小学生の「不読者」30%時代 子どもの読書量を増やす“読書ゲーム”とは?

作家・書評家 印南敦史さん「読書ゲームメソッド」#1 ~子どもたちの読書量~

作家・書評家:印南 敦史

ゲームのように読書を楽しむ、読書ゲームメソッドとは?  写真:アフロ
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1990年代後半まで深刻化していたとされる「子どもの本離れ」は、さまざまな取り組みによって、2000年代以降回復しつつあります。

2001年には、「子どもの読書活動の推進に関する法律(子ども読書活動推進法)」が施行されました。この第6条では、「父母その他の保護者は、子どもの読書活動の機会の充実及び読書活動の習慣化に積極的な役割を果たすものとする」とあります。

子どもに本を読ませることが、法律で決まっていたなんて!

でも、塾や習い事、ゲームに動画と、子どもたちの毎日は忙しく、なかなか「読書」が入り込む隙がありません。日常的な読書習慣をつけるのは、大変なことでもあります。

今回は、ご自身も本が大好きで年間700冊も読書をするという、作家で書評家の印南敦史(いんなみ・あつし)さんにインタビュー。

ゲーム感覚で読書を楽しむ方法、本好き家族になるためのとっておきの「読書ゲームメソッド」をご紹介します。
※全4回の1回目。

読書推進活動とその成果 近年は平均読書量の伸び悩み

近年、さまざまな「子どもに本を読ませるための」取り組みが行われています。

たとえば、全国8割以上の小・中学校では「朝読書」の時間を採用(※1)。「朝読書」とは、登校後、1時間目の授業がはじまるまでの10分程度、朝礼の時間などを使って本を読むというもの。
※1=朝の読書推進協議会調べ 「朝の読書」全国都道府県別実施率 2022年5月現在

この活動は、1988年に千葉県の2人の高校教師の提唱で始められ、全国の学校に広がっていきました。

また、昼休みなどの読書ボランティアの活動も増え、多くの小学校で読書時間の設定や読み聞かせが行われています。こういった取り組みへの成果があり、「本を読む子どもは、昔よりは増えている」とされるのです。

しかし、実はここ数年、子どもたちの読書量は伸び悩んでいます。

学研総合教育研究所が2021年に小学生1200名を対象とした調査(※2)によると、小学生全体では1ヵ月に平均2.9冊読んでいることがわかります。
※2=学研教育総合研究所・小学生白書web版(2021年8月調査)「小学生の日常生活・学習に関する調査」

これは2014年度調査(※3)の平均5.6冊と比較すると、約半分の冊数。ガクンと減っていることになるのです。
※3=学研教育総合研究所・小学生白書web版(2014年9月調査)「小学生の日常生活に関する調査」

学年別で最も読書量が多いのは小学1年生の3.6冊で、男女ともに学年が上がるにつれて読書冊数は減少傾向にあり、小学6年生では2冊に……。

また、1ヵ月に1冊も本を読まない小学生(不読者)は、全体の29.3%いることもわかりました。これは、2014年度調査時に「読まない」と答えた小学生が15.4%であるのに対して、7年間かけてその数が約2倍に増えてしまったことになります。

ちなみに、小学生全体で、男子の3人に1人、女子の4人に1人が、1ヵ月に1冊も本を読んでいない結果となったのです。

コロナ禍での遊び 読書よりもテレビやゲームが人気

読書量が減った子どもたち、何をしているのかを探ってみましょう。

光村図書出版株式会社が2021年、小・中学生の保護者500人に行った子どもの「好き」に関する調査(※4)でも、子どもたちの日々の過ごし方が垣間見られる結果が出ています。
※4=光村図書出版株式会社『子どもの「好き」に関するアンケート調査』

「余暇に何をすることが好きですか」という項目では、小・中学生全体で、1位が「ゲームをする(70.8%)、2位が「動画を見る」(62.0%)で、圧倒的な人気です。

3位「テレビ番組を見る」(48.8%)までを合わせると、コロナ禍もあってか、子どもたちは屋内でできることを好んでいる傾向にあることがわかりました。ちなみに、「読書をする」は、27.4%で、5位という結果に。

さらに、宇都宮市が、市内の小・中学生約3万8600人に行った調査(※5)によると、平日に動画を見る時間は平均1時間30分。
※5=宇都宮市 令和3年度「学習と生活についてのアンケート」

これに対して、平均読書時間は29分という結果に。子どもたちは、読書の約3倍の時間、YouTubeなどの動画をみていることになります。

これらのアンケートから、子どもたちの生活のなかで、ゲームや動画の占める割合がもっとも大きく、読書の優先順位はあまり高くないことがわかりました。

「楽しいことがたくさんあるんだから、読書時間が減るのは当たり前ですよ」と話すのは、作家で書評家の印南敦史(いんなみ・あつし)さん。

ご自身もふたりのお子さんを育ててきた経験から、「親からすると、本を読まない子に不満を抱いてしまいますよね」と言います。

「子ども1人に一方的に本を読ませようとさせるのではなく、家族みんなで読書を楽しめる環境をつくってみてはいかがでしょう。そうすれば、遊び感覚で読書を習慣化できるはずです」(印南さん)

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