【中学受験】親の悩み “伴走“サポート 正しい? 間違い? 『SAPIX(サピックス)』講師に「中受ママライター」が直撃!

令和の中学受験伴走! 番外編 ~親の伴走の仕方を『SAPIX(サピックス)』に聞いた~

教育ジャーナリスト:佐野 倫子

中学受験の伴走、これが正しいのかいつも親は悩んでばかりですが……。   写真:maruco/イメージマート (※写真はイメージ)

「令和の中学受験は、自分が経験した30年前の中学受験とも異なり、伴走をしていてとても戸惑いました」と話すのは、2024年春に長男の中学受験伴走を終えたばかりの、教育ジャーナリスト・佐野倫子さん。

今回は番外編として、大手進学教室『SAPIX(サピックス)小学部』の白金高輪校 校舎責任者・竹浪和伸(たけなみかずのぶ)先生に、令和の中学受験生の親としてアップデートすべき「心構え」を伺いました。

佐野倫子(さの・みちこ)
東京生まれ、早稲田大学卒。航空業界・出版社勤務を経て作家・教育ジャーナリストに。2024年2月、中学受験伴走終了。主な著書に『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)。2児の母。

現代っ子 遠い目標に向かって「頑張れない」傾向

──我が家は2024年に受験を終えましたが、半年経った今でも伴走した私は、疲労感が残っています……。

長年「SAPIX」で教鞭を取っていらっしゃる竹浪先生からみて、最近の受験生の傾向や特徴はありますか? 

竹浪和伸先生(以下、竹浪先生):あくまで全体としての傾向にすぎませんが、現代っ子ははるか遠い目標に向かって闇雲にド根性で頑張るというのはあまり得意ではありません。

10年前と比較しても、小さな成功体験を積み重ねて、それを発展させていくことが得意ですね。

子どもの時間感覚は大人と違う

──なるほど、まだ経験してもいないことを言われてもイメージしづらいのかもしれませんね。我が家でも5年生が終わるころに「あと1年で入試だよ!」と発破をかけてもピンときていない様子でした。

竹浪先生:そうですね。大人と子どもの時間に対する感覚は大きく違いますから。そして子どもはゼロか100かで物事を捉えがちです。

例えば、課題が10ページあって、4ページしかできなかったとなったときに、「もうだめだ、せっかく計画をたてたけど、できなかったから終わり!」となってしまいます。

でもそこで保護者の方が「4ページもできてすごいね! じゃあちょっと休んだら、とりあえず7ページまでやってみよう」という感じで促してあげると、結構できるのです。そしてそうなると長持ちするのが現代っ子の特徴といえます。

小さな成功体験でいいので、ぜひそれを発展させていくという気持ちでサポートしてあげてください。

大手進学教室『SAPIX(サピックス)小学部』の白金高輪校 校舎責任者・竹浪和伸先生。

集中力は少しずつ鍛えられる

──集中力に関してはいかがでしょうか? 中学受験の伴走をしてみて、勝負を分けるのは集中力だと感じました。入試までの限られた時間を最大限につかえればいいのに、現実はそううまくはいかないな、と。

竹浪先生:おっしゃるとおり、時間が限られている中での勉強ですから集中力はとても大切です。そして、集中力は少しずつ鍛えることができます。

例えば陸上競技で、短距離走の選手は若い方が多いですよね。瞬発力の勝負だからです。でも、マラソンなどの長距離走にはけっこうベテラン選手も多い。これは持久力というものがある程度鍛えることで獲得されていくからだと私は思っています。

集中力もこれと同じで、時間をかけてじっくり養っていけるもの。だから「うちの子は集中力がない」というご相談をよく受けますが、焦らずに鍛えていくことが大切です。

佐野さんの長男くんも『SAPIX』に通われていました。

受験生になる前に「好きなことに集中」

──具体的にどのように取り組めば鍛えられるのでしょうか?

竹浪先生:これは受験生になる前にぜひやってほしいことですが、自分の好きなことに思い切り集中することですね。勉強への集中力は、好きなことに集中している時間の何分の1くらいだと思っています。集中力の絶対値が高ければ、勉強に集中できる時間も増えるのではないでしょうか。

また体力=集中力という側面もあります。体力がある子は授業中も姿勢が崩れない。やはりこういう子は強いです。今からでも体力をつけて、姿勢に気を配ってみてください。それに伴って集中力も向上すると思いますよ。

共働きの中学受験 サポートしすぎが「課題」

──「共働きで、子どもの伴走ができるか心配」という声もよく耳にします。その点はいかがでしょうか? 

竹浪先生:共働きのご家庭で通塾されている子もとても多いですし、そこは御心配には及ばないと思います。むしろ、実際の課題は「親が子どもの手を放せない」ことかもしれません。最近の保護者の方は、ついついサポートしすぎてしまう傾向があります。口を出したくなってしまうんでしょうね。

「私たちは子どもたちが自分の力で学んでいけることを目標に取り組んでいます」(竹浪先生)。

親が少しずつ手を放していく

竹浪先生:もちろん4年生、5年生の前半はそれでスムーズにいくことも多いでしょう。でも少しずつ手を放していく。

最初は勉強をしないなどつまずくことがあるかもしれませんが、そこからまた試行錯誤していくことが大切です。最終的に我々が目指しているのは、子どもたちが自分の力で学んでいけることですから。

最後になりますが、各ご家庭が希望する結果になるように、講師も本気で子どもと向き合っています。その子の成績はもちろん、性格、合う学校なども考えています。

お子さんの成長を保護者の方と一緒にサポートしていきますので、困り事などは塾の講師に気軽に聞いてみてくださいね。

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竹浪先生のお話を伺い、塾講師の方々は子どもたちが望む方向に導くために応援してくれているのだと改めて心強く感じました。

親は自分の子どもだけを見続けているという強味はあります。対して講師の方々は、これまで何百人も何千人も生徒を送り出しています。そこには膨大な経験とデータがあり、その全部を融合させて、バランスよく子どもに提供してくれています。遠慮せず、先生方にもっと相談をするべきだと改めて思いました。

これから通塾をする子、現在通っている子、その伴走をしている保護者の方、そして2025年、2026年の中学受験に挑むすべてのご家庭の皆さんを、心から応援しています。

撮影/日下部真紀
取材・文/佐野倫子

『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』著:佐野倫子(イカロス出版)
さの みちこ

佐野 倫子

Michiko Sano
教育ジャーナリスト

東京生まれ、早稲田大学卒。英国ロンドン大学ロイヤルホロウェイ留学。航空業界・出版社勤務を経て、作家・教育ジャーナリストに。 講談社mi-mollet、漫画雑誌Kiss(原作)、ダイヤモンド・オンライン、幻冬舎ゴールドオンライン、東京カレンダーWEB、月刊[エアステージ]などで小説・コラムを多数執筆。2人の男の子の母。 主な著書:『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)、『知られざる空港のプロフェッショナル』(交通新聞社)。 Instagram @michikosano57 X @michikosano57

東京生まれ、早稲田大学卒。英国ロンドン大学ロイヤルホロウェイ留学。航空業界・出版社勤務を経て、作家・教育ジャーナリストに。 講談社mi-mollet、漫画雑誌Kiss(原作)、ダイヤモンド・オンライン、幻冬舎ゴールドオンライン、東京カレンダーWEB、月刊[エアステージ]などで小説・コラムを多数執筆。2人の男の子の母。 主な著書:『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)、『知られざる空港のプロフェッショナル』(交通新聞社)。 Instagram @michikosano57 X @michikosano57