子どもが勉強をやる気になる! 「時間制限」「ポイント制」のコツを専門家が伝授

教育家・石田勝紀さんに聞く、勉強に「好奇心」を持ってもらう引き出し方 #1 成長の「見える化」づくり

教育家:石田 勝紀

教育家の石田勝紀さん。今まで5万人以上の子どもに学習を指導してきました。
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机に座っても集中力が続かず、すぐにふらふらしたり、お菓子を食べたり……。「どうせ勉強できないし」、「なんで勉強しなきゃいけないの」などを口にし、勉強に対してなかなか意欲が湧かない子どもへ、ついうるさく言ってしまう親御さんもいることでしょう。

そもそも、子どもが勉強に興味を持てないことには、原因があるのでしょうか?

そこで、多くの子どもたちを見てきた教育家・石田勝紀さんに、勉強への関心を高める方法を教えていただきました。

1回目は、子どものやる気へつながる、成功の「見える化」づくりについて。子どもの学習スタイルに悩める親が知っておきたい、とっておきのアドバイスを教えていただきます。


(全3回の1回目)

石田勝紀(いしだ・かつのり)
1968年、横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。これまで5万人以上の子どもに学習を指導。指導内容は知識の詰め込みではなく、「心を高める」「生活習慣を整える」「考えさせる」の3つを柱にすることで学力だけでなく、自己肯定感も引き上げる独自のメソッドを確立。一般社団法人「教育デザインラボ」代表理事。

勉強を楽しませる方法はゲームに学べ!

──いきなり個人的な悩みを打ち明けますが、小学3年生の息子は勉強があまり好きではありません。学校の授業もろくに聞いていないようで、毎日宿題をやるだけでひと苦労。うちの息子のように、勉強に興味が持てない子がいる一方で、勉強が好きな子もいます。その違いに原因はあるのでしょうか?

石田勝紀さん(以下、石田さん):息子さんが勉強に興味を持てない最大の理由は、「面白くないから」。でも、面白いと感じるものには、子どもってすごくハマるんですよ。

──そうですね。ゲームは驚くほど集中してやっています……。

石田さん:そう、ゲーム。あと、クイズや、なぞなぞも子どもは大好きですね。

そうしたゲーム的要素が、勉強には入っていないから息子さんは勉強にハマらないと考えられます。逆に言えば、ゲームやクイズ、なぞなぞの要素を勉強に入れれば、勉強にハマるのではないでしょうか。

もともと、勉強に興味が持てる子というのは、頭の中で問題をゲームや、なぞなぞ、クイズ的に変換してやっています。

石田さんの最新著書『声かけ×仕組み化×習慣化で変わる! 子どものやる気の引き出し方』(2023年5月末)にも、子どもが自ら動き出す原理について書かれています。

例えば、漢字を繰り返し書く宿題があるとします。勉強に興味がある子は、これをいかに早く書き上げるか、自分なりに記録に挑戦したりしてるんですよ。

かたや、それができない子にとって、漢字を繰り返し書くことは単なる義務としか感じられず、苦痛な作業になってしまう。

理科の授業だって、ただ教科書の内容を淡々と黒板の前で教えるよりも、サイエンスプロデューサーの米村でんじろう先生のように、演出して教えるほうが圧倒的に子どもは夢中になるでしょう。

このように、教育にはエンターテインメント性が必要なんです。それを自分で作り出せる子と、作り出せない子がいる。そこが大きな違いだと言えます。

成長の「見える化」が子どものやる気を引き出す

──では、自分でエンターテインメント性を作り出せない子の親は、どのように導いてあげたらいいのでしょうか?

石田さん:すごく簡単なことです。ゲーム、なぞなぞ、クイズにハマる最大のポイントは「自分の成長が見える化」されていること。

レベルがどんどん上がるとか、ポイントやアイテムが増えるなどですね。

子どもは勝ちたいし、ゲームのキャラクターの見栄えもよくしたいし、成長のために必死になります。その「成長感」が原動力になる。つまり、そういうエッセンスを勉強に盛り込めばいいのです。

やり方はいろいろあるんですが、おすすめは「時間制限」です。

例えば、計算ドリルだったら何分何秒で終わらせられるか。ストップウォッチを片手に、よーいドン! とスタートさせてみましょう。計算ミスが多い子なら、ミスが何個みつかるか、さぁ、よーいドン! 

こんなことと、と思われるかもしれませんが、でもこんなことで子どもってモチベーションが上がったりするんですよ。特に低学年の子には効果抜群ですね。

「勉強にはエンターテイメント性を持たせましょう」(石田さん)  撮影:冨貴塚悠太

石田さん:私が塾で教えるときも、計算テストはスピードテストにしています。

「いくぞ! 5、4、3、2、1」と、始めるときにカウントするのはもちろん、用紙を配った後も「まだ見ないでね~。手を膝の上に置いておいてね~」とあえて煽ったりしています(笑)。

でもこうすると、子どもたちは大会に参加しているかのように燃えるんです。しかも、簡単な計算問題のテストなので、解けなくてこぼれ落ちる子はいません。

それと、算数の力を引き上げるには、単純計算を早くやるトレーニングが有効ですね。プレッシャーによって脳の働きが高まり、短時間で効率的に勉強を進められるようになります。例えば、「百ます計算」は、計算スピードを高めていくと、算数の持っている能力が開発されていくと、研究でも明らかになっています。

難しい問題については、子どもが勉強に興味を持ちだしたときにやればいいんです。なぞなぞやゲームだって、最初はごくごく簡単なものから始めるでしょう。そして、簡単なものに慣れると飽きてきて、ちょっと難しいものがやりたくなる。そうやって誘導してあげていってください。

もちろん、毎回親が子どもにつきっきりでやらせる必要はありません。課題をこなす面白さが経験としてわかれば、放っておいても自分でやるようになります。

例えば、歯磨きも赤ちゃんのころは親がやってあげるでしょう。そこから仕上げ磨きだけにしたり、徐々に自分だけで磨けるようにスライドさせていきますよね。それと同じです。いきなり「やりなさい」と突き放すんじゃなくて、伴走や導きが最初に必要なだけです。

あと、放っておいても自分で勝手にやる子は、世の中の5%ぐらいいるのですが、そういう子は、もともと勉強への好奇心を持ち合わせているから。

でも、ほとんどの子はそうではありません。「勉強に対する好奇心」というモデルをインストールしてあげる必要があるのです。

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