事故から我が子を守る「歩かせ方」 危険な「ならず者運転」対策

交通ルールを守っていても事故に巻き込まれることはある…子どもに教えるべき悲しい現実

池袋の暴走事故をはじめ、子どもが交通事故の犠牲となるニュースは後を絶ちません。暴走運転、飲酒運転、あおり運転などなど、迷惑では済まされない運転を“ならず者運転”と名付けているのが、稲垣具志先生(中央大学研究開発機構准教授)。交通工学がご専門で、交通安全教育の啓発活動に取り組まれています。こうした交通社会の厄介者に、我が子が巻き込まれないためには? 対策と心構えを稲垣先生にうかがいました。

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提供:SENRYU/イメージマート

「運が悪かった」では済ませたくない!神出鬼没な“道路のならず者”対策

「ルールを守ると、ルールが守ってくれる」子どもにそう教えながらも、理不尽な事故の犠牲者のニュースを聞くたびに、切なさが募ります。

猛スピードで走り去る抜け道利用の車、一時停止をしない車や自転車を、見たことがない人はいないでしょう。体調が急変した運転者が暴走することだってあります。

そんな危険な運転から、子どもを守る対策はあるのでしょうか?

「自分が正しくても、誰かのエラーで事故が起きる可能性があることを、子どもにも説明しましょう。同時に、相手や状況を見て、考え、自分の行動を判断できるようになることが大切です。

たとえ青信号でも、こちらを見ていない車が近づいていたら、渡らずに様子を見る。ルールは守ることが目的ではなく、事故にあわないための手段ですからね。これが、自分の身を自分で守るセンスです。

歩道を歩くにしても、車道から離れた側を歩けばいいとは限りません。見通しの悪い交差点では、車が飛び出してくる危険もあります。車道寄りでも、民地寄りでも、危険を予測する必要があるのです。

これらのセンスは、子どもが実際に使う道で、個別に、具体的に、保護者が教えていくことでしか身につきません」(稲垣具志先生)

交差点に車が進入しようとしている。左寄りを走る車からは右に広く視界が開ける。また、運転者の注意も右からくる車両に注意が偏りやすいため、逆走する4・5・6の自転車に気づきにくい。また、順走でも1・2・3の順に見通しが悪くなり、歩道より車道を走る自転車の方が衝突を回避しやすい。ちなみに3・4・6は違法運転!

交通ルールを覚えて、自分で自分の身を守るセンスも日々磨いて……、こちらに非が一切なくても、避けられない事故はあります。想像したくはないけれど、我が子だって例外ではないはず。そんな、もしもの時のための心構えも、稲垣先生は教えてくれました。

「避けられない事故でも、衝突をやわらげる工夫はできるかもしれません。

歩道にある柵には、衝突をやわらげるガードレールのほか、横断を抑止する目的だけの強度が弱い横断防止柵があります。各自治体によって形状が異なりますから、身近な道路の柵が衝突に耐えうるものかどうか、子どもと一緒に調べてみるのもいいかもしれません。

当然ですが、自転車に乗るときは必ずヘルメットをつける。自動車に乗るときは、後部座席であっても、タクシーに乗るときであっても、必ずシートベルトを締めるといった習慣も幼いうちに身につけたいですね。ヘルメットやシートベルトによって、守られる命は格段に増えます」(稲垣具志先生)

残念ながら、完全な「ならず者」対策は見つけられませんでした。でも、そういう人がいるという知識が、いざという時の子どもの判断を助けてくれることを、願わずにはいられません。

そして、自転車や自動車を運転する大人の保護者も、日頃から安全運転に努めたいもの。図らずも自分が“ならず者”にならないように心がけることが、子どもたちの安全につながっていくのです。

取材・文/湯地真理子
編集プロダクション、出版社勤務を経て、独立。女性のライフスタイル、趣味実用、健康などの分野で、雑誌、書籍などの編集・執筆に携わる。理系オタクの息子&夫と暮らす文系ママ。

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いながき ともゆき

稲垣 具志

中央大学研究開発機構准教授

中央大学研究開発機構准教授。博士(工学)。令和2年より現職。専門は交通計画、交通安全対策・教育、ユニバーサルデザイン。独自の横断判断の研究データを元にした交通安全の講演は、人柄の良さが伝わる軽妙な語り口とともに、多くの自治体や学校で人気を博す。 また、一般社団法人日本福祉のまちづくり学会の理事を務め、東京オリンピック ・パラリンピックのアクセシブル・ルートのチェックにも尽力している。

中央大学研究開発機構准教授。博士(工学)。令和2年より現職。専門は交通計画、交通安全対策・教育、ユニバーサルデザイン。独自の横断判断の研究データを元にした交通安全の講演は、人柄の良さが伝わる軽妙な語り口とともに、多くの自治体や学校で人気を博す。 また、一般社団法人日本福祉のまちづくり学会の理事を務め、東京オリンピック ・パラリンピックのアクセシブル・ルートのチェックにも尽力している。