
「子どもの円形脱毛症」早期治療・あせらず継続を「親ができること・してはいけないこと」[専門医が解説]
子どもの円形脱毛症#3 子どもの心と親のサポート
2025.07.31
「少しずつ受け止めて」親の不安は子どもに伝染する
自己免疫疾患のひとつである「円形脱毛症」。Tリンパ球が誤って毛根を異物としてとらえ攻撃するため毛根が傷つき、毛が抜けてしまいます。
子どもの髪が抜けることは、親にとって自身のこと以上に辛いことかもしれません。でも意外なことに、「抜けた部分が自分で見えなかったり、周りからも気づかれない程度であれば、本人はキョトンとしている場合もあります」と齊藤先生。
「もし本人が気づいたとしても、進行が落ち着いているのなら『ちゃんと隠れてるから、周りの子には気づかれないよ』と安心させてあげるのも大事な対応です」(齊藤先生)
本人以上にあせり、不安を抱えている親を何人も見てきたという齊藤先生。親にとっても初めてのことであれば、なおさら仕方ありません。
しかし、子どもは戸惑う親の様子を見て、さらに不安になってしまうと言います。
「もちろん、いきなり『落ち着いて構えて』と言われても難しいもの。ですので、私たち医療側がその都度、病状を丁寧に説明していきますので、少しずつ受け止めていただければ大丈夫です。正しく知ることができれば、今度は『どうやって髪型を工夫しようか』といった、前向きな関わり方に変えていけると思いますよ」(齊藤先生)
上手にウィッグを取り入れてストレスを軽減
進行が止まらず脱毛が目立つ場合は、学校生活や友達への影響も心配です。子どもは正直なだけに、目にしたもの、思ったことをそのまま口にしてしまう一面もあります。
「残念ながら、指摘の対象になってしまうことも多いんです。ですので、その場合は幼稚園や保育園、学校の先生たちを巻き込んで対策を考えましょう。
先生から、『体の事情で髪が抜けていること』『感染症ではないこと』などをみんなに説明してもらうのもいいですし、体育やプール、修学旅行など宿泊を伴う学校行事の際の対応も事前に相談しておきたいですね」(齊藤先生)
引っ込み思案になってしまう子どもは少なくないと齊藤先生は言います。自分の見た目を恥ずかしく思い、「外に出たくない」「人と会いたくない」と考えるからですが、その心情は大人でも容易に想像できます。
「友達に見られたらどうしよう」「どうして自分だけ?」──そんな思いを抱えている子どもに、齊藤先生は「ウィッグ」を提案します。
「最初はウィッグに抵抗を持つ親子も多いです。【カツラ=隠すもの】というネガティブなイメージがまだ根強くありますからね。でも、最近ではおしゃれの一環として、部分ウィッグを使う人も増えています。
気に入って使えば、自信にもつながりますし、それで気持ちも前向きになります。ウィッグをつけることは、決して負けることじゃない。
夏場は蒸れやすくなりますが、それが直接的に治療の妨げになることもないので安心してください」(齊藤先生)
もしウィッグを子どもが嫌がっても、円形脱毛症が治癒すれば外すことができますから、「一時的に使っているものだよ」と親がうまく伝えたり、必要な期間だけ上手に取り入れていけるといいですね。
一方で、子どもを診られるメンタルケアの専門医は限られており、予約が取りづらいといった状況もあるんです。適切な専門家に早めに相談できる環境が整うことが、今後の課題のひとつともいえるでしょう」(齊藤先生)