【起立性調節障害:OD】中学生の約1割が発症! 正しい解決法を専門医が伝授

#2 起立性調節障害かも?と思ったら

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小学校高学年から高校生くらいの年代に多く発症するといわれる「起立性調節障害」(OD)。中学生の約1割にみられ、不登校のお子さんの3〜4割がこの病気を併存しているといわれています。朝起きられず学校には行かないのに、夜は元気な様子でなかなか寝ない子どもを見て、不安や心配になる親御さんも多いはず。

今回は、子どもがODかもしれないと思ったら、親はどのように対応したらよいのかを昭和大学病院小児科教授・田中大介先生にうかがいました。


全3回の2回目

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起立性調節障害かもしれないと思ったら

──ODの症状のある子どもたちと向き合うとき、大人が気をつけるべきことはなんでしょうか。

田中先生:子どもが学校を休む日が増えてくるにつれ、親御さんの心配は募りがちです。本人のやる気の問題かと思ったり、生活習慣の問題かと思ったり、また、自分の育て方が悪かったのかしらとご自身を責める場合もあります。

一方、本人は自分の状況を受け入れている場合もあれば、口には出さずとも、とても悩んでいる場合もあります。「みんなができることができないのは自分がダメな人間だから」「このまま治らない」「先がみえない」──自尊感情の低下や悲観的な思いは、回復を遅らせる要因になりかねません。

ODの症状は心理的な状態にも影響されます。子どもの自尊感情の低下は症状を悪化させ、悪化する症状がさらに自己否定感を強めるという悪循環に陥りやすくなります。だからこそ必要なのは、ODという病気への正しい理解です。そして、身体面はもちろん、心理面における周囲のサポートが必要不可欠となります。正しい理解と周囲のサポートが悪循環を止める鍵といえます。

OD悪化のよくあるパターン

田中先生:起立性調節障害(OD)の発症後、理由のわからない不調が続くうちに本人のなかに生まれやすいのが、「自分の努力不足」という誤解です。症状に苦しむ子どもが自分自身を責め、自尊感情を低下させていくほど、事態はこじれやすくなっていきます。

1)突然の発症に戸惑う
思いがけない体調不良に見舞われ、なかなか改善しない──不安や戸惑いが生じるのは当然です。

2)何とかがんばろうとする
症状に苦しみながらも、がんばって学校に通い続けようとします。

3)うまくいかない
ODの症状が強い場合、「がんばり」だけでは克服できません。何故なら、ODは自分の意志ではコントロールできない自律神経が原因の疾患だからです。

4)周囲の激励、あるいは心配、さらには周囲の誤解
まわりの人、親や学校の先生などからの𠮟咤激励、過剰な心配にプレッシャー(焦り)やストレスを感じます。怠けやサボリと誤解され、「自分のつらさをわかってもらえない」と落ちこんだり、自暴自棄になったり……。

5)「自分がダメだから」という誤解
理由がわからないまま、症状に苦しめられる日々が続き、それに対して周囲からあれこれ言われるうちに、自尊感情は低下しやすくなります。「自分はダメ」「ダメだから治らない」「高校や大学にも行けないかもしれない」などと、将来を悲観する気持ちも生まれやすくなります。

6)症状の悪化
先のみえない不安、自尊感情の低下は、症状の悪化をまねきやすく、症状の悪化がますます「自分はダメ」という思いを強めるという悪循環が起こりやすくなります。

田中先生上記を踏まえて、ここで「学習性無力感」について説明したいと思います。

自分の気持ちや努力では改善できない症状が続き、いくら頑張ってもやりたいことができない状態が続くと、いつしかあきらめの気持ちが生じます。これを心理学的には「学習性無力感」といいます。

たとえば、「学校に行きたい、でも行けない」という状態が続くと、あきらめの気持ちが生まれ「もう学校に行きたくない」と思うようになることがあります。周囲はそのような状況を踏まえて対応していくことが大切です。

「今日も休んでしまった」「朝起きられなかった……」などと毎日自分に「ダメ出し」をして、「明日は行けるかな……」などと不安を募らせる毎日は、精神的に不健康であることは言うまでもありません。

私は、検査でODの診断がついたあと、しばしば「今まで本当によくがんばって来たね」と声をかけます。そして、「これからの作戦を立てよう。がんばりすぎずにがんばろう」と伝えることもあります。そんなとき、患者さんの表情が少し和らぐように見えます。

ODの経過を追ううえで大切なことは、ODの正しい理解と同時に、いまは自分の体調に合ったリズムで生活すること、ハードルを思いきり下げて目標を設定し、そして「それができればOK!」と思えることだと私は切に思います。

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