【起立性調節障害:OD】中学生の約1割が発症! 正しい解決法を専門医が伝授

#2 起立性調節障害かも?と思ったら

受診について

──ODが疑われる場合、どんな病院に行けばよいのでしょうか。

田中先生:ODと考えられる場合でも、症状が軽ければ、診断も治療も受けないまま自然に回復していく例もあります。しかし、具合の悪さが続くようなら、隠れた病気がないかどうか確かめるためにも医療機関への受診をおすすめします。

早期に診断をつけ、早い段階から適切な対応を続けていくことは、ODの悪化を防ぎ、また回復を促していくための一助になります。

■年齢によって変わる受診先をチェック!
起立性調節障害(OD)は小児科が中心となって診療をおこなっていますが、高校生以降の初診では成人の診療科への受診となることが多いです。

□小学生(6~12歳)/中学生(12歳~15歳)
小児科へ
有病率が高いこともあり、ODは小児科領域ではよく知られた病態です。多くの小児科では、中学生までは初診を受け付けています。ODかそれとも別の原因か、診断を受けておくとよいでしょう。
小・中学生で「起立性調節障害」と診断を受けた場合、中学卒業後も、一定の回復がみられるまで継続して診療となることもありますが、経過によっては成人の診療科に移行となることもあります。

起立性調節障害の専門外来へ
症状が重くなかなか改善しない、学校に行けない状態が続いているなどという場合は、起立性調節障害の専門外来を設けている医療機関を利用するとよいでしょう。

基本的には、多くのODの子どもをみている小児科医が診療にあたっていますが、高校生くらいの年齢でも初診を受け付けているところもあります。

□高校生(15歳~18歳)から
循環器内科/脳神経内科/心療内科へ
中学卒業後にODが疑われる症状が表れ始めたという場合、小児科の対象年齢を超えているため、ほとんどは成人の診療科を受診することになります。

受診する診療科の目安としては、血圧や心拍数の問題という点では循環器内科、自律神経の問題という点では脳神経内科、心理的な影響で身体に症状が出ている可能性がある場合は心身症も考慮して心療内科が候補になります。いずれかの診療科で相談してみるとよいでしょう。

──ODという診断名が付くと、やはりご家族は安心するものでしょうか。

田中先生:患者さんやご家族が、「起立性調節障害(OD)」をご存じでない場合、さまざまな体の不調が「ODによる症状だ」とわかるまでには、時間がかかるかもしれません。そして、原因がわからないうちは、「もう少し頑張ればなんとかなるのではないか?」といった、さまざまな誤解に基づく対応が重なることもあるでしょう。

ODは気合で改善するものではありません。なぜなら、ODは自分の意思ではコントロールできない自律神経の不調による疾患だからです。症状が続くうちに心身の消耗が激しくなり、子どもは充電切れの状態になりがちです。

そのような状況を変えるきっかけになるのが、正しい診断です。ご家族をはじめとする周囲の人は、ODの診断がつくと、「無理をさせてしまっていたのではないか?」「もっと早くわかってあげればよかった」と思うかもしれません。私の外来でも、診断がついて、涙を流すお母様もいらっしゃいます。でも、それまでは、じつは、何が我が子に起こっているかわからないまま、あせりながら、必死に向き合ってきたことと思います。けっして、ご自身を責めすぎる必要はありません。「ここから回復に向けたスタート」と考え、子どもの未来に向かって、ゆっくり見守り、支えていけばよいのです。

〈Photo by iStock〉

診断書をもとに学校とも連携を!

田中先生:ODの子どもは、学校に遅刻したり、欠席したり、登校しても体調不良を訴えたりすることがあるかもしれません。その点からも、家庭と学校との情報共有が欠かせません。

診断がついているのなら、医師に診断書を書いてもらい、学校に提出すると、子どもが行きやすくなる手助けになるかもしれません。

私の経験では、学校の先生の多くは診断書をご覧になり、その子にとって、よりよい通学や学習の方法を探ってくださいます。ODの子どものフォローは医療機関のみでは到底できないことであり、とてもありがたいと思っています。

・小中学校→理解と適切な対応に役立つ
「見えにくい病気」であるODを可視化し、理解を深めるのに有効です。ODへの理解が深まれば、適切な対応につながりやすくなります。

・高校など→進級・卒業の判定材料になることも
進級・卒業を認めるかどうか判定する基準は学校ごとに異なりますが、規定の出席日数に達していなければ、進級・卒業は認められません。ただし、診断書の提出が無意味とも言い切れません。学校によっては、補講などで欠席分の補充を検討してくれる場合もあります。

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今回は、起立性調節障害かもしれないと思ったときの受診や対応について、田中大介先生にうかがいました。

次回は、起立性調節障害(OD)の子どもを支えるために、親ができることを紹介します。

悩む本人はもちろんのこと、親もそれぞれに不安や悩みを抱えています。回復に向けて知っておきたい、子どもの気持ちの変化や、親の心がまえについて分かりやすく紹介します。

取材・文/佐々木 奈々子

田中大介
東京都生まれ。1990年、昭和大学医学部卒業。昭和大学病院NICU、公立昭和病院小児科、富士吉田市立病院小児科、昭和大学附属豊洲病院小児科などを経て、現在は昭和大学保健管理センター所長・教授、昭和大学病院小児科教授。戸塚共立おとキッズクリニック小児科等にて、起立性調節障害をはじめ、小児期から青年期の子どもの診療や保護者の相談にあたっている。

『起立性調節障害(OD) 朝起きられない子どもの病気がわかる本』(田中大介/監修)
ODの根本的な原因を知ることが、適切に対応していくための第一歩です。本書では原因や症状など病気の基礎知識から対処法、学校とのかかわり方までアドバイス。ODの実態と悩む子どもの支え方がわかる一冊です。

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