
「学びのプロセスを評価する」山田先生が実践する子どもの成長を認める多様な評価とは
学校の「当たり前」を考える 山田剛輔先生の実践#4 学びのプロセスを認める評価とは?
2025.03.16
他者を尊重し、自立する子どもたち
山田先生は、2024年度に担任した4年3組の子どもたちの様子を、次のように話します。
「個人で取り組むことが多い科目でも、お互いに励ましながら、よいところは認め合っていますね。
プロジェクトを進めるために、子どもたちは何度も話し合い、助け合ってきました。友だちの長所、優しい部分などに触れる機会もたくさんありました。
そうした経験が他者を尊重する行動を引き出し、クラス全体の温かい雰囲気につながっているのだと感じます」(山田先生)
子どもたちの自立的な行動も増えてきました。それをよく表しているのが、朝の会です。4年3組では時間になると日直が前に立ち、先生の到着を待たずに会の開始がアナウンスされます。
取材した日、体育の準備をしていた山田先生が少し遅れて教室に入ってくると、「先生、遅いよ。もう始めちゃった」との声があがり、「ごめんごめん」と謝るやりとりがありました。

連載第3回で紹介した「教室のつくり手は子どもたちであり、教師はいち参加者」という山田先生の言葉どおり、子どもたちが自ら学校生活を進めていることがよくわかります。
学びのプロセスを評価する
学びへの積極性、主体的な行動、仲間へのサポートなど、子どもたちはこの1年間で大きな変化を遂げました。
山田先生は、こうした成長についても子どもたちにフィードバックし、今後の学習につなげてほしいと考えています。しかし、一般的な「評価」では、それが難しい部分もあります。
「評価」というと、成績表や通知表を思い浮かべる人がほとんどです。これは「総括的評価」という方法で、学期末や学年末などの学習の最後に、どの程度達成できたのかを測ります。
総括的評価はテストの点数を根拠にすることが多く、平均値を算出して「よくできる、できる、もう少し」などの成績づけを行います。
「総括的評価だけに偏ると、子どもたちはどうしても『できた/できなかった』という部分にとらわれてしまいます。それに、いくつかの単元を平均した結果を示しても、どの部分ができて、どの部分できていないのかまではわかりません。
僕自身は、取り組んだ学習でどんなよいところがあったのか、どのように成長したのか、といった具体的な内容こそ、子どもたちに伝えるべきだと考えています。子どもはよい部分を認められたときに、『次もやってみよう』と前向きになるからです。
こうした点を評価するためには、学習のプロセス段階で行う評価(形成的評価)が有効です。だから僕自身は、普段の授業で子どもたちの姿をしっかりと見取り、必要に応じて声かけなどを行う『評価』を大切にしています」(山田先生)
「評価」という言葉からイメージされるのは、テストの点数や入学試験などでの合否といった「結果」を知らせるものです。しかし、山田先生が話すように、授業など学習過程の中で子どもたちに寄り添い、よいところや改善点を言葉で伝えていくことも、評価のかたちの一つであり、重要な側面です。
2020年に施行された学習指導要領においても、評価について「学習の成果だけでなく、学習の過程を一層重視することが大切」「一人一人のもつよい点や可能性などの多様な側面、進歩の様子などを把握し、(中略)児童がどれだけ成長したかという視点を大切にする」と明記されています。
「じっくり考え自分なりの考えを書く子、自分が終わっても周りをサポートする子、納得するまでこだわり抜いて仕上げる子。授業をしていると、子どもの創意工夫、学習に向かう意欲にたくさん出合います。
子ども自身にも保護者にも、こうしたその子なりの素晴らしさ、学びのプロセスの中で出てくるよさを認め、伝えていきたいと考えています」(山田先生)