子どもの目の異変 スマホ、パソコン、ゲーム… 「要注意な症状」を専門医が解説

【デジタル時代の子どもの目のトラブルとケア #1】子どもの目の問題は親が気づいてあげるしかない!

親世代よりも、現代っ子はデジタル機器に触れる機会も時間も多くなっています。 写真:アフロ

テレビだけでなく、スマホやパソコン、タブレットなど、現代は多くのデジタル機器が生活に浸透しています。

教育現場でもICT環境の実現に向けたGIGAスクール構想により、現在は全国ほぼすべての小・中学校で子どもたち1人につき1台のタブレットやパソコンが普及。このことからも情報端末は、これからの時代の子育てには切っても切れない存在ということがわかります。

生活だけでなく、教育にも深く入り込んでいるデジタル機器だからこそ、その付き合い方を間違えると健康を損なうことも……。特に目への影響は心配です。

小児眼科医である三木淳司先生に、親が知っておくべきデジタル時代の子どもの目のトラブルとケア方法について教えていただきます(全3回の1回目)。

◆三木 淳司(みき あつし)
日本眼科学会眼科専門医・指導医。医学博士。川崎医科大学附属病院眼科部長(教授)。
専門分野は斜視・弱視、神経眼科、小児眼科。

【デジタル時代の子どもの目のトラブルとケア】の連載は、全3回。
第2回〈子どもの「スマホ内斜視」 小児眼科医が解説する「両目が内側に寄りすぎる症状」とは〉を読む。
第3回〈小学生で進みやすい子どもの「近視」 専門医が教える正しい「進行予防策」〉を読む。
※公開日までリンク無効

子どもは自分から目の異変を訴えられない!

30年以上にわたり、大人から子どもまで多くの人の目の健康に携わってきた眼科医の三木先生は、子どもに焦点を合わせると、ひと昔前よりデジタル機器に触れる時間が長くなっていると話します。

「今のパパママ世代が子どものころもテレビやゲームはありましたが、最近の子どもがゲームで遊んだり、スマホなどに触れたりする時間は、ひと昔前の子どもに比べてはるかに長いと感じています。

近くを見る作業が増えれば増えるほど、近視やその他のトラブルが出る確率は高まります。これだけデジタル機器が生活に浸透しているのですから、その傾向はこれからもっと強まると推測しています」(三木先生)

人間はさまざまな情報を聴覚や触覚、嗅覚といった五感から得て成長し、生活を営みます。そのなかでも視覚からの情報は全体の90%近くを占めるといわれているため、「見る」という機能を健全な状態に保つことは重要です。

「子どもは自分の目に異常があっても、見え方が変だと思っても、自分で訴えることはほとんどありません。ですから、子どもの目のトラブルは親が気づいてあげるしかないと思ってください。

日常生活で子どもの様子になにか異変を感じたら、眼科をためらわずに受診することが大切ですし、目の検査を行う3歳児健診を受けることも肝心です」(三木先生)

視力はいったん落ちると回復しません。また、目の病気は早期に発見できれば治るものもあります。デジタル機器に囲まれて目を酷使する時代だからこそ、子どもの目に配慮する必要があります。

意外と知らない!? 我が子の視力はどのくらい?

目の健康は大事だとわかっていても、我が子が今、いったいどれほど見えているのか目の発達を知らない人は多いもの。

見えている程度や発達プロセスがわかれば、子どもの目の成長にとって重要な時期がいつかわかったり、しぐさや行動に違和感を覚えたりするきっかけにもなるはずです。

視覚機能の発達について、引き続き三木先生が解説します。

生まれてから視覚機能が成熟するまでのプロセス

「まず、親御さんが気になる視力については、5~6歳ごろには十分に見えるようになっています。個人差はありますが、見るという能力だけでいうと視力1.5程度は見えていて、大人に近い数値があるでしょう。

ただ、視覚は神経系の機能のため、しっかりと見える(把握する)には脳との連携が不可欠です。

そのため視力が完成したのちは、脳が成熟する10歳ごろまでじっくりと、脳とともに視覚機能は高まっていきます」(三木先生)

単にものを見るという能力だけなら、視力は5~6歳ごろには完成します。大人と同じレベルに届くまで急速に発達する分、もし目に問題があるなら早期発見・早期治療が肝心なのが推しはかれます。

また視力の完成後、脳の成長とともに視覚機能が成熟していくと考えると、幼児期から学童期は目の成長にとって非常に重要な時期であることもわかります。

三木先生が、子どもの目の健康には注意してあげてほしいと訴えるわけがここからも読み取れます。

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