「学校が楽しい子」が続出する理由 「子どもが決める」「自ら行動する」主体性にあった!〔現役小学校教員が明かす〕

現役教員に聞く 子どもが主体的になるヒント#1 授業編

「○○すれば主体的になる」は本当?

子どもが主体性を発揮できる機会を大切にしている大窪先生ですが、新しいクラスを担任する際に注意していることがあります。

なにか始めるときは、まずは子どもたちに提案や説明をします。自由進度学習なら、『教えてもらうことも大事だけど、それだけだとみんなの学ぶ力は育たないと思うんだよね。だから、自分たちで学ぶ時間も取り入れてみない?』といった具合です」(大窪先生)

前述した「号令」も、子どもたちの意見を聞きつつ、具体的な運用を決めています。また、授業の進め方についても、過去に受け持ったクラスの自由進度学習やプロジェクト学習のやり方がうまくいったからといって、同じ形式を当てはめるようなことはしません。

「それまでは一斉授業が当たり前だったのに、新しい先生が異なる授業を急に始めたら、子どもたちは戸惑い、学習にネガティブな感情を抱いてしまいます。そうならないよう、子どもたちの様子をよく見て、少しずつ自己決定や選択できる部分を増やしています。

作家の時間や自由進度学習など、特定のメソッドや方法論をそのまま導入すれば、必ず子どもたちが主体的になる、なんてことはありません。子どもたちに向き合い、一緒に悩んで試行錯誤しながら進むことが大切だと感じます」(大窪先生)

1学期だけで大きな変化

取材時(2024年10月)は自ら積極的に授業に参加し、楽しそうに学んでいた子どもたちですが、学年が始まった春ごろの様子は、少し違っていたと先生は話します。

「上山口小学校は比較的小規模だからか、子どもたちがとても落ち着いていると感じます。ですが、最初は『自分で考えてやってごらん』と声をかけても、何をすればいいかわからない……という状態になることが多かったんです。しかし、この数ヵ月でずいぶん変わりました」(大窪先生)

1学期の終わりごろ、算数の授業1時間すべてを子どもたちに任せたことがありました。

「途中で数回様子を見に行ったら、一生懸命みんなで協力して学習し、いきいきとした表情を浮かべていました。確認してくれたほかの先生も、子どもたちの様子に驚いていました」(大窪先生)

総合的な学習の時間では、子どもが自分の興味のあることについて「問い」を設定し、情報収集や調査を行ってまとめる「個人探究」にも取り組みました。7月中旬には全校生徒に向けて発表会を行い、その成果をプレゼンしたといいます。

発表会は教室と視聴覚室で行いました 。  写真:川崎ちづる
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視聴覚室でスライドを使って発表する子どもたち。  写真:川崎ちづる

「少し前まで『どうしたらいいですか』と僕に聞いてきた子たちが、迷いながらもテーマや方法を決め、工夫して取り組んでいる。大きな変化ですし、今後さらに成長していってくれるだろうと感じています」(大窪先生)

自分で考え決定する機会があれば、短期間でも子どもたちは主体性を発揮し、自ら積極的に取り組むことがよくわかります。

今回紹介した大窪先生の実践は学校が舞台となっていますが、その根底を貫く考えには、保護者が参考にできる部分もおおいにあります。

第2回は、小学生の父親でもある大窪先生に、子どもの主体性を削がない接し方などについてうかがいます。

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写真:竹花康

【大窪昌哉(おおくぼまさや) プロフィール】
大学卒業後、一般企業の経理部に7年間勤務し、小学校の先生になるため30歳で退職。通信大学で小学校の教員免許を取得して、逗子市内の小学校にて教員人生をスタート。2024年度から葉山町立上山口小学校に勤務。子どもたちと学びを楽しみ、みんながいきいきとした素敵な時間や場を共創するために、さまざまな学びの場へ参加している。

取材・文 川崎ちづる

【現役教員に聞く 子どもが主体的になるヒント】の連載は、全4回。
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※公開日までリンク無効

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おおくぼ まさや

大窪 昌哉

Okubo Masaya
公立小学校教諭

大学卒業後、一般企業の経理部に7年間勤務し、小学校の先生になるため30歳で退職。通信大学で小学校の教員免許を取得して、逗子市内の小学校にて教員人生をスタート。2024年度から葉山町立上山口小学校に勤務。子どもたちと学びを楽しみ、みんながいきいきとした素敵な時間や場を共創するために、さまざまな学びの場へ参加している。 ※写真:竹花康

大学卒業後、一般企業の経理部に7年間勤務し、小学校の先生になるため30歳で退職。通信大学で小学校の教員免許を取得して、逗子市内の小学校にて教員人生をスタート。2024年度から葉山町立上山口小学校に勤務。子どもたちと学びを楽しみ、みんながいきいきとした素敵な時間や場を共創するために、さまざまな学びの場へ参加している。 ※写真:竹花康

かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。