中流家庭からプチセレブ一家へ嫁いだライター・華子。愛娘は自分と同じ普通コースで育てようと思っていたものの、義母の一言から、小学校受験への道が始まりました。
まったく未知だった東京のお受験は、庶民にはわからないことだらけ! 受験マニュアルには決して書かれていない(書けない)、お受験の赤裸々な裏話をお伝えします。
第8回は「お教室の中元・歳暮」です。
中元・歳暮は老舗百貨店の包み&手渡しが基本
お中元の季節です。
小学校受験のお教室に通う子どもを持つママたちが、ある意味もっとも頭を悩ますのが、このお中元・お歳暮の時期かもしれません。これらは、日頃の感謝の気持ちを「形」にして伝える、年に2回の大切なイベント。私にとって人生初でもありました。
それまで、お中元といえば、だいたい3000〜5000円くらいの品物を贈るものだと思っていました。だけど、ここは、何といっても名門私立小をめざす、ご紹介制の個人のお教室。皆さん高価な品物を贈るだろうし、ご紹介者である山の手マダム(#1)の顔も立てなきゃいけない。
と、いうわけで、まずは、お教室ママの大先輩でもある山の手マダムに、方法や手順、品物選びについてご相談することに。
マダムによると、まずは先生に「季節のご挨拶に伺いたい」と、個別面談のアポを取る。日時が決まったら、正装をしてお中元を持っていく。このとき大切なのが、たとえ、重たいものや大きくてかさばるものであっても宅配にせず、自ら手に持ち、足を運ぶこと。そういう“わざわざ”感のある行動が、どうやら上の世代の方々には「実直」と受け取られ、好印象らしい。
そして、もうひとつ。封書といえば「鳩居堂」(#1で紹介したお受験業界の必須アイテム)がお約束だったのに続き、品物は老舗百貨店の包装紙に包まれているのがベターだということ。確かに、あの定番の柄を目にしただけで、中身は“良質な高級品”という印象を受ける。まさに、これぞ伝統と格式の重み。特に、高度成長期を経てきた年輩世代にとっては、ひと目で価値がわかる品物であり、流行のお店のものより安心・安定を感じるのでしょう。
さっそく、山の手マダムに聞いた先生の好物を老舗百貨店で購入。値段も奮発して、破格の1万円相当! マダムに言われたとおり、大きな箱を知名度抜群の柄で包み、堂々と名前を入れた熨斗(のし)をつけ、意気揚々と「季節のご挨拶」に伺ったのです。おそらく一番のり。小1時間ほど先生からお話を伺い、部屋を後にしたときは、完全に達成感にあふれたドヤ顔だったことでしょう。
“ダイ”の上に置く本当のお中元とは?
しかし、その数日後。
お教室ママたちと「季節のご挨拶」の話になったときのことです。
「もう、ご挨拶はおすませになった?」
「ええ」
「うちはまだ」
などと、いつものようになごやかに話が交わされていく。
「“ダイ”は何がいいかしら」
「うちは〇〇(店名)にしたわよ」
……え? ちょっと、待って!
「ダイ」って、なに?
皆さん、平然と会話のキャッチボールをしているけど、私はその「ダイ」の意味をキャッチできない。何それ? その「ダイ」って、お中元界でそんなにメジャーな用語なの? もしかして必須アイテム? はたまた、今流行している何か? それとも先生の好きな食べ物や品物とか?? 「季節のご挨拶」初心者の私には、皆目見当がつかない。とりあえず、いつものようにその場は笑顔でやり過ごし、帰ってソッコー、山の手マダムに解説を求めたのです。
「ああ、それね。“お中元”の下に置く、ダイとなる品物のことよ。華子さんの代は大変ねぇ」
ラッパーのように韻を踏むマダム。
しかし、まだ何を言っているのか分からない。“お中元”の品の下に「ダイ」となる品物がもうひとつ必要だってこと? お受験業界では「2段重ねのお中元」が常識なの??
「違うわよ。この場合の“お中元”は、単刀直入にいうと“お金”のこと。つまり、ダイとはお金を乗せるための“台”。それは千円程度のお菓子でもいいのよ。あくまでも主役は“お中元(お金)”ですからね」
ゴンッ!!!(←スマホが手から滑り落ちて床に激突する音)
あんまりにも驚いて、すぐには次の言葉が出てこない。
サラリと話されましたが、それって、よく時代劇に出てくる、大黒屋と悪代官の“ようかんの下に小判がぎっしり”ってやつみたいじゃないですか!