絵本新人賞受賞・はっとりひろきの『いっぺん やって みたかってん』制作日記
第39回 講談社絵本新人賞受賞作家の受賞からデビューまで 第2回「アイデアを出すこと」
2021.04.21
年末近くに講談社にて打ち合わせがありました。その日の朝は風が強かったのですが、そのおかげで雲がどんどん飛ばされて、新幹線に乗るころには、打ち合わせに行くというドキドキを沈めてくれるかのように素晴らしい天気になりました。新幹線からの富士山を、初めてはっきり見ることが出来るくらいでした。そして、贈賞式の日以来、久しぶりに講談社に行きました。前回は、緊張の汗と暑さでペンが滑って上手く名前が書けなかったなぁ。ということを思い出しながら受付を済ませ、エレベーターで編集部に向かいました。
担当編集者の(シ)さんと、お会いした時に、デスクの上に出来たての年賀状が積んであり、見せていただきました。正直な反応は、ぉおー。でした。ほぉー。でも、へぇー。でもなく、ぉおー。です。自分が描いたものが形になるという喜びを感じました。ありがとうございます。
そして、今は1月中旬です。
ラストのラフは、(シ)さんと、僕のイメージがぴったり重なったものが見つかったので、ほっとしています。ところが表紙がまだ完成していません。(シ)さんと、デザイナーさんに手伝っていただきながら、これだ! というものを探り当てたいです。原画のほうも、スケジュール内で仕上がるように、なんとか進めています。(この制作日記が掲載されるまでには、ちゃんと提出したいです。)
アレンジメントの花が素晴らしくて、子供と一緒に教室に行くこともあります。26周年を迎え、商品を見るたびに、長い間ずっとアイデアを考え続けるのは大変だろうな、と思っていました。その時の僕はラフが行き詰っていて、おでんで言うところの、「ブヨブヨになった はんぺん」の状態だったのです。そう! あの箸でつまんでも持ち上がるまでに切れて落ちてしまいそうな、あの状態です! (意味不明)そこで、こう聞いてみたのです。
「次から次へとアイデアを考えるのは、大変な時もありますよね。」
すると、笑顔で答えが返ってきました。
「全然そんなこと無いですよ。楽しいですから。」
僕は、あまりにも期待した答えと違ったので衝撃を受けました。
楽しむということは、当たり前と言えばそうなのかもしれませんが、アイデアを出すのは大変なことなのだという思い込みが、少なからず自分の中にあったことが、恥ずかしくなりました。自分がまた、あの「はんぺん おじさん」になった時に、笑顔で楽しんでいるのか、これからも問いかけていきたいと思いました。
次回は、原画の完成から絵本になっていくまでの未知の世界を僕なりにお伝え出来たらうれしいです。今回も読んでいただき、ありがとうございました。
はっとり ひろき
1978年岐阜県海津市生まれ。小さいころから絵を描くことと、F1が好きだった。高校卒業後、建設機械及びフォークリフトの整備士として勤める傍ら、絵本作家を目指す。2016年よりメリーゴーランドの絵本塾に通う。 2017年、『いっぺん やって みたかってん』で第39回講談社絵本新人賞受賞。三重県在住。2児の父。
1978年岐阜県海津市生まれ。小さいころから絵を描くことと、F1が好きだった。高校卒業後、建設機械及びフォークリフトの整備士として勤める傍ら、絵本作家を目指す。2016年よりメリーゴーランドの絵本塾に通う。 2017年、『いっぺん やって みたかってん』で第39回講談社絵本新人賞受賞。三重県在住。2児の父。