親の雑談力が「勉強をやらない」子どもを救う 人気教育家が語るそのワケ

教育家・石田勝紀さんに聞く、勉強に「好奇心」を持ってもらう引き出し方 #3 親の意識が変わると子どもは変わる

教育家:石田 勝紀

「親が変われば、子どもは変わります」とは石田さん。ではその方法とは?

これまで5万人以上の子どもに学習指導をしてきた教育家・石田勝紀さんに聞く、「勉強に興味が持てない」子への対処法。

前回では、自分は勉強が苦手だと思い込んでいる子への苦手意識の払拭の仕方を教えていただきました。

最終回となる3回目は、親子の関係を悪化させずに、子どもの勉強を上手にサポートする方法と、親の意識の変え方について、石田さんにお話しいただきます。


(全3回の3回目。1回目を読む2回目を読む

石田勝紀(いしだ・かつのり)
1968年、横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。これまで5万人以上の子どもに学習を指導。指導内容は知識の詰め込みではなく、「心を高める」「生活習慣を整える」「考えさせる」の3つを柱にすることで、学力だけでなく、自己肯定感も引き上げる独自のメソッドを確立。一般社団法人「教育デザインラボ」代表理事。

親がすべきは「干渉」ではなく「サポート」

──うるさく言われないといつまでも宿題をしない子、テストの点数が悪くても危機感を持たず、勉強をしない子に対して、親はイライラしてつい𠮟ってしまいます。

石田さんのご著書『子どもを𠮟り続ける人が知らない「5つの原則」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で、子どもを𠮟り続けることで効果が激減するというお話にハッとさせられました。

石田勝紀さん(以下、石田さん):子どもに「勉強しなさい」と強制し続けると、「自分は人から言われないと(進んで勉強できない)ダメな人間なんだ」と、子どもの中でインプットされていきます。それが続くと、そのうち頑張る気が起こらなくなり、人間的な価値を自分で決めてしまいます。

子どもの年齢や性格によっても違うので、一概には言えませんが、子どもにとって必要なのは「サポート」であって、「干渉」ではありません。

サポートというのは子どもの横に並んで、手助けしながら自分でできるようにすること。例えば、低学年のうちは勉強のサポートが必要ですよね。「手助け」→「自立させる」がゴールです。

対して「干渉」とは、勉強や宿題に口を出すことや、親が先頭を切ってガンガンやらせることです。これはあまりよろしいとは言えません。

──なぜ、干渉がいけないのでしょうか。

石田さん:「勉強をやらない」のは「現象」であって、「原因」ではありません。「勉強をやらない」という現象に手を打つのではなく、原因を見つけて、対応すべきだからです。

例えば、「勉強をやらない」という理由を探してみましょう。「勉強の方法がわからない」のか、「先生の話を聞く授業スタイルが苦痛」なのか、そもそも「勉強以外に何か理由がある」のか。

こういった原因を考えずに、勉強をしないことを𠮟ったり、親御さんが勝手に塾を見つけてきて、子どもの同意なく入会させたり、問題集を買ってきたりするのはもってのほかです。

「子どもとたくさん雑談をすることで解決することがあります」(石田さん)

──なるほど。子どもが勉強しない「原因」をまずは探ったうえで、対処すべきなのはわかりました。ただ、原因を見つけられない場合はどうしたらよいのでしょうか?

石田さん:親ができることはただひとつ。子どもとたくさん雑談することです。

──え? 雑談、ですか!?

石田さん:そうです。雑談がなぜ良いかというと、トピックに上下関係が存在しないから。勉強になると、親御さんは、つい上から目線になってしまいますよね。でも、子どもは親を対等だと思っているし、上から言われたら、反抗したくなる。これでは親子の信頼関係が、いつまでも築けません。

「最近、どんな勉強しているの?」と、会話のきっかけを作るのもいいと思います。そこで「別に」と返ってきたら、「今は話したくないんだな」と思って、その場はすぐ引いてください。このとき、「ちゃんと勉強やってるの?」などの監視モードにならないことが大切です。

雑談によって対等なコミュニケーションができると、子どものほうから何でも相談するようになってきますよ。

親の「雑談力」で勉強の悩みを解き明かす

石田さん:それに、「勉強のことをまったく考えてない」という子はあまりいません。だいたいは、子どものほうから「授業が全然わからなくて」とか、「成績が上がらなくて」と、困りごとを言ってくれたりします。

そうしたら、「じゃあ、どうしたらいいかな?」と、親御さんは、まずひたすら聞き役になってください。いきなり解決策を言うのはNGです。

すると、子どものほうから「塾に行ってみようかな」とか、「問題集をやってみようかな」とか、自分なりに考えるようになってきます。そうしたら、ようやく「じゃあ、塾も考えてみる?」とはじめて水を向けましょう。それが親のサポートです。

「心配だから」と、最初から余計なことを言うと、子どもは鬱陶しいと思って、もう話してこなくなっちゃいますよ。

「進みたい方向がわからないうちは、親は何も言わないこと。相打ちを打つだけでいいんです。決して難しいことではないですよ」(石田さん)

宿題をする場所・時間帯は子どもの主張に合わせる

──特別な勉強はしなくてもいいから、最低限、宿題だけはきちんとやる習慣を身につけさせたいのですが、正直、宿題をやらせるだけでもひと苦労です……。

石田さん:家庭というのは、そもそも寛いだり、ホッとする場であって、勉強に適した空間ではありません。しかも、宿題をするのに適した場所・時間帯は子どもによって違います。

親御さんのなかには「学校から帰ってきたら、まず宿題やっちゃいなさい」っていう人もいますが、それって、仕事で疲れて帰宅したパパに、「ごはんの前に、残業やりなさいよ!」って言ってるようなもの(笑)。帰宅した子どもへも、まずは一服させてあげましょう。

「子どもの勉強の場所選びを、一度家庭内で調査してみてください。調べている間に宿題も終わっちゃいますよ(笑)」(石田さん)  

石田さん:また、「ゲームをやるのは宿題が終わってから」と決めているご家庭もありますが、これも子どもによりますね。ゲームで気分転換をしてからのほうが、宿題に集中できることもあるので、順番を変えて試してみてもいいかもしれません。

宿題をする場所も、リビング学習がいいという子もいれば、ダメな子だっています。あとは、科目によっても違う場合もありますね。例えば、算数はこの時間帯がいいとか、漢字は書くだけだから、まわりに人がいる場所でやりたい、とか。

親御さんも、カフェで仕事するほうが効率が上がったり、この席が落ち着くなど、それぞれあると思います。子どもも同じ。子どもの目線に立って勉強する場を、一度見直してみましょう。

親も自分も満たす時間を作る

──石田さんのお話を聞いていると、親はイライラや不安を胸に留めて、意識的に楽しむことで道が開けるように思えてきました。

石田さん:親御さんは、毎日のごはんを用意するだけでも本当に大変ですよね。そこに、子どもの悩みや、不安が生まれると、メンタルを保つだけでも難しいもの。そして、親のメンタルが落ちていると、つい、子どもの短所ばかりに目がいってしまいがちです。

その状態を少しでも良くするためには、親自身のマインドセットを整えるように意識してみてください。

例えば、美味しいスイーツを食べに行ったり、子育ての悩みを分かち合える人と楽しくおしゃべりしたり。

ママパパだって、子どもと一緒ではない、自分を満たす時間を作ったっていいんです。心を満たして家に帰ると、短所しか目につかなかったことが、長所に目が向けられるようになり、子どもへの言葉がけも自然と変わってきます。

親の気持ちを上げるだけでも、家庭内の状況は変わっていくもの。子どもの勉強のモチベーションにもつながりますよ。

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親の意識や見方を変えることで、子どもも変わっていく。「子どもが勉強を面白くない」と感じる根本的な原因は、私たち親自身にもあることに気づかされました。

大らかな気持ちを持って、楽しみながら「子どもの勉強」のサポートをしていけたらと思います。

取材・文/鈴木美和
撮影/冨貴塚悠太

石田勝紀さんの連載は全3回。
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いしだ かつのり

石田 勝紀

教育家

1968年、横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。これまで5万人以上の子どもに学習を指導。指導内容は知識の詰め込みではなく、「心を...