不登校から公立大医学部合格! 「不登校の経験があったから子も母も“生き方”が見つかった」〔元野球少年の実話〕

不登校から小児精神科医を目指すまで 母親インタビュー第5回「医学部合格と不登校の価値」/全6回 (3/3) 1ページ目に戻る

教育ジャーナリスト:おおたとしまさ

おおた:社会の歪みの一つの症状として不登校の増加がある。その根っこの部分を掘り下げていくと、不登校だけではない、少子化などいろいろな問題と同根なのだろうなと。

僕はそれを近代社会の限界だと考えています。だから不登校は、学校へのレジスタンスではなく、近代社会システムへのレジスタンスなのだと、私は思っています。

孝子:息子自身は、不登校かどうかということよりも、「自分が少数派になった」という意識が強いみたいです。少数派の側から世界を見られたことが本人にとっては大きいようです。

おおた:現在の社会のシステムの中で大きく儲けるためのちっぽけなイノベーションじゃなくて、いまの社会のあり方を根本から変えるイノベーションは、そういう視点からしか生まれてこないだろうと思います。

これから数十年後、不登校を経験したり、フリースクールで学んだりした大人たちが一定数に達すれば、それは可能だろうと思います。

実際、そういうひとたちがこれからどんどん増えていくと思います。そして「あれ? 国が認める“学校”に通わなくてもみんなちゃんと生きていけてるじゃん」ということがわかって、不登校差別はだんだんとなくなっていくと思います。

不登校はさなぎの時期 心配はいらない

孝子:「不登校の子たちに何か言うとしたら?」と聞いたら、

「不登校だからこそ、自分で考えて選び取る力が身につくよ」「勉強は後からでもなんとかなるから、今心配しなくてもいいよ」「不登校っていうのは、さなぎの時だから、頑張りたいときが来たときに頑張れば大丈夫だよ」。

そんなふうに言っていました。

「マイノリティであることが、いまはすごくコンプレックスかもしれないけれど、本当はすごく希少価値で、強みになるんだ」とも。

私自身も、不登校は私たち親子からたくさんのものを奪っていったと思っていました。でも今は、不登校の子どもの親としての人生に誇りを感じています。

おおた:「誇り」というのを、もう少し言葉にすると?

孝子:まず、失ったものはなかったな、と今は思うんです。当初は、失ったと思っていました。真っ最中のときは。だけど今はもう、失っていなかったんだ、と思っています。

いいことと悪いことって、本当に紙一重で、目の前で起きた物事に、いちいち左右されなくていいんだな、と思えるようにもなりました。

それから、自分自身の人生を、私も取り戻せたということ。お母さんになると、自分が好きなことや、やりたかったことを、一旦全部忘れてしまうんですよ。

だけど、不登校の親になって、息子と一緒にこの時間を過ごすなかで、自分自身の生き方を取り戻すことができました。

学校の成績がどうであれ、学校に行けなかったとしても、子ども本人が目を輝かせて取り組めることが最終的に見つかればそれでいい。まわりの大人がそれを本気で信じていれば、早い遅いはあったとしても、必ず見つかる。

今、わが子の不登校に悩んでいる親御さんに私から伝えられることがあるとすれば、そういうことなんです。

******

次(最終回)は、孝子さんに学ぶ「思い込みの手放し10」と 、本当に子どもを「待つ」姿勢の極意をお伝えします。

取材・文/おおたとしまさ(教育ジャーナリスト)


●おおたとしまさ
PROFILE
教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。リクルートから独立後、教育に関してさまざまな観点から取材を行い、著書は90冊以上。2026年5月に『フリースクールという選択』(講談社+α文庫)を上梓。どこの組織にも属さない在野の視点で現代の教育への考察・提言を続けている。メディアへの出演や講演も多数。

(Xアカウント:@toshimasaota

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おおたとしまさ

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。

1973年、東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。97年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、教育をテーマにさまざまな取材・執筆を続けている。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。 主な著書に『勇者たちの中学受験』、『子育ての「選択」大全』、『不登校でも学べる』、『ルポ名門校―「進学校」との違いは何か?』、『なぜ中学受験するのか?』など80冊以上。