「学校が楽しい子」が続出する理由 「子どもが決める」「自ら行動する」主体性にあった!〔現役小学校教員が明かす〕

現役教員に聞く 子どもが主体的になるヒント#1 授業編

「学校が楽しい」そのわけとは?

大窪先生は今年度(2024年度)、近隣の小学校から上山口小学校に異動してきました。作家の時間のような「子どもの主体性を大切にする授業」は前任校でも実施していましたが、今のクラスの子どもたちにとっては、初めてのことも多いようです。

子どもたちに「大窪先生の授業ってどう?」と尋ねると、次のような返答がありました。

──「自分たちで決められることが増えた」「4年生になって学校や授業がすごく楽しくなった」「自分の好きなことをできてうれしい」「みんな元気になった」

子どもたちがうれしそうに話す様子から、授業や学習、学校生活を前向きにとらえ、楽しんでいることが伝わってきます。

「従来型の一斉授業の場合、子どもたちが自分で決める場面はほぼありません。どんな方法で学ぶか、ペースはどうするか、すべて教員が握っています。そういう状況では、『主体性』を発揮する機会自体が少ないんです。これでは、いくら主体的になってほしいと願っても、実際問題、難しいですよね。

だから僕は、学校生活の中で子どもたちが自分で決める、選択する機会をできるだけ多く用意したいと考えています」(大窪先生)

「作家の時間」のほかにも、自由進度学習や個人探究など、子どもたちが自分で選択・決定する学習をいくつも取り入れています。

【自由進度学習とは?】
子どもが自分のペースで学びを進めていく学習方法。一斉授業とは異なり、子どもたち自身が学習計画を立て、教材も自分で選んで進めていく。具体的な方法は実施者による。

自由進度学習では、子ども同士で教え合う姿が見られます。  写真:川崎ちづる
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「一斉授業がすべて悪いわけではないですし、有効な場面もあります。ただ、子どもが自分で考えて、この方法にしようと決めてやってみる。そうした中でしか身につかないものがあると思うんです。

もちろん楽しいだけではなく、作家の時間でいえばなかなか書けない、まとまらないこともあるでしょう。だけど、自分で決めてやるからこそ工夫や試行錯誤に粘り強さが生まれるし、『できた』や『わかった』といううれしさを味わえます。それが楽しくて、『もっとやってみたい』と主体的になるんです。

そういう学びの醍醐味を、子どもたちにたくさん経験してほしいと思っています」(大窪先生)

作家の時間、一人で静かに書き進める子どもの姿。  写真:川崎ちづる

授業には「号令」も「整列」もなし

大窪先生が「主体性を発揮する機会」として大切にしているのは、授業内容だけではありません。授業の開始や終了時の「号令」も、かけていないのです。

「『これで授業を終わりにします』などと号令をかけて、強制的に意識を変えるのは簡単です。だけど、それに頼りすぎてしまうと、自分で意識をコントロールすることができなくなってしまう気がするんです。

それに、チャイムが鳴ったからといって、すぐに気持ちを変えられないこともあります。もう少し続けたい子、反対にすぐ別の場所に行きたい子もいるでしょう。そこは子どもたちの状況を優先したいと思っています。

僕から『区切りのいいところで終わらせて、次の授業の準備をしてね』などと声はかけますが、あとは自分自身で切り替える。どうすればそれができるか考えながら、自分のスタイルを見つけてもらいたいです」(大窪先生)

取材中、ライターが子どもたちに号令がない理由を聞くと、上記の内容をしっかりと理解し、説明してくれたことも印象的でした。

「きちんと話せば、子どもたちは理解してくれると感じています。

体育の授業では、必要なとき以外は基本的に整列もしていません。みんなが自分で判断して、僕の説明が聞こえる場所にいればいいだけですから」(大窪先生)

「○○すれば主体的になる」は本当?

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