7時間でも睡眠不足「徹夜で勉強・寝る間を惜しんで仕事は無駄な努力」と専門家が断言する理由

専門医・神山潤先生に聞く「睡眠アドバイス」#3

「快眠」への6原則

子どもたちの睡眠不足が指摘される昨今、親として、わが子の睡眠に気をつけている人は多いはず。けれど、自分のこととなるとどうでしょう。

「日本の大人の睡眠時間の短さが世界トップであることからもわかりますが、日本では大人が眠りを疎かにしています。そんな国で、果たして子どもの眠りを大切にできるでしょうか」

「子どもに“早く寝ろ”と言っておいて、大人が夜更かしをするのが、この国の現状です。夜更かしをする大人を見て育てば、小さい子どもたちは、“いつか自分も”と思うでしょうし、思春期の子なら、もうすでに夜更かしを始めているでしょう。それ相応のロジックがない限り、夜更かしをしている親が、その子に“早く寝なさい”などとは言えないですよね」


子どもの睡眠を心配する前に、まず親が自分の睡眠を改める必要があるのかもしれません。十分な睡眠時間の確保はもちろんですが、睡眠のリズムを整えることも大事。

乱れを自覚している場合、神山先生が提唱する「スリープヘルス『快眠への6原則』」を意識してみましょう。6原則とは以下の6つです。

①朝の光を浴びる
②昼間に活動する
③夜は暗いところで休む
④規則的な食事をとる
⑤規則的に排泄する
⑥カフェイン、アルコール、ニコチンなど眠りを阻害する嗜好品や過剰なメディア接触を避ける

「このようなことに気をつけつつ、今の自分の状況をちょっとずつ改めていきましょう。例えば、自分の体の声に耳を澄ましてみると、“あれ、寝不足かも。ちょっと調子悪いぞ”などとわかってくると思うんです。そんなときは、まず寝るようにしてみてはどうでしょうか」

「また、早寝早起きがいいとわかってはいても、いきなり9時に寝て5時に起きるというような生活にシフトするのは難しいかもしれません。そんな人は、毎日、15分でも20分でもいいから、寝る時間を早めるようにしてみましょうよ」

眠れない場合は思い切って布団から出る

ただし、いつもより早くに寝床に入ったとしても、眠れない場合は、思い切って布団から出るのが正解。

「翌朝早起きをしなければならない日などに、いつもより早くに寝床に入っても眠れないことがありますよね」

「“眠れない、眠れない”と思っているうちに、時間だけがどんどん過ぎていく……。こんなときは、いっそのこと起き出して、別のことをやりましょう。そうでないと、布団の中が寝る場所ではなく、眠れないと悩む場所になる。それは決していいことではないのです」


そしてもうひとつ、神山先生からのアドバイス。

「寝不足の人は寸暇を惜しんで寝てください。睡眠不足の大人たちは、電車の中などちょっとの移動時間でも寝て、睡眠補塡をしてほしいと思います。居眠りは、生活のリズムから考えると、決して望ましくない可能性もありますが、眠くなったら寝るしかないではありませんか。眠くなったときに我慢して、いいことはひとつもないですからね」

なるほど。なかなか心強いお言葉。これなら、少しずつでも睡眠を改めていくことができそうですね。いきなり大掛かりな睡眠改革は無理でも、できることから、まず始めてみませんか。

【専門医・神山潤先生に聞く「睡眠アドバイス」は全3回。赤ちゃんの睡眠について解説した第1回、「思春期の子どもに早寝早起きを強いてはいけない理由」を伺った第2回に続き、最後の第3回では「大人の睡眠時間と睡眠不足の実態」について伺いました】

取材・文/佐藤美由紀
写真/嶋田礼奈

32 件
さとう みゆき

佐藤 美由紀

Miyuki Satou
ノンフィクション作家・ライター

広島県福山市出身。ノンフィクション作家、ライター。著書に、ベストセラーになった『世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉』のほか、『ゲバラのHIROSHIMA』、『信念の女 ルシア・トポランスキー』など。また、佐藤真澄(さとう ますみ)名義で児童向けのノンフィクション作品も手がける。主な児童書作品に『ヒロシマをのこす 平和記念資料館をつくった人・長岡省吾』(令和2年度「児童福祉文化賞」受賞)、『ボニンアイランドの夏:ふたつの国の間でゆれた小笠原』(第46回緑陰図書)、『小惑星探査機「はやぶさ」宇宙の旅』(第44回緑陰図書)、『立てないキリンの赤ちゃんをすくえ 安佐動物公園の挑戦』、『たとえ悪者になっても ある犬の訓練士のはなし』などがある。近著は『生まれかわるヒロシマの折り鶴』。

広島県福山市出身。ノンフィクション作家、ライター。著書に、ベストセラーになった『世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉』のほか、『ゲバラのHIROSHIMA』、『信念の女 ルシア・トポランスキー』など。また、佐藤真澄(さとう ますみ)名義で児童向けのノンフィクション作品も手がける。主な児童書作品に『ヒロシマをのこす 平和記念資料館をつくった人・長岡省吾』(令和2年度「児童福祉文化賞」受賞)、『ボニンアイランドの夏:ふたつの国の間でゆれた小笠原』(第46回緑陰図書)、『小惑星探査機「はやぶさ」宇宙の旅』(第44回緑陰図書)、『立てないキリンの赤ちゃんをすくえ 安佐動物公園の挑戦』、『たとえ悪者になっても ある犬の訓練士のはなし』などがある。近著は『生まれかわるヒロシマの折り鶴』。