「夜尿症」 5歳でも1ヵ月以上続く場合が受診目安 専門家ふらいと先生が解説

小児科医・今西洋介先生に聞く「子どものおねしょ」 #1 受診が必要な「夜尿症」について

小児科医・新生児科医:今西 洋介

「おねしょ」は自然にしなくなっていくのでしょうか?  写真:アフロ(※写真はイメージです)
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幼稚園や保育園、学校への進学が気になる時期や、お泊り保育、林間学校などの泊まりがけのイベント前などに気になってくるのが「おねしょ」や「おもらし」。

進学前になんとかしなくては、と焦る保護者の方も多いのではないでしょうか。

小児科医の今西洋介先生(Xでは、ふらいと先生)は、「おねしょやおもらしは、受診を考えてもいいパターンもあります」といいます。そこで今回は今西先生に、おねしょとおもらしについて解説してもらいました。

1回目は「おねしょはどうして起きるのか」について。症状が起きる原因や、日中のおもらしと夜間のおねしょの違いなどについてお聞きしました。


(全3回の1回目)

今西洋介(いまにし・ようすけ)
小児科医・新生児科医、小児医療ジャーナリスト。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。
SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会問題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。3姉妹の父親。
X(旧Twitter)ではふらいと先生(@doctor_nw)としてフォロワー数は14万人。

成長と共に自然治癒しない「夜尿症」

──進学・入学の時期が近づくと、「おねしょ」や「おもらし」について気にしだす親御さんが多くなります。でも、「おねしょだし、そのうち成長すれば治るかな」と思う方も多いと思うのですが、そもそも、おねしょはどうして起きるのでしょうか?

今西洋介先生(以下、今西先生):尿が膀胱に溜まって、膀胱が大きくなると神経が刺激されて尿意を感じるようになります。でも、子どもによっては眠りが非常に深く、尿意が生じても目を覚ますことができない場合があります。これに加え、膀胱機能の発達や、自律神経の働きが未熟だと、夜間に作られる尿の量が多いことが重なって、おねしょをしてしまうのです。

とはいえ2歳ごろまでは、排尿を上手にコントロールできないので、反射的にしてしまいます。だからおねしょは当たり前のことなんです。

でも、4歳ごろには徐々にコントロールができるようになり、親が「トイレに行こうね」と促したりすれば、昼も夜も漏らすことは少なくなります。そうして徐々に4歳を過ぎると、夜もおねしょをしなくなります。

「おねしょ」と「おもらし」の違い

──夜間の「おねしょ」と、昼間に漏らしてしまう「おもらし」では違いがあるのでしょうか?

今西先生:昼間の「おもらし」もおねしょと同様に、大きくなって排尿・膀胱の機能が発達していくことで改善する場合が多いですね。夜間の「おねしょ」と同じように、2~3歳ごろには少しずつおもらしもなくなっていきます。

身体の発達と同じように、排尿・膀胱機能の発達にも個人差があるので、「3歳なのにおもらしをしている」「なかなかおむつがはずせない」と焦ることはないでしょう。

ただ、気をつけてほしいのは、大きくなっても日中に漏らしてしまう場合です。日中は夜寝ているときと違い、意識があります。それでも漏らしてしまったり、おしっこが我慢できなかったりするというのは、場合によっては膀胱・尿道の神経や機能に問題がある可能性も考えられます。これは便を漏らしてしまうのも同様です。

5歳を過ぎても「おねしょ」「おもらし」が頻繁に続く場合は一度受診を考えてください。この場合、おねしょの場合は「夜尿症」、おもらしの場合は「尿失禁症」の可能性があります。

「5歳」が受診の目安

──ではまず、親としては「5歳」というのが受診の目安と考えて良いのでしょうか?

今西先生:そうですね。夜尿症には明確なガイドラインがあって、『5歳以上で、1ヵ月に1回以上のおねしょが3ヵ月以上続く場合』、そして『1週間に4日以上のおねしょは“頻回”』といわれています。

日本では、調査によると夜尿症は7歳でも有病率は10%程度と報告されています。つまり、1クラスのうち約3人は夜尿症の子がいるという計算です。

幼稚園の年長さんや、小学校に上がってもおねしょをしているというのは、なかなか保護者としても周りに相談しにくいでしょう。さらに子ども自身も、お泊まり保育でオムツを持っていかなくてはいけないというのは、子どもの自尊心が傷つくことになります。これが高学年になれば、なおのこと子どもの心は傷つくはずです。

実際、小学校の2~3年生くらいで「おねしょが続いているから受診しよう」と考える方は比較的少なく、林間学校が行われる4~5年生ぐらいになって、そのとき初めて親も子どもも受診しようと考えるご家庭が多いです。

受診後の治療では、主に生活指導になります。また症状によっては、投薬なども行うことで、自然に治癒する場合より、治癒の期間も短く、2~3倍治癒率が高まるといわれています。

確かに昔は、おねしょは“ときがくれば治る”という考えもありました。しかし、放っておいても治らない「夜尿症」だと、治療が必要な場合もあるということ。そして、月に2~3回のおねしょだから」と放っておかずに、5歳を過ぎてもおねしょが続いているようなら、ぜひ受診を考えてみてくださいね。

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「お友達に知られたくない」「恥ずかしい」という子どもの心の負担、また「いつになったらおねしょが治るのだろう」というゴールが見えない親の不安を解消するためにも、「病院で相談をしてみましょう」という、今西先生の言葉に背中を押された親御さんも多いかと思います。

次回2回目では、具体的に病院での夜尿症の治療の内容と、親の対応などについてお聞きします。

取材・文/知野美紀子

今西先生に聞く「夜尿症」は全3回。
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(※2回目は2024年3月〇日、3回目は3月〇日公開。公開日までリンク無効)

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いまにし ようすけ

今西 洋介

Yosuke Imanishi
小児科医・新生児科医

小児科医・新生児科医、小児医療ジャーナリスト。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。漫画・ドラマ『コウノドリ』の取材協力医師を努めた。 NICUで新生児医療を行う傍ら、ヘルスプロモーションの会社を起業し、公衆衛生学の社会人大学院生として母親に関する疫学研究を行う。 SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会問題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。3姉妹の父親。趣味はNBA観戦。 最新著書『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社) Twitterのフォロワー数は14万人。 Twitter @doctor_nw

小児科医・新生児科医、小児医療ジャーナリスト。一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。漫画・ドラマ『コウノドリ』の取材協力医師を努めた。 NICUで新生児医療を行う傍ら、ヘルスプロモーションの会社を起業し、公衆衛生学の社会人大学院生として母親に関する疫学研究を行う。 SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会問題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。3姉妹の父親。趣味はNBA観戦。 最新著書『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社) Twitterのフォロワー数は14万人。 Twitter @doctor_nw