
子どもへの【戦争の伝え方】 小泉悠氏が語る「戦争が終わらない」本当の理由
東京大学准教授・小泉悠先生に聞く、現代の戦争と国際社会のリアル #1 (2/3) 1ページ目に戻る
2026.03.28
東京大学准教授:小泉 悠
「審判」のいない国際社会という教室
──ロシアのウクライナ侵攻が始まって2026年2月24日で5年目に入りました。まさかこれほど長引くとは……というのが正直な実感です。
小泉悠先生(以下、小泉先生):本当にそうですね。私の娘が2022年の侵攻開始のときは小学生でしたが、今年(2026年)の4月からは高校生です。他のご家庭では、子どもが生まれる前から戦争が続いている方もいるでしょう。
戦争があることが「日常」になってしまっていて、原因も忘れられ、「ロシアやウクライナはそういう国なんでしょ」と思われてしまうのが、僕は一番良くないことだと思っています。
──子どもに今のウクライナとロシアの状況を説明するとき、「引くに引けなくなったケンカ」という言葉を使うとわかりやすいと思います。しかしそう伝えると、子どもたちは「ケンカで悪いことをしたなら誰か止めてくれるよね」となり、答えに窮してしまいます。
小泉先生:学校と国際社会の決定的な違いは、学校には「先生」という権威者がいて、最悪の場合は力ずくでも止めてくれる。しかし、国際政治にはそういう「中央の権威」がいないんです。
国際政治学を学ぶ際、最初に教えられるのが「国際社会はアナーキー(無政府状態)だ」ということなのですが、世界には国の上に立ち、戦争を止められる権威者がいないのです。
──国連は「審判」にはなれないのでしょうか?
小泉先生:かつての国際連盟や、今の国際連合は、平和と安全、国際協力のための普遍的な機関として、国際的な「警察や政府」を作ろうとした試みでした。でも現状、人類はまだそれを作れていません。
つまり引くに引けなくなったケンカを「やめなよ」と言いに行ける人がいないし、強制的に止められる人もいないのです。
──アメリカや中国なら、その役割ができるのでは?
小泉先生:理論上はそうです。ロシアは核兵器を持っていますから、それを正面から止められるのは、同等の核を持つアメリカか、あるいはロシアに対して経済的・政治的に強い発言力を持つ中国くらいでしょう。しかし、中国は今のところロシアとケンカしてまで戦争を止める気はありません。
では、期待されるアメリカはどうか。実はアメリカがそこに割って入って戦争を止めるには、大きく分けて二つの方法しかありません。
一つは、ロシアを軍事的に完膚なきまで叩きのめして、ウクライナから完全に追い出すというやり方。もう一つは、逆にウクライナに対して「ロシアに降参しなさい」と強要するやり方。この二つです。
































