中学受験「親の伴走」の実態は? “「灘中までの道」難関中学受験伴走父“が明かした本当のこと

令和の中学受験の伴走・親の心得 #1 中学受験を決めたときの親の心構えと資金問題について

教育ジャーナリスト:佐野 倫子

中学受験に対する親のサポートはどこまですればよいのでしょうか?  写真:アフロ
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2024年の首都圏受験者数は実に5万2400人。前年まで9年連続で増加を続けてきた中学入試の受験者数。少子化の影響もあり微減したものの、受験率は18.1%と過去最高を記録しました(首都圏模試センター調べ)。

SNSやニュース記事には「令和の中学受験は過熱し、共働きの家庭が増えているにもかかわらず、“親の伴走“が相当必要」という話であふれています。そう、中学受験には親の「伴走=フォロー」が欠かせないのです。

「息子が小学5年生になり、中学受験に伴走すると決めたとき、私はこれまでの働き方を変えました。それまでは残業も多く、子育ては共働きにもかかわらず妻に任せきり。お世辞にもいい父親とは言えなかったと思います」

そう語ってくれたのは、「君とパパの片道列車」の著者である「灘中までの道」さん(以下、灘中さん)。関西の超名門男子校・灘中学校を、親子二人三脚で目指した様子が克明に書かれた著書には、スパルタな中学受験伴走日記とは一線を画す、父の愛があふれています。

中学受験の伴走といえば、これまでは母親の担当というイメージがありましたが、共働きが主流になった今、できれば夫婦で分担して乗り切りたいもの。実際、パパの伴走が増えているともいいます。

そこで、灘中さんに、「令和の中学受験の伴走」についてお話しいただきました。聞き手兼解説は、教育ジャーナリストの佐野倫子さん。

1回目は、中学受験を決めたときの親の構えや資金問題についてです。

(全3回の1回目)

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灘中までの道
40代、地方在住サラリーマン。息子が小学5年生の3月から1日も欠かさず中学受験にまつわるツイートをし続けた。フォロー0のままフォロワー数は1万人超え。合格発表ツイートには117万アクセスもあった、最も有名な中受パパの一人。@mezasenadachuu

佐野倫子(さの・みちこ)
東京生まれ、早稲田大学卒。航空業界・出版社勤務を経て作家・教育ジャーナリストに。「mi‐mollet」、ダイヤモンド・オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどで小説・コラムを多数執筆。2児の母。

中学受験を決めた親に必要な心構えとは?

そもそも、中学受験(以下、中受)をしようと決めたものの、親の伴走って何を指すの? どのくらい大変……? まず、中受に足を踏み入れたばかりの親御さんは、こんな疑問をお持ちの方が多いと思います。まずはそこからお聞きしたいと思います。

「私は、中受に関して息子に勉強そのものを教えるのは無理だなと早々に悟りました。私たち夫婦には中受の経験もないし、はじめは知識もありませんでした。スタートしてから情報収集したという感じです。

そのうちSNSで発信することで、突っ込み待ちというか、中受への取り組み方が大きく逸れたらフォロワーさんが指摘してくれるだろうと考えたんです。

具体的に私がしたことは、息子が勉強に打ち込む環境を整えること。サポーターに徹していました。テキストで間違えた問題をコピーしたり、テストで間違えた問題を集積しておきました。それらは、遠い灘中特訓クラスの遠い教室まで受けに行く、移動中の電車の中でさっと渡していました。

そして、その遠い教室は、家と反対方面でしたが、必ず仕事のあとに迎えに行き、一緒に帰りました」
(灘中さん)

なるほど。親の伴走とはいっても、一緒に問題を解いたり、教えたりする必要は必ずしもないということですね。灘中さんの場合、勉強に関しては、塾のカリキュラムと先生に下駄を預けていらっしゃいました。

親もスーパーマンではありませんから、お金を稼ぎながら、子どもの受験のすべてをフォローすることは不可能です。応援する気持ちをベースに、可能なことと、子どもに必要なことは労力をいとわずに何でもする。伴走は、そんな姿勢をイメージすることができました。

しかし、それも簡単なことではありません。もう少し具体的に、令和の中学受験をイメージしてみましょう。

資金計画こそ中受最初の関門

中学受験を考えたとき、まず親がしっかり考えておきたいのが費用のこと。

大手進学塾では、6年生時の塾費用目安は100万円~150万円ほど。このほかにかかる費用は書籍代やお弁当代、交通費、模試費用。そしてなにより受験料や進学先の入学金(場合によっては併願校にも納める場合あり)、初年度授業料を6年生の最後に支払うことになります。

これは、決して見切り発車でスタートしていい金額ではありません。私立中高一貫校に進学する場合は毎年授業料や積み立て、学用品購入費が年間100万円近くかかりますし、交通費や部活費、交際費やお小遣いもあります。また、大学受験に向けて早々に通塾するケースも予想以上に多く、教育費についてしっかり考えることが必要です。

「最後の数ヵ月は、十万単位で引き落としがあり、そのたびに夫婦で『これは覚悟を問われているんだ……』とつぶやいていました(笑)。そのころになると、子どもが望むなら、やらせてあげたい。そして、お金がかかるほど、『やれることはやったんだ』と、親が安心感を得られるような感覚でした。

終わってみると、中受を始めたときにイメージしてたよりも、ずっとお金がかかりました。

私が詳しくなかっただけで、ご存知の方も多いとは思いますが、当初は月に4~5万円くらい塾代を出せればなんとかなるかな? という感覚でした。相当甘かったですね……。最後は飛ぶようにお金がかかります。ですから、ぜひこれから受験を検討する方には教育費の計画はしっかり立てることをお勧めします」
(灘中さん)

なんともリアルなアドバイス。このようなお話は、教育産業側からは積極的に出てきません。しかし、「皆が塾に行き出したから、とりあえずわが家も中学受験しようかな」、で始めていい金額ではありません。

それを知ったうえで、しっかり準備できていれば、後半戦で慌てることもないはず。なんとなく中学受験に参戦してしまう前に、ご家庭で検討したいポイントですね。学習スケジュールや、習熟度に基づいた資金計画を立てていれば、6年生の直前期に、不要な個別指導や家庭教師、塾の成績アップのためにさらに塾に通う、などの「重課金」をすることも避けられるでしょう。

さて、さまざまな角度から検討した結果、それでも中学受験をしようと決めたとき。肝心のお子さんとはどのような接し方、サポート方法があるのでしょうか? 2回目ではそれらを中心に、引き続き灘中さんにお伺いします。

取材・文/佐野倫子

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(3回目は2024年4月18日公開。公開日までリンク無効)

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さの みちこ

佐野 倫子

Michiko Sano
教育ジャーナリスト

東京生まれ、早稲田大学卒。英国ロンドン大学ロイヤルホロウェイ留学。航空業界・出版社勤務を経て、作家・教育ジャーナリストに。 講談社mi-mollet、漫画雑誌Kiss(原作)、ダイヤモンド・オンライン、幻冬舎ゴールドオンライン、東京カレンダーWEB、月刊[エアステージ]などで小説・コラムを多数執筆。2人の男の子の母。 主な著書:『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)、『知られざる空港のプロフェッショナル』(交通新聞社)。 Instagram @michikosano57 X @michikosano57

東京生まれ、早稲田大学卒。英国ロンドン大学ロイヤルホロウェイ留学。航空業界・出版社勤務を経て、作家・教育ジャーナリストに。 講談社mi-mollet、漫画雑誌Kiss(原作)、ダイヤモンド・オンライン、幻冬舎ゴールドオンライン、東京カレンダーWEB、月刊[エアステージ]などで小説・コラムを多数執筆。2人の男の子の母。 主な著書:『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)、『知られざる空港のプロフェッショナル』(交通新聞社)。 Instagram @michikosano57 X @michikosano57