「ラーケーション」で石垣島家族旅行 “学校を休んでも欠席にならない“新・教育制度を実体験

ラーニング×バケーション 制度導入1年目の茨城でママが感じたリアルな変化

コクリコサポートエディターズ:北林 日菜

沖縄県竹富島。白砂の小道、赤瓦屋根、珊瑚石の石垣などで統一された集落は歩くだけでも発見がいっぱい。

11歳男子と8歳女子を育てる、茨城県在住のエニママライター北林日菜です。

2024年度から茨城では「ラーケーション」が始まりました。平日に学校を休んで家族でさまざまな体験ができる制度を実際に使ってみた感想、周りの変化などをご紹介します。

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働き方改革で有給休暇がとりやすくなったとはいえ、親と子の休みを合わせるのはなかなか難しいもの。土日に休める仕事ばかりではありませんし、家族旅行やレジャーで学校を休ませるのに抵抗感があったり、休んだときの周りの反応が気になったりと悩む方もいるでしょう。

茨城県で導入されたラーケーションとは

私の住む茨城県の教育委員会は、2024年度から平日に授業の代わりに児童生徒と保護者が一緒に校外で体験活動等をする「ラーケーション」制度を始めました。ラーケーションとは、ラーニング(学習)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語。茨城県では、2023年の愛知県に続き、都道府県としては全国2番目に導入されました。

◆茨城県のラーケーション概要
・対象は全県立高校と一部市町村教育委員会
・年間最大5日間取得でき、連続取得も分散取得も可(次年度持ち越しは不可)
・欠席にカウントされない
・申請方法は学校によりさまざま
・原則として報告書などの提出は不要

我が家は石垣島への家族旅行で4日、県主催のラーケーション取得促進のイベントで1日を利用しました。(6月中旬にしてすでに5日間使い切っています……)子どもの小学校の場合、申請は原則1週間前までに出席管理アプリを使って「ラーケーション利用」の旨を伝えるだけです。

制度利用で感じた変化:肩身が狭くなくなった!

実はラーケーション導入前から、毎年家族旅行で5日間ほどは平日学校を休んでいた我が家。パパの仕事柄、土日や夏休みには長期休みがとれないことが理由です。

ただ、平日に学校を休んで旅行に行くのを黙っていないといけない風潮は感じていました。学校や登校班には「家庭の事情で数日休みます……」とだけ告げ、言外に「あれ? 法事とかなのかしら?」という雰囲気を漂わせるのがセオリー。

ママ友との会話の流れから「学校休んで行くんだな」とお互い暗黙の了解でわかっていてもなんとなく聞きづらい雰囲気。子どもにも「友達には言っちゃだめ!」と念押しをし、なんとなくうしろめたい気持ちで旅行に出かけていました。

しかしその雰囲気は、ラーケーション制度導入で一変! 2024年6月には、公益財団法人茨城県教育財団が「ラーケーションを活用した遺跡発掘体験」を実施。親子で埋蔵文化財(遺跡発掘)の発掘調査を体験するという企画で、日程はすべて学校のある平日の午前中でした。

我が家も学校から案内チラシをもらう形で知って申し込みをし、この体験に参加しました。普段は入ることのできない遺跡発掘現場で、実際に1000年以上前の土器や金属片を発掘し、子どもたちは大喜び。

親である私も初めての経験だったので、子どもと同じ目線で解説を聞いて、驚いたり感動したり。子どもも学校の友達から「遺跡のラーケーションどうだった?」と聞かれ、気兼ねなく話ができて、貴重な体験をシェアできたそうです。

遺跡発掘体験。雨天だったので、タープテント(奥に見える白いテント2つ)を用意してくださり、濡れずに発掘体験ができました。

2024年7月からは、アクアワールド茨城県大洗水族館が「ラーケーション特割」を実施。「土日に人気のプログラムも平日なら参加しやすい」ことを目玉に、ラーケーション利用を促進しています。県としてこのような試みを発信してくれると、利用へのハードルが下がるので嬉しいですね。

ラーケーションのメリット・デメリット

我が家がラーケーションを実際に利用してみてよかった点、課題となる点を挙げてみます。

竹富島の「カイジ浜」は別名「星砂の浜」。星の砂が有孔虫の殻であることを学びました。

◆子どもにとってよかった点

子どもにとってよかったのは、何と言っても「楽しみにできた点」です。以前は幼稚園や学校で話さないよう、出発直前まで日程や行き先を詳しく伝えていませんでした。今回は事前に伝えていたので、子どもが自発的に休む日をカバーするために勉強をがんばったり、行き先の情報を事前に調べたり、体調管理に気を付けたりできました。

また、旅行に行ったことを隠さないでいいので、仲良しの友達にお土産を買えたのが嬉しかったそう。周りの友達や友達の親と体験をシェアできたのも、初めてのことで本当に喜んでいました。

娘がお友達とお揃いで買ったお土産は、石垣島の伝統工芸「八重山みんさー織」のヘアゴム。

◆子どもの教育にとっていいこと

石垣島「吹通川(ふきどおがわ)のヒルギ並木」では、間近でマングローブ林を見ました。砂の色が変わっているのはすべてカニが作った砂団子。
カニと砂団子。一歩一歩近づくたびに、無数のカニが穴にもぐっていきます。

「ラーニング(学び)」の要素を親子で意識することにより、子どもの教育にいい影響がたくさんあったと感じています。例えば石垣島旅行では、以前の旅行よりも、子どもが「調べ学習」的な観点でものを見られるようになりました。独特の気候や植物、食べ物や街並み、歴史や文化などに広く興味を持てたのは、「学校休んで家族旅行」ではなく「ラーケーション」として休んだおかげだと感じています。

学びの結果を「自主学習ノート」にまとめられたのも嬉しい副産物でした。以前は学びがあっても「学校を休んで行ったから」と、学校に提出できず別の課題を考える必要があったので、大きな変化です。

また子どもたちが旅行中何度も「今は本当は学校に行っている時間なんだよね」と話し、制度導入前より時間を大切に過ごしていたのが印象的でした。

◆勉強が遅れてしまう心配は?

学校を休むため、その間の授業に遅れてしまう懸念はもちろんあります。旅行後しばらくは、宿題のプリントやドリルに取り組み、不明点を親が教えることでフォローしています。

小3の娘は、今年から2週間先までの時間割りの予定や宿題内容が学級だよりで公表されるようになりました。旅行前までに計画的に勉強を進めることができて、とても助かりました。旅行後にすべてをフォローアップしなければならなかった小6息子はうらやましかったそうです。

ラーケーションを利用するなら、学習の遅れのフォローは親の責任ですべき、というのが私の考えです。もし全国でラーケーションが導入されるなら、少し先の学習計画や宿題の予定などがわかるシステムがあると制度を利用しやすくなるのかなと思いました。

周囲のママたちはどう感じているの?

まだ始まったばかりのラーケーション制度。周りのママに率直な話を聞いてみると、次のような感想が出てきました。

・幼稚園のときは家族旅行もためらいなく休めたが、小学校は学習する場なので休みづらかった。

・ラーケーションを利用して出かけたが、前日にクラスの子に「いってらっしゃ~い!」と言われて嬉しそうだった。

・「今日●●さんはラーケーション利用でお休みです」と先生が発表するので子どもが「自分も使いたい」と言っていた。

・ラーケーションの5日間の使い道を家族で話し合ったところ、今まで親主導で計画をしていたが、子どもがやりたいこと、意見を積極的に出すようになった。

・混まない平日に出かけられるのが魅力的。

・工場見学は平日しかやっていないところが多いので、ぜひ行きたい。

・ラーケーションで出かけた場所の情報を友達から聞けたので、行ってみたいなと思えた。

・土日はチーム制のならいごとがあって休めないため、平日に休めるのは助かる。

・パパが「勉強が遅れるから休んでまで出かけるのは……」と難色を示していて、夫婦で考え方が違ったが、制度導入後は「ラーケーション使おうよ!」と、有給休暇を使うような感覚で言えるようになった。

・うしろめたさを感じず、友達にも話せるようになったのがすごくいい効果だと思う。

このようにポジティブな意見が多かったのですが、近隣市町村のママに聞いたところ、こんな声もありました。

・学校から特にアナウンスがなく使い方がわからない。そもそも自分の住む市町村がラーケーションの対象なのかを知らない。

・あまり積極的に外に体験しに行く家庭ではないので、興味がない。

・子どもに聞いてみたがラーケーションを知らなかった。うちは対象地域ではないのかな?

茨城県の中でも、すべての市町村がスタートしているわけでなく、ホームページでも「年度内実施予定」と書かれているところがあり、完全スタートではないのが現状のようです。

ラーケーション利用で今しかできない体験を

竹富島のコンドイ浜。どこまでも続く遠浅の白浜のビーチのスケール感を体感できたのもいい財産になりそうです。

全国でもまだ珍しいラーケーション制度を利用した経験をお伝えしました。単に「欠席にならない」だけでなく、本来感じる必要のない「うしろめたさ」を感じず、親子一緒に今しかできない体験ができ、子どもの心身の成長によい影響が期待できる制度なので、ぜひ全国にも広がってほしいなと思います。

※記事内クレジットのない写真はすべて撮影:北林日菜
※本記事の情報は2024年6月現在のものです。

きたばやし ひな

北林 日菜

Hina Kitabayashi
AnyMaMa(エニママ)ライター

AnyMaMa(エニママ)ライター兼コクリコ・サポート・エディター 2012年生まれのサイエンス好き男子、2015年生まれアート好き女子の母。都内で広告営業や出版業を経て、結婚を機に茨城県に移住。以後リモートワークを中心に、エニママや県内のご縁ある企業でフリーランスライターとして活動中。 AnyMaMa:https://anymama.jp/  Twitter:https://twitter.com/AnyMaMaJP

AnyMaMa(エニママ)ライター兼コクリコ・サポート・エディター 2012年生まれのサイエンス好き男子、2015年生まれアート好き女子の母。都内で広告営業や出版業を経て、結婚を機に茨城県に移住。以後リモートワークを中心に、エニママや県内のご縁ある企業でフリーランスライターとして活動中。 AnyMaMa:https://anymama.jp/  Twitter:https://twitter.com/AnyMaMaJP

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