手元にお金がない場合の「方法選択」が重要!
泉:最初に「意思決定のツリー」の一番下にある緑の丸の中に、ほしいものと予算を書きます。ここできちんと値段を調べるのも大切なこと。消費税までしっかり入れておくとよいですね。
泉:次にどうやって手に入れるか、方法を考えます。「おこづかい計画帳」では、4つ書けるようになっているので、思いついた方法を書いてみましょう。
──4つも思いつくのか心配です……! 「貯金をして買う」、「親に買ってもらう」、「お年玉で買う」ほかに、なにかありますか?
泉:もっと頭をやわらかくして考えてみましょう。ゲームソフトや漫画だったら、友達やお店で「借りる(レンタルする)」という方法があるでしょう? もしきょうだいがいたら、「お金を出し合って買う」こともできます。コンサートのチケットだったら、申し込みの期限があるものだから、すぐにお金がいります。そうしたら「親からお金を借りる」という選択肢が考えられますね。
──なるほど。推しが同じなら「親といっしょに行く」という方法もアリですね!
泉:もちろん、どうしてもお金の都合がつかなければ「あきらめる」という選択も必要でしょう。でも最初から「あきらめる」を選べる子はいません。私のセミナーで、勉強机のイスに合う、ピンク色のクッションがほしいと書いた小学1年生の子は、「自分で手作りする」という方法を思いついていました。このように、目的を達成するにはいろんな方法があるということを、自分で見つけるのが大切なんです。
方法を思いついたら、次にその方法の「わるいところ」と「よいところ」を挙げていきます。
例えば、ゲームソフトを「貯金をして買う」場合の「わるいところ」は、実際にソフトを手に入れるまでに時間がかかること。最新ゲームをプレイできるんだと友達に自慢したいのに、できないことです。ゲームは次々と新しいものがでるので、お金が貯まったころには、違うゲームソフトがほしくなるかもしれません。でもお金が貯まっているので、別のゲームソフトがほしくなっても買えるところが「よいところ」ですね。時間を置いて考えたら「そんなにほしくなかったのかも」と思うかもしれないので、ムダづかいをしなくてすんだというのも「よいところ」といえるかもしれません。
──未来を想像しているみたいで、考えるのが楽しいですね! それにじっくり考えていくと「ほしい!」という気持ちがちょっとずつ小さくなる気がします。
泉:それも狙いです。お金と引き換えに、自分はなにを手に入れるのか。手に入れたものは、本当に自分がほしかったものなのかを落ち着いて考えてみると、自分の「欲望の限界」がみえてきます。4パターン全部書くことができたら、最後に1つ選んで、他の3つは諦めましょう。これを繰り返し体験して、何かを得たら別の何かを失うという「トレードオフ」の考え方を身につけていくんです。
ほしいものができるたびに「意思決定のツリー」をやると、今までの自分のお金の使い方を振り返ると同時に、新しい方法を考えつくことができるかもしれません。もちろん「諦める」という選択肢もひとつの答えです。そうしたら、考えた結果「諦める」と自分で納得できるようになる「我慢できた満足感」と「自立心が」育っているということです。
──子どもが自発的に「我慢すること」を覚えてくれるなんて、すごいです!
泉:「意思決定のツリー」のより詳しい書き方を『動く図鑑MOVE お金と経済』で紹介しているので、参考にしてみてください。
3ヵ月先の予定を見ながらお金を管理する
泉:方法が決まったら、さっそくお金の流れを書いていきます。このとき、できれば3ヵ月先まで考えられるように、3枚ページをつなげてください。
──なぜ3ヵ月なんですか?
泉:本当は6ヵ月くらいが理想ですが、3ヵ月ほどあれば、大きなお金を使うタイミングがわかるからです。1月からおこづかい計画帳をつけ始めると、2月にバレンタインデーがあって、3月には春休みがあります。春休みにお出かけする計画があったら、「おでかけで使うお金を残しておかなくちゃ」と準備することができます。
でも、お金は好きなものだけではなく、必要なものを買うためにも使わなければいけません。それを「お金を使う計画」に書いていきます。
次のおこづかいをもらう日になったら、もらったお金と使ったお金を合計して、残ったお金を出します。最後に自分の感想を書いたら、おうちの人にも感想を書いてもらいます。「今月は貯金をがんばったね」とか「ほしいものが買えてよかったね」という一言でいいんです。感想は、家族でお金の話をするきっかけのひとつ。お金の話はタブーではないという感覚を、ぜひ身につけてもらいたいですね。
「おこづかい計画帳」で身につく3つの力
──「おこづかい帳」を使うと身につくことはなんですか?
泉:ひとつは自立性と自主性です。自分のお金を自分で使うと、子どもは「大人」の仲間入りをした気分になります。失敗も成功も全部自分だけのものという体験は、かけがえのないものです。ふたつ目は計画性。3つ目が貯蓄の習慣です。
大切なのは金銭感覚を養うことなので、収支が合わないことには多少目をつぶって、楽しくできるレベルでやり続けてみてください。そしてやっぱりおこづかいは、現金がおすすめです。お金と交換でものが手に入るというお金の機能を覚えられるし、使ったら減るのが目に見えてわかるのが一番のメリット。ぜひ試してみてくださいね。
「おこづかい計画帳」をダウンロードする
A4サイズで印刷したら、真ん中で折って使ってね!



中村 美奈子
絵本サイトの運営に関わり、絵本作家への取材も多数。また漫画、アニメ、映画、ゲーム、アイドルなど幅広いエンターテインメントジャンルで記事を執筆。漫画家や声優、役者、監督、クリエイターなど、これまでに200名以上へのインタビューを経験している。
絵本サイトの運営に関わり、絵本作家への取材も多数。また漫画、アニメ、映画、ゲーム、アイドルなど幅広いエンターテインメントジャンルで記事を執筆。漫画家や声優、役者、監督、クリエイターなど、これまでに200名以上へのインタビューを経験している。






















































































泉 美智子
子どもの環境・経済教育研究室代表。公立鳥取環境大学経営学部准教授(2018年3月まで)、放送大学、四国学院大学(子ども福祉学科)非常勤講師。全国各地で「女性のためのコーヒータイムの経済学」や「エシカル・キッズ・ラボ」「親子経済教室」など公演活動のかたわらテレビ、ラジオ出演も。著書に『調べてみようお金の動き』(岩波書店)、『はじめまして!10歳からの経済学』(ゆまに書房)ほか、環境、経済絵本、児童書の執筆多数。
子どもの環境・経済教育研究室代表。公立鳥取環境大学経営学部准教授(2018年3月まで)、放送大学、四国学院大学(子ども福祉学科)非常勤講師。全国各地で「女性のためのコーヒータイムの経済学」や「エシカル・キッズ・ラボ」「親子経済教室」など公演活動のかたわらテレビ、ラジオ出演も。著書に『調べてみようお金の動き』(岩波書店)、『はじめまして!10歳からの経済学』(ゆまに書房)ほか、環境、経済絵本、児童書の執筆多数。