「学びのプロセスを評価する」山田先生が実践する子どもの成長を認める多様な評価とは

学校の「当たり前」を考える 山田剛輔先生の実践#4 学びのプロセスを認める評価とは?

小学校で学ぶ意味とは

山田先生は、小学校で学習する意味について、次のように話します。

「原点に返って『何のために学ぶのか』を考えてみれば、それはもちろん、テストで高い点をとることやよい成績を得るためではないでしょう。

子ども自身が今をよりよく生きるためであり、自分が属するコミュニティー、ひいては社会をよくしていくために小学校での学びがある。僕はそう考えています。

自分たちが考え行動したことで、何かを作ったり変えたりすることができる。そして、それが誰かのためになると実感できる。子どものころからの経験の積み重ねが将来、民主主義を担っていく力になるのではないでしょうか」(山田先生)

商店街のお店に協力を依頼する子どもたち。  写真提供:山田剛輔氏
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山田先生の授業に伴走する久保寺節子先生(青山学院大学教育人間科学部特任教授)は、「山田先生と子どもたちは、プロジェクトをとおして社会とつながり、どうしたらよりよく生きられるのかを考え、試行錯誤するという貴重な経験をしている」と話します。


教科横断型、子どもの生活に近いテーマ、学校外との交流・協働。山田先生の「プロジェクト」の実践を、これらのキーワードでとらえることもできるでしょう。しかし、取材をしてわかったのは、授業や学習の形式以上に重要な要素がある、ということです。

一人ひとりを尊重し、自分の意見を押しつけずに対話する。一方的に「教える」「指導する」のではなく、常に一緒に考える。よいところを認め、伝える。こうした山田先生のあり方そのものが、子どもたちの自由な発想や自発的な行動につながり、学びへの前向きな態度を引き出したのです。

大人にできるのは、「将来のためだから」と子どもを型にはめることではなく、子どもに寄り添い、ともに悩み考え、その子自身のよさを認めることといえるでしょう。

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【山田剛輔 プロフィール】
茅ヶ崎市立香川小学校総括教諭。2005年に教員になり2024年で20年目。2018年から香川小学校に勤務。2024年9月『時間割から子どもと一緒につくることにしてみた。』(学事出版/共著)を出版。神奈川県「第1回いのちの授業大賞」優秀賞受賞。

山田先生の共著『時間割から子どもと一緒につくることにしてみた。』(学事出版)には、プロジェクトの実践内容が詳しく紹介されています。

取材・文 川崎ちづる

【学校の「当たり前」を考える 山田剛輔先生の実践】の連載は、全4回。
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※公開日までリンク無効

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かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。