【起立性調節障害:OD】朝起きられない子どもたち 親が大切にしたい3つのこと

#3 「やる気」や「生活習慣改善」だけでは治らないODとの向き合い方

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思春期に多く発症し、中学生の約1割にみられるという「起立性調節障害」(OD)。ODは、子ども自身のみならず、家族全員にとって、苦しいものになりがちです。体調不良が続く子どもを前に、親の不安や心配も募りますが、あせったところで回復が早まるわけではありません。

子ども自身が力を蓄えていくために有効なかかわり方を昭和大学病院小児科教授・田中大介先生にうかがいました。

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起立性調節障害の子どもとの向き合い方

──「状況の改善につなげたい」という思いから、親はあれこれ口を出したくなってしまいますが、子どもの気持ちはどうなのでしょうか。

田中先生:起立性調節障害(OD)のために長期間にわたって学校に通えなかった人に「親にしてもらってよかったことは?」と尋ねたら、「放っておいてもらったこと」と答えた、というエピソードがあります。

日々子どものために心を砕いている親御さんには釈然としない返答かもしれませんが、思春期の子どもが親の干渉をいやがるのはごくふつうのこと。「愛情のある放置」をお願いしたいところです。

大人が思う以上に子どもは考え、自分の未来に向けて強い決断をしている場合が多いものです。手や口を出しすぎず、子どものペースに合わせた支え方を考えていきましょう。

子どものなかにいる「3つの自分」

田中先生:症状が重く、登校できない日が続いている場合でも、子どもはただ漫然と過ごしているわけではありません。子どものなかには「3つの自分」がいて、現状を自分なりに受け止め、対応しようとしているととらえられます。

1)困っている自分
「学校に行けない、勉強についていけない」「なぜいつまでも治らないのだろう」と、自分自身の身に起きている事実を受け止め、悩み、困っている。

2)自分を守ろうとする自分
「調子が悪いんだから、家にいたっていいんだ」「悩んでいてもつまらないから、好きなことをするぞ」と、困ったままの自分を守り、押しつぶされないように行動したり、考えたりする。

3)未来を考える自分
「普通の高校には通えそうにない」「大学か専門学校に行けたらいいな」など、中学3年生くらいになると、高校進学やその先の未来について考えるようになる。

田中先生:もちろん、子どもたち自身が、「3つの自分」を明確に理解し、自覚しているわけではありません。悩みながらも、それでも腹をくくっているとも言えます。私は、そのような子どもたちに、強さ、そして賢明さを感じることさえあります。

親の心がまえ やるべきこととは?

──回復に時間がかかると言われているODですが、親はどのような心がまえでいれば良いのでしょうか。

田中先生:順調な回復を実感できれば、親子ともども前向きな気持ちを保ちやすいのですが、起立性調節障害(OD)の回復には時間がかかることも少なくありません。思春期ならではの難しさもあり、子どもとの関係がぎくしゃくしてくることもあります。それでも、子どもの味方であり続けるうちに、必ず未来への道は開けてくるものです。

回復に向けて子どもとともに歩み続けるには、大人自身のエネルギーも必要です。抽象的ではありますが、子どもに対する「やさしさ」と「情熱」が、エネルギーをつくりだす源になるでしょう。

そして、周囲の大人たち自身の心がパンクしないように、ときには自分のために、好きなものを食べたり、カラオケで大きな声を出したり、体を動かしたりすることも大切です。

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子どもの“やりきれない気持ち”を表すサイン

田中先生:子どもには子どもなりの考えがありますが、どうしようもなくやりきれない気持ちを、大人を困惑させるような言葉や行動として表すこともあります。

1)親と話そうとしない
「なにを考えているのかわからない」「顔にも口にも出さない」と嘆く親御さんは少なくありません。しかし、なにも考えていないわけではないのは、「子どものなかにいる3つの自分」でお話ししたとおりです。

2)ギョッとするようなことを言う
「早く死にたい」「未来のことは考えられない」などと、破滅的な言葉を口にすることも。親としては、とても尋常ではいられないでしょう。「そんなこと言わないで!」と言いたくなりますが、「それほどつらいのだ」ととらえることもできます。まず、そのつらさに共感することが大切ですが、主治医やスクールカウンセラーに相談してください。抑うつ状態が強い場合には、専門的な医療対応が必要になることもあります。

3)イライラして荒れている
普通に話しているつもりが、遠慮のない言い合いに発展したり、子どもが激しく怒りをぶつけてきたりすることもあります。心理的な距離の近さの表れでもあると考えてください。母親だから、父親だからこそ言えるのです。

子どもの言動を表面的にとらえるのではなく、その裏にある思いをくみ取りながら、子どもと向き合っていけるとよいですね。

親が大切にしたい3つのこと

1)あせらない
ODの経過はしばしば長くなります。「いつまでこの症状が続くのか」と憂いたり、「このままでは子どもの人生に大きな影響が出てしまう」などとあせるかもしれません。親があせると、子どもは「自分は親の期待に応えられないダメな子だ……」と思ってしまうこともあります。とくに母親は子どもにとって安全基地のようなものです。どんと構えて、子どもを支えていきましょう。

2)あきらめない
ODでは、あまりにも体調が悪く、ときには断念しなくてはならないこともあります。しかし、あきらめることはありません。いまできることができれば、OKなのです。多くの子どもは時間とともにODが改善したり、ODとうまくつきあえるようになったりして、自分の未来に向かって少しずつ歩いていきます。そんな子どもをぜひ支えてください。

3)愛情を注ぐ
子どもが育つうえで、愛情が必要不可欠であることは言うまでもありません。ODは日常生活に大きな影響を与え、それまでとは異なる子どもの一面が見えてくるかもしれません。反抗したり、無視したり、自暴自棄になることも……。しかしそのようなときこそ、近すぎず、離れすぎず、見守り、相談にのってあげてください。我が子がどのような状況であっても、親が愛情を注ぎつづけること、子どもにとって、それほどうれしいことはありません。「どんなときでもあなたの味方」というメッセージが子どもに伝われば、大きな力になります。

田中先生:ここに示した3つのこと、「あせらず、あきらめず、愛情を注ぐ」ことは、親のみならず、周囲の大人が子どもたちと接するうえで、大切なことです。ぜひODの経過を長い目でやさしい気持ちで支えてほしいと思います。

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