ものを見る力、考える力、生み出す力は自ら学んで身につける
──子どもとの関わり方で、「大人にやってほしくないな」と思うことはありますか?
古田さん:大人が良かれと思って、先回りして子どもに何かをすることですね。大人が「教えよう」と思ってやることは、ほとんどNG行動です(笑)。
子どもの感性は、教育で伸びるというものではありません。「こうすれば感性が鍛えられる」とか、そういったハウツーはない。「良かれと思って」は、大人の理想を子どもに押し付けているのと同じです。
もちろん、多くの芸術に触れる機会があったほうがよいとは思います。でも、これも目的が「お金をかけて、いいものを見せる」ということにすり替わってしまうことがあるので難しいところです。
たくさんの作品を受動的にただ見るよりも、「一度、親と一緒に行った美術館で見た〇〇が忘れられない」という体験のほうが、子どもにとってはずっと意味があります。
私は教員という立場ではありますが、教育というのは反面教師でいいと思っています。そうでなければ、人は育ちません。
ものを見る力、考える力、そして生み出す力とは誰かに教わって身につけるものではなく、自ら学んで身につけるものだと私は思います。ですから僕としては学生たちに極力、答えを教えないように心がけています。
たとえば今回の展示を見たことがきっかけで仏像に興味を持った子どもが、自分で仏像展を見つけてきて、「これに行きたい!」と言ってきたとしたら、それはとても素晴らしいこと。
子どもが自分で探す、見つけてくる。そういう行動に繋がれば何よりだと思います。大人はすぐにわかりやすい結果を求めがちですが、感性が育つのには時間がかかるもの。焦らず、ゆっくり見守ってあげてほしいです。
展覧会から繋げる「夏休みの自由研究」
最後に、本と子育てのウェブメディア「コクリコ」編集部より、古田教授のお話をふまえた、この夏をさらに楽しむためのおうちでの「ひと工夫」をご紹介します。
古田教授が教えてくださった、仏像を解体・組み立てる「保存修復」の視点や、藤田嗣治の「自己演出」の物語。これらはそのまま、素晴らしい自由研究のテーマになります。
おすすめは、会場に足を運んだ後、お子さんが一番驚いた講義テーマを1つ選び、「なぜ、昔の人はこれを作ったのか?」「どうやって100年も形を保てているのか?」といった素朴な疑問をノートにまとめてみることです。
教授が仰るように、大人が先回りして答えを教える必要はありません。子ども自身が「不思議だな」と自発的に調べたくなる、そんな探究のスイッチを、この夏、上野の森で探してみませんか。
取材・文/木下千寿
撮影/柏原力
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