思春期の子が勉強嫌いに! 「気をつけたい親のひと言」をカリスマ塾講師が解説

小学校高学年からの勉強と親の接し方を教えます! 中学を見据えた子育て#3

小学校高学年以降の勉強は、自学=自らの意志で課題に取り組む力を身につけさせることが重要です。写真:アフロ

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大手学習塾で多くの小中学生を指導しつつ、その保護者に向けて子どもの育て方や接し方をアドバイスしている現役講師の大塚剛史先生。

先生は、思春期の子育てで大切なことは現代という時代背景を踏まえることと、子どもに任せること=自立を促すことだといいます。

特に、勉強については誰かに言われたからやるのではなく、自らの意志で課題に取り組む力が必要です。

子ども自身の成長につながり、将来を切り拓く力を育むような親の勉強へのかかわり方を大塚先生に教えていただきます(全3回の3回目。#1#2を読む)。

中学生になると勉強嫌いになる子がいるのはなぜ?

親の言うことをなんでも素直に聞いていた幼いころとは違って、一筋縄ではいかなくなってくるのが思春期です。特に勉強はなおさら。難しい時期だからこそ、勉強面と親のかかわり方について紹介します。

これから勉強嫌いにならないためにはどうすればいい?

勉強嫌いは、親のひと言がつまずきのきっかけになることがあります。中学生になると当然、勉強が難しくなり(#1を読む)、特に現代の中学生が求められているレベルは親御さんの時代とは違います。

例えば、中学に入ってすぐの定期テストの平均点は何点くらいをイメージしているでしょうか。

親御さんご自身の経験を踏まえると70点前後を思い浮かべるかもしれません。しかし、今は最初の大きなテストさえ難しく作られ、平均点が40点にも届かないということもあります。

点数だけを見て、親御さんが「数学、もうちょっと頑張らないと!」とか、「小学生時代はあんなにできていたのに、どうして中学生になったらできないの?」と言うと、子どもには「あなたは○○がダメなんですよ」「勉強が苦手なんですよ」と伝えていることになります。

そしてこれが、勉強嫌いのきっかけになることが多いのです。親御さんは苦手なことをわざわざ指摘しないことが大切です。

親はサポーター的役割となって「褒める」「認める」「受け入れる」を心がけましょう。このルールに沿った行動をとるならば、テストではできている部分だけに触れて褒めてあげてください。

もし、口を滑らせてダメ出しをしてしまったら、すぐに「でも、△△はよくできていたんだね」とフォローする必要があります。

では、誰がはっきりとマイナスの部分を指摘するのか……、それはコーチです(#1を読む)。塾に通っているなら塾の先生から、スポーツクラブに所属しているなら指導者や先輩から勉強の話を切り出してもらい、子どもが相談したり、アドバイスを受けたりできる場を持つといいでしょう。

勉強は自学できることが本人の幸せです。これからのことを思うなら、子どもには「小さいときは勉強についてたくさんのことをお母さん/お父さんが言ってきたけれど、もう勉強はあなたにお任せしますよ」と宣言し、子ども主体の勉強に変わっていくことを伝えましょう。

親は、子ども自らが課題に取り組める環境や勉強について相談できるコーチを整えることでサポートしてあげてください。

自学する力が中学受験後の燃え尽き症候群を防止する

中学受験を経験し入学したあとに、すべてのことに意欲をなくして燃え尽き症候群になってしまう子もいます。これは受験勉強を自分ごとに捉えられなかった子に見られる傾向です。

受験はよく山登りにたとえられますが、燃え尽き症候群の子は中学入学まで親に背負われて山を登ってきたといえるでしょう。そして中学に入ったら突然、親の背中から下ろされて「今日から一人で歩きなさい」と告げられ、ヘタってしまった状態です。

ずっと背負われて山を登ってきた子は、たくさん見聞きをして知識はありますが、自分の足で歩いてきたわけではないので当然、弱い足腰しか持っていません。

つまり受験で大切なことは、親の足腰ではなく子ども本人の足腰を鍛えることであり、自分で山を登っていける筋肉=自学する力をつけることです。

中学に入ったら当然、知識はもっと増えますし、高度になります。自分で行動するべきことも増えます。知識の使い方を考えて自らの意思で行動する必要があるので、中学入学を前にしたら親は細かく指示出ししないことが大切です。

私の教え子に、中学受験をして難易度が高い志望校に落ち、希望順位としては最終の学校に入った子がいました。

私は塾の講師ですから指導者として不足があったことに申し訳なさを感じ、どのような声をかけようか思い悩みました。しかし、親御さんからは「上の志望校に受からなかったのは残念ですが、いい受験ができました。あの子の顔を見ればわかります」との言葉をいただきました。

私が所属している塾には「幸せな受験」という理念があり、子どもが受験を振り返ったときに受けてよかったと思えることと、勉強の過程で自学できる力を育むことが掲げられています。

その子はまさに理念を体現してくれて、「入学する学校で頑張って、次は大学受験でリベンジします」と言ってくれました。

自ら足腰を鍛錬した子どもは、大人が思っている以上にたくましく育ちます。

親御さんが勉強面でできることは、子どもを背負うことではなく自らの足で歩かせることですから、成長するに伴って子ども主体の子育てに認識を改めていくことが大切です。

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