こっちもやってみたら」と一緒にその子の探究に参加し始めました。
ほかのグループでは、最初は別々に活動していた二人が途中から共同で作業を始め、「これだと色が映らないね」「虫眼鏡はいらないかも」「見えた?」などと話し合いながらマイクロスコープの当て方を調整しています。
3歳児クラスでは、友だちの活動や発言に興味を持って見つめたり感想を話したりする程度にとどまっていましたが(詳細は前編参照)、4歳児クラスの子どもたちは積極的に言葉を交わしてアイデアを出し合い、そこから生まれる新しい世界を楽しんでいました。
こうした探究活動を可能にしているのは、先生方の発達段階に合わせたきめ細かいテーマ検討や環境設定です。
2025年度の4歳児クラスのテーマも3歳児と同様に「自然」ですが、子どもたちが特に色への関心を高めていたことから、グループ別に探究する「色」を決め、その色の自然を観察することで活動を進めました。
グループごとに共通項を設けたことで、子どもたちが一緒に考えやすいようにと活動がデザインされていました。
自分の疑問や発見を大切にしながら、友だちの考えにも好奇心を持つ。そして、尊重しながら交流する。こうした経験の積み重ねが、非認知能力ともいわれる「他者との共創」や「自分で人生を切り開く力」へとつながっていきます。
探究が保護者にも広がった「仕掛け」とは?
子どもたちが探究活動で味わっている「対象にじっくり向き合う楽しさ」「考えるおもしろさ」を保護者にも伝えたい。そして、子どもたちの探究に一緒に参加してほしい。渋谷保育園の先生たちは、かねてからそう考えてきました。
これまでは、展示やお手紙配付などの「伝える」活動が中心でしたが、2025年度の3歳児、4歳児クラスではもう一歩踏み込み、探究活動のスタート時にこれまでとは異なるアプローチを取り入れました。
「家族で一緒に考えて、『自然だと思うもの』を持ってきてもらうように保護者に依頼しました。ご負担になるかなという懸念もありましたが、みなさん快く協力してくれて、どの家庭も子どもたちと一緒に『自然って何だろう』と話し合いながら、持参するものを選んでくれたようです。きょうだいがアイデアを出してくれたというご家庭が多かったですね」(高橋先生)
活動開始前に探究の目的を共有し、参加する仕組みを作ったことで、保護者は例年以上に活動に興味を持ち、継続して関心を寄せてくれました。子どもをお迎え後、アトリエ(探究活動専用スペース)に寄って、親子で対話する姿もたくさん目にしたと話す高橋先生。
渋谷保育園の探究活動は園内にとどまらず、保護者、そして家庭にも広がっています。
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シリーズ「乳幼児からの探究」では、東京都が推進する「とうきょう すくわくプログラム」の支援を受けて探究活動に取り組む乳幼児施設を紹介しています。都内では、2025年度中に約3300の幼稚園、保育園、こども園等で実施見込みとなっています。
本記事で紹介した渋谷保育園では、少人数での対話を大切に、先生が子どもたちにじっくり向き合い問いかける探究活動を行っていました。
そうした先生たちの姿勢は、家庭で子どもと向き合う保護者にも大いに参考になります。
子どもに「将来役に立ちそうな何か」を強制したり誘導したりする必要はなく、その子のありのままの姿や言葉を受け止めて、ともに楽しむ。それこそが、子どもの好奇心や興味・関心を高める「秘訣」なのではないでしょうか。
忙しい日常の中でも、「子どもと一緒におもしろがる」ことを忘れないようにしたいものです。
取材・文 川崎ちづる
【乳幼児からの探究 渋谷保育園の挑戦 前編】の連載は、全2回。
前編を読む。
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川崎 ちづる
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。