“発達特性のある新1年生“の親が知っておきたい「3つの対処法」を専門家が解説

発達障害の専門家が語る「発達特性のある子どもの小1プロブレム」#1~入学後に多いトラブルと対処法~

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

では、学校生活に不安を抱える子どもに対して親がサポートできることは何でしょうか。ポイントは大きく3つあります。

【1】子どもをよく見て“心のSOS”に気づくようにする

まずは、子どもに変化がないかしっかり見ることです。

前述の「過剰適応」は、親がなかなか気づけない場合もあります。その状態が続くと、子どもの苦しみや不満は長期化し、大きなダメージを与えることになってしまいます。

そうならないよう、比較的、心が平穏な状態の子どもの表情や行動、睡眠、食事、排泄、遊び方をよく観察しておきましょう。

それを踏まえて、最近、子どもがいつも遊んでいるおもちゃを、うわの空で触っていないか。ふと見せる表情が暗かったり、ネガティブな言葉を言っていないか。疲れていたり、イライラした感じがないかといったことを気にかけてください。

子どもが発する言葉だけでなく、ふと見せる表情など“疲れているサイン”を見逃さないようにしたいものです。

【2】家庭の幸福度を高める

子どもも親も幸福でいる、家が安心してリラックスできるよう環境を整える、そして親子の信頼関係を作ることが大事です。

世の中、自分の思いどおりにはなかなかいかないものです。そんな中で、ここでだけはわかり合える、ここでだけは自分らしくいられる場所があると、子どもは大きな安心感を得られます。

今一度、「家の中での幸せって何だろう?」と見つめ直してほしいのです。子どもも親もイキイキと生活しているか。目の前にいる家族が楽しそうにしていたら、それは伝染します。

外ではいろいろあるけれど、うちは安心していられるという環境をぜひ作ってほしいと思います。

【3】まわりの力や助けを借りる

行政によって体制はさまざまですが、基本的に小学校には頼れるプロが複数います。担任の先生はもちろん、「スクールカウンセラー」と呼ばれる心理の専門家は、児童や保護者からの相談を受けて必要に応じて支援してくれます。

そして各小学校に必ず一人は配置されている「特別支援教育コーディネーター」は、保護者の窓口となり医療や療育などの専門機関、学校との連絡調整を行ってくれます。

これら学校の先生方とぜひ良い協力関係を築いていきたいものです。

学校生活での困りごと、悩みについて相談できる先は、先ほど挙げた学校の先生、そして医療機関の医師の他、療育を受けているのであれば療育先の専門職などいろいろ考えられます。複数の支援先で相談してもよいでしょう。

ただ、支援者によって微妙に伝えることが異なる場合もあって、結果、親としてどうすればいいのか混乱してしまうこともあるかもしれません。

そのようなときは、親が安心して話せ、それによって状況が整理できて具体的な工夫も得られるところに相談されるといいのではないかと思います。

「小1プロブレム」に限らず、親が抱え込まないことは大事です。担任の先生を始め、スクールカウンセラーや特別支援教育コーディネーター、療育機関の専門家などの支援者と協力関係を作り、子どもの支援のための「チームAさん」を作るのはとても大切です。

多くの“眼”があることで子どもの変調に気づくこともあると思います。

【脚注】
※1=子どもの学校行事に関する意識調査(小学生の子どもを持つ保護者男女対象)

取材・文/桜田 容子

『発達障害の子の療育が全部わかる本』(著:原哲也/講談社)。療育の制度や手続き、進学から就職まで、発達障害の子育てに必要な情報が詰まった一冊。
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原 哲也

Tetsuya Hara
一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士

1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。 2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。 著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。 ●児童発達支援事業「WAKUWAKUすたじお」

1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。 2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。 著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。 ●児童発達支援事業「WAKUWAKUすたじお」

さくらだ ようこ

桜田 容子

ライター

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。