普通のママもできる「育児の困った」の変え方 “市議で弁護士”の母が伝授

つくば市議会議員・川久保皆実さんインタビュー 後編

奥津 圭介

写真:アフロ

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市議、弁護士およびビジネスマンとして、すべての知見を駆使して「育児の困った」を改善していくという茨城県つくば市の新人市議・川久保皆実さん。前回では、川久保さんがこれから取り組む「子育ての困った」を変える方法を伺いました。
今回は、普通のママが「育児の困った」を変えたいときにはどう声を挙げればいいかについて、ご本人の体験も交えて伺いました。

「育児の困った」を変えるのに効果的な3つのポイント

普通のママたちも、同じように子育てについていろいろ困っています。そんな親たちが声を挙げるときは、どうすればいいのか。川久保さんは3つのポイントを教えてくれました。

1 まずは自分で動いてみる。

2 議員に相談するときは、積極的に動いてくれそうな議員を選ぶことと、感情的にならずに問題点を整理して伝えることを心がける。

3 同じ問題意識を持っている人の声を、できるだけ多く集める

それぞれどうすればいいのか、うまくやるためのコツも含めて伺いました。

「まず大切なのは、最初からあきらめずに、自分で動いてみること。自分が感じている不満や疑問について市役所の窓口で質問してみたり、保育所の責任者の方に問い合わせてみたりすることです」

現役ママの目線で、子育ての困ったを解決する方法をアドバイスしてくれた川久保さん。写真提供:本人

まずは市区町村役場の担当部署に連絡を入れ、自治体の対応の現状を確認する。保育所の問題であれば、その責任者に確認する。それが第一歩になる。

「正直、一人の市民からの声で劇的に改善に向かう、ということは、なかなかレアだと思います。『ご意見は承りました』とだけ言われて、放置されることもあり得ます。それでも市役所や保育所は実際に声が上がってくるまでは、問題に気づくことすらない可能性があります。まずは声を上げてみることが重要だと思います」

10年前の挫折から学んだ議員の選び方

市区町村役場や保育所の反応がいまいちの場合、次は自治体議員の力を借りることを考えたい。そこにもコツがあるといいます。

「この場合、もっとも大切なのは、ちゃんと動いてくれそうな議員を選ぶこと。やはり、当事者意識が大切なのです。議員の中にも各々に得意分野や関心分野があります。議員なら誰でも良いというわけではなく、子育てに当事者意識を持ってくれる人のほうが、積極的に動いてくれるものです」

「当事者意識を持っている議員を選ぶことがもっとも大切」と強調する川久保さん。その裏には、過去の苦い経験があった。今から約10年前のある日、川久保さんは夜11時頃につくば駅付近を歩いていて痴漢被害に遭ったという。

「都内に住んでいるときの感覚で、夜遅くても一人で出歩いて大丈夫だと思ってしまったことが、被害に遭った原因だと考えました。そこで、今後の被害を防ぐために、オンライン上に不審者の出没MAPを作り、危ないエリアを周知したいと思ったんです。このMAP作成について、まずは市議に相談したのですが、ほとんど動いてもらえなかった。市役所にも要望書を出したのに、なしのつぶてでした」

やはり当事者意識、少なくとも同じような問題意識を持った議員じゃないと、なかなか動いてくれない。そう痛感した出来事だという。

「『じゃあ、自分で作ってやる!』と考えて、茨城県警につくば市内の不審者被害のデータについて情報公開請求しました。しかし、出てきたデータは住所がほとんど黒塗り。これだと地図上に、被害場所の情報を落とし込むことができません。そこで、水戸市にある茨城県警まで出向き、詳細な住所の開示を求めましたが、全く対応してもらえず。結局、わかる範囲で、ブログを使って不審者情報を発信したのですが、満足いく活動はできませんでした」

このときのくやしい思いは、忘れられないという。しかし、実はそれから数年後、茨城県が運営する「いばらきデジタルまっぷ」の中で、不審者事件の情報を地図上で確認できるようになっていた。川久保さんの挙げた声に応じたものかは不明だが、必ずしもその声は無駄になっていないのかもしれない。

また、仮に最初に相談した議員の反応がイマイチでもあきらめずに、複数の議員に相談してみればよいという。

「私が10年前に相談した市議は、人づてに紹介していただいた方でしたが、男性でした。やはり痴漢問題は女性の議員にアプローチするべきだったな、と今となっては思います。今の時代、各議員の問題意識は、ウェブサイトなどを見れば大体つかめるはず。一人がダメでもあきらめず、ちゃんと取り上げてくれそうな人に当たるまで、根気よくアタックすることも大切です」

これは役所に問い合わせをしたり、あるいは支援を要請したりするときも同じだそう。

「たとえば子育てに関する問い合わせ窓口は、市役所だけでなく、保健所や子育て支援センターなど複数あることが多いと思います。一つの窓口で上手く対応してもらえなくても、諦めずに他の窓口にも連絡してみると解決の糸口が見つかるかもしれません。また、電話に出た人次第で劇的に対応が変わることもあり得ます」

感情的にならずに問題点を伝える 賛同者は多いほど◎

 訴えを伝えるときは、過度に感情的にならずに、問題点を整理して伝えることが大切だという。

「議員も、当たり前ですが人間です(笑)。ひたすら感情的に不満をぶつけられると辛かったりします。それよりも『何が問題で、どんな解決方法を望んでいるのか』を、整理して伝えたほうがいい。そのために、解決方法はどういう手段が考えられるか、ほかの自治体の例などを調べてみるのも良いと思います」

問題に怒っていたりする場合、人はつい感情的になりがち。伝える前に、感情面ではなく、本当に訴えるべき問題点や改善方法などを書き出してみたりすると、より上手に伝えることができそうです。

また、同じような悩みを持つ人を集めて、代表して声を挙げることも効果的だとか。

「たとえば、今つくば市では、学校新設にともなう学区割りの変更について、一部の住民から不満の声が上がっています。私も相談を受けて現地を視察したり、問題点を整理した資料を作成して市に対応を求めたりしているのですが、住民の方に対して『同じ問題意識を持っている人の声をできるだけ多く集めたほうが良い』とアドバイスさせていただいたところ、あっという間に2000人近くの署名を集められました。こういう動きがあると、やはり市役所としても問題を見過ごせなくなるのではと思います。ちなみにこの学区割りの問題に関しては、こちらで動く前から市役所も把握しており、学区変更にともなう不利益を緩和すべく動いていました。その事実がわかるだけでも、市民のみなさんは心強いはず。私の市議としての重要な仕事の一つは、そういう、市民と行政の橋渡しだと思っています」

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