子どもの主体性は「思わず出ちゃう」もの 「育む」ものでも「引き出す」ものでもない〔ある公立小学校教員の驚きの実践〕

現役教員に聞く 子どもが主体的になるヒント#2 親子編

自己決定は「失敗」の連続!?

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──授業の様子を取材して、子どもたちが積極的に学習している姿に驚きました。自分で選ぶ・決める機会があれば、子どもはどんどん主体的になるんだと実感しました。

大窪先生:子どもたちの成長はすさまじいですよね。新しいことへの感度も良いですし、吸収力も高い。すごく柔軟だと常々感じています。

ただ、授業は試行錯誤ですし、いつも順調に進んでいるかというと、そんなことはありません。自分で学べる、選択できる機会を用意したからといって、すぐにうまくいくわけではないんです。失敗は日常茶飯事ですね。

たとえば自由進度学習の場合、子ども自身は余裕があると考え、のんびり進めているとします。だけど、最後になって「やばい、全然終わらない……」と焦る。そんなこともよくあります(笑)。

【自由進度学習とは】
子どもが自分のペースで学びを進めていく学習方法。一斉授業とは異なり、子どもたち自身が学習計画を立て、教材も自分で選んで進めていく。具体的な方法は実施者による。

でも、そういう経験を子どもはちゃんと受け止めているんです。「時間が余ると思っていたけどギリギリだったので、次はもっとしっかり計画を立ててやりたい」と振り返りシートに書いていることも多い。

自分で取り組んでみて、失敗したからこそ気づくことができるわけです。最初から教員に指摘されたら、「実感」までは至らないと思います。失敗やうまくいかない経験から学ぶことは大きいですから、学校ではたくさん失敗してくれていいと思っています。

自由進度学習の様子。子どもたちは友だちの力を借りながら、「自分で学ぶ」経験をします。  写真:川崎ちづる

「コントロール欲」を自覚する

──子どもが自分で気づくことが大切、という考え方は理解しているつもりですが、まったくやる気がないように見えると、我慢できずについつい声をかけてしまう保護者も多いと思います。

大窪先生:すごくよくわかります。僕自身も同じですよ。子どもへの注意や指摘をぐっとこらえる瞬間は、たくさんあります。

作家の時間や自由進度学習などで、20分間ずっと友だちと話しているだけ……に見える子がいれば、その子の近くに寄って「今はなにする時間だっけ?」などと言いたくなってしまいます。

ただ、実際にそこで上から「やりなさい」的な圧をかけたとして、その場での行動は変わるかもしれないけれど、自分で気づいて取り組んだときのような意味は持たないのです。

自席を離れて互いに学び合う子どもたち。  写真:川崎ちづる

そもそも、学校に来てから帰るまでずっと集中しているなんて、無理な話です。子どもだって、ちょっと気を抜きたいときもある。そのあたりも踏まえて、自分のペースをつかむためにいろいろ試してほしいとも思っているんです。

だから、様子を見に行ったりちょっとした声がけをしたりはしますが、上から強制しないようには気をつけています。なかなか塩梅が難しいですが(笑)。

──先生も言いたい気持ちになるのですね。そんなときは、どうやって言葉を飲み込んでいるのですか?

大窪先生:子どもを指導・管理しようという発想が思い浮かんだとき、いつも意識しているフレーズがあります。それは、「自分のコントロール欲を満たしたいだけではないか?」というものです。

人には、集団を思いどおりにしたい「コントロール欲」が必ずあると思っています。まずはそれに、自覚的になることが必要です。

──それは保護者にもおおいに当てはまりそうです。心配しているようで、子どもを思いどおりコントロールしたいという気持ちを持っているときもありますね。

大窪先生:保護者も教員も、そこは同じだと思います。

子どもに「○○しなさい」と言うとき、それは「私の願い」「私のため」であって、単に自分の気持ちを押しつけているだけ、ということはよくあります。

「コントロール欲」自体を完全になくしてしまうことはできませんが、まずはそれを自覚すること。そして、気づいたときは立ち止まり、できるだけ手放すように心がけています。

主体性は「思わず出ちゃう」もの

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