中学受験「親の伴走」直前期から合格発表まで 「保護者の主なタスクリスト」と「過酷な受験日程」大公開!

令和の中学受験の伴走・親の心得 #3 6年生の後期~直前期までスケジュール管理

教育ジャーナリスト:佐野 倫子

伴走もいよいよ大詰めとなる、中学受験の長いクライマックス期を解説します。  写真:アフロ(イメージ)
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中学受験(以下、中受)のクライマックスは6年生の後期から。1月から始まる受験期まで長丁場です。

関西の難関校・灘中へ挑戦した息子さんを伴走した父・灘中までの道(以下、灘中)さんは、このクライマックス期こそ、「親の出番」だといいます。

というのも、この時期の中受伴走は、志望校の選定、過去問、出願、志望校の試験スケジュール、遠征受験をするならホテルの確保など、親のやることが多岐にわたるうえ、さらに子どもを受験日まで導いてあげなくてはいけないからです。

3回目では、6年生の後期に親がすべきことについて、引き続き教育ジャーナリストの佐野倫子さんの聞き手兼解説でお伝えします。

(全3回の3回目。1回目を読む。2回目を読む

灘中までの道
40代、地方在住サラリーマン。息子が小学5年生の3月から1日も欠かさず中学受験にまつわるツイートをし続けた。フォロー0のままフォロワー数は1万人超え。合格発表ツイートには117万アクセスもあった、最も有名な中受パパの一人。@mezasenadachuu

佐野倫子(さの・みちこ)
東京生まれ、早稲田大学卒。航空業界・出版社勤務を経て作家・教育ジャーナリストに。「mi‐mollet」、ダイヤモンド・オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどで小説・コラムを多数執筆。2児の母。

いよいよ本番直前! そのとき親ができること

前回では中受の一般的な学習の様子と、伴走によって変わる親子関係についてお伝えしました。最終回となる3回目では、中学受験のクライマックス期についてです。

中学受験のクライマックスは長丁場。その期間は、6年生の後期~直前期までにおよびます。灘中さんは「このタイミングこそ、ついに父の出番だ!」と考えたといいます。

「私が直前期に力を入れたのは、過去問のスケジュールを立てることでした。大手塾が子ども一人ひとりに合った毎日の過去問スケジュールを立てるのは難しい。親がある程度導いてあげるべきだと思いました。

息子の場合は、前日までの調子や不安、その日の気分で、優先的に取り組みたい科目が変わりました。今日は算・算・国・理、明日は理・理・国・算など。

息子から伝わってくる塾の先生のアドバイスを取り入れながら、コピーした過去問を本人が一番やる気になる順番にセットしておく。受験期の終盤には、私の準備した過去問が息子の希望とピッタリと揃い、息子が笑ってくれたことがありました。

もちろんこれは私が通っていた塾、地域の話なので、ほかの塾ではまた状況は違うと思います。ただ一般的には志望校の最終的な選定、入試パターンの作成、過去問のスケジューリングは親の出番だろうと思います」
(灘中さん)

何をいつやるか、やらないかという取捨選択、スケジュール管理は合否を分ける一因と言っても過言ではありません。もちろん基本的には塾のカリキュラムに乗っていくという感覚ですが、やはり個人差はあり、得意不得意を把握している親が調整できれば鬼に金棒。

プロである塾についていき、アドバイスをもらいながらも、最後は親が責任を持つ覚悟が必要です。それがいい結果につながるのであれば、忙しいながらも全力でサポートしたいですね。

直前期のスケジューリングはダブルチェックを

さて、いよいよ直前期になると、これほど家庭内の連携が求められる場面もないでしょう。

6年生の12月ごろになると、それぞれの中学に出願が始まります。直前期のおおまかなタスクをまとめてみましょう。

・志望校の最終決定
・本番数日間の詳細なタイムスケジュール
・出願締め切り日時を全校分確認、締め切り厳守で出願
・受験料(2万円~3万円)、入学金(場合によっては数校分)を用意
・少し遠い学校で、前泊が必要な場合はホテルを予約
・1月~2月の仕事の調整。有給休暇を誰がいつとるかを相談
・きょうだいがいる場合は本番数日間に祖父母に来てもらうなど家庭内シフトを相談
・1月の過ごし方(小学校や塾、勉強法)について話し合う
・進学希望順位を家族で明確にしておく
・調査書の提出が必要な場合は小学校に依頼、面接がある場合は練習

もちろんこのほかにも体調管理やメンタルケアなど生活の中でサポートすべきことは山のようにありますが、こと夫婦で協働したいのが上記のポイント。ミスが許されないシーンなので、家族全員で締め切り時間などはダブルチェックが必要です。

灘中さんの著書には、クライマックスに向けて父のサポートの様子が克明に描かれています。そして書籍の半分ほどのページを割いて、直前期から合格発表までがつづられています。

つまり、それほどまでに最後の1ヵ月は濃密で、忘れがたく、壮絶な日々ということでしょう。

灘中さんの著書(「君とパパの片道列車 ~最難関を目指した父子の中学受験日記」)から、お子さんの受験スケジュールを抜粋してみました。中学受験のラストデイズがいかに過酷か、その片鱗が覗けるかと思います。

過酷! 中学受験ラストデイズの日程大公開

2021年12月18日    海陽中等教育学校 特別給費生 入試

2021年12月20日    海陽中等教育学校 特別給費生 合格発表/不合格

「何度入力し直しても、画面に出てくる文字はやはり、『残念ながら不合格です』のままです。(中略)どうしよう、落ちた。」

2021年12月25日    海陽中等教育学校 入試Ⅰ

2021年12月27日    海陽中等教育学校 入試Ⅰ 合格発表/合格

「やった、初めての合格です。先週は不合格だったので知りませんでしたが、合格すると画面が桜色になるのです。これは良い色、うれしい桜色です。」(201P)

2022年1月7日        西大和学園 サテライト入試

2022年1月9日        愛光 入試

2022年1月10日        西大和学園 サテライト入試 合格発表/不合格

「金曜日に西大和学園を受験して、そのあと夜まで授業があって。土曜日も一日塾にいて、それから三宮に行って宿泊して、翌日の日曜には愛光を受験したあとに塾の授業を受けました。さらに夜は自習室へ行って、必死に過去問をこなして。

その上で不合格という結果を受け止めなければならないのです。あの大変な努力が報われないつらさ。

不合格は海陽特給で経験しています。でも慣れたわけではない
。」(223P)

2022年1月11日 愛光 合格発表/合格

「『お子さんには、灘中に挑戦する力があります』

中学受験の神様から、そう認められた気がしました。」
(229P)

2022年1月15日 灘中 入試 1日目

2022年1月16日午前 灘中 入試 2日目

2022年1月16日午後 西大和学園(本校) 入試

2022年1月17日 東大寺学園 入試・西大和学園(本校) 合格発表/合格

「私は椅子に座ったまま、ゆっくりとフードコートの天井を見上げました。目に一杯たまった涙がこぼれないように。」(277P)

2022年1月18日 灘中 合格発表

「私は、お腹に力を入れました。
息子の中学受験。私はたぶん、この時のために、ずっと一緒にいたのです。」
(285ページ)

2022年1月19日 東大寺学園 合格発表/合格

灘中さん親子の中学受験物語、灘中の合否は、これから書籍を読まれる方のため、ここに書くのは控えます。

中学受験には、ドラマがあります。受験するご家庭の数だけ、あります。それは必ずしも幸せなだけではなく、ときにほろ苦く、ときに一生忘れられない出来事になるでしょう。

その大いなる挑戦を、家族として、チームで向き合うことができれば、きっと実りのあるかけがえのない時間になるでしょう。皆さんの中学受験の物語が、親子の大切な軌跡になることを祈っています。

取材・文/佐野倫子

中学受験伴走は全3回。
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さの みちこ

佐野 倫子

Michiko Sano
教育ジャーナリスト

東京生まれ、早稲田大学卒。英国ロンドン大学ロイヤルホロウェイ留学。航空業界・出版社勤務を経て、作家・教育ジャーナリストに。 講談社mi-mollet、漫画雑誌Kiss(原作)、ダイヤモンド・オンライン、幻冬舎ゴールドオンライン、東京カレンダーWEB、月刊[エアステージ]などで小説・コラムを多数執筆。2人の男の子の母。 主な著書:『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)、『知られざる空港のプロフェッショナル』(交通新聞社)。 Instagram @michikosano57 X @michikosano57

東京生まれ、早稲田大学卒。英国ロンドン大学ロイヤルホロウェイ留学。航空業界・出版社勤務を経て、作家・教育ジャーナリストに。 講談社mi-mollet、漫画雑誌Kiss(原作)、ダイヤモンド・オンライン、幻冬舎ゴールドオンライン、東京カレンダーWEB、月刊[エアステージ]などで小説・コラムを多数執筆。2人の男の子の母。 主な著書:『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)、『知られざる空港のプロフェッショナル』(交通新聞社)。 Instagram @michikosano57 X @michikosano57