年齢別の知育絵本(0歳1歳2歳3歳4歳)をベテラン書店員が推す理由

40年にわたり児童書を売ってきた書店員・高木須惠子さんにお伺いしました

年齢別の知育絵本で売上ナンバーワンの「えほん百科」シリーズ。数あるシリーズのなかで、どこが支持されているのか、どんなふうに使われているのか、店頭で長年このシリーズをおすすめしてきた書店員・高木須惠子さんにその魅力を伺ってみました。
『0歳のえほん百科』より 絵:はたこうしろう
「えほん百科」シリーズは、1998年に発売になったものが2017年に改訂され、表紙が絵本作家のはたこうしろうさんの絵になりました。はたこうしろうさんの絵は、今にも動き出しそうな絵で、絵の中のペンギンと目があうような気持ちになりますね。

改訂の際に『0歳のえほん百科』も加わり、現在、0歳、1歳、2歳、3歳、4歳がそれぞれ出版されています。お子さんの年齢に応じて、身近なものや動物などが読者に語りかけるように描かれている、絵本のような大判の本です。

『0歳のえほん百科』を0歳の赤ちゃんに見せると、じっと見ていると親御さんから伺うことがあります。

この年齢のお子さんにわかりやすいように、1見開きに1つのイラストが描いてあります。温かみのある色や形で、動物や、形が表され、赤ちゃんが好きな模様などのページもあります。
『0歳のえほん百科』より
子どもの発達段階に合わせて生活面、乗り物、動物、植物などがイラストや写真で名前が紹介されていて、さらに歌やあそび、お話などをあわせて1冊になっています。

ものの名前、数字、体の部位の名称、春夏秋冬の移り変わりなど、知育的なことも年齢に応じて増えていきます。

たとえば、『0歳のえほん百科』では「いぬ」「ねこ」などの名称が登場していますが、『4歳のえほん百科』では、子どもたちにとってむずかしい時計の見方や、英語の言葉も出てくるといった具合です。

子育て真っ最中の親御さんにも、保育園や幼稚園の先生、ベビーシッターさんや祖父母などお子さんをみる大人の方にも、まずは1冊あれば役に立つのではないかと思います。

おなじ動物の紹介でも2歳と4歳ではこんなにちがいます

『2歳のえほん百科』より
『4歳のえほん百科』より
監修しているのは、子どもの発達の専門家である榊原洋一先生です。

本の中扉に、子どもの体の動きなどの成長や、まわりの大人がどんなことに留意したらよいかなどがまとめられています。
お茶の水女子大学名誉教授
榊原洋一


1歳児にとっては、身の回りのものすべてが、まさに生まれて初めての経験です。まだ家の中で過ごすことの多い1歳児は、身近なおもちゃや家具を手始めに、見知らぬ新世界の探検にでかけます。最初はおすわりの姿勢やハイハイで開始した探検も、そのうち、より視点の高い伝い歩き、そしてひとり歩き(独歩)へと発展していきます。

ひとりで探検をすることもありますが、1歳児にとって家の中には大事なパートナーがいます。お母さんやお父さん、お兄さんやお姉さん、そして時々やってきて優しく抱いてくれるおばあさん、おじいさんが加わります。抱いてくれるだけではありません。歌をうたってくれたり、絵本を読んでくれたりする身近な人々は、1歳児にとって、家の中のもの以上に大切な仲間です。

『1歳のえほん百科』は、1歳児が生まれて初めての世界へ旅立つときの同伴者です。1歳児が見たり触ったり、あるいは聞いたりした経験を、本書で追体験してみましょう。それにより、初めての世界の探検は、お子さまの個人的な体験としてだけではなく、本書を読んでくれたおうちのかたとのかけがえのない共有体験になるでしょう。

(『1歳のえほん百科』監修者のことばより)

毎日の発見を追体験し、経験値を増やす

子どもたちは毎日の発見を体験に変え、追体験することでさらに経験値も広がっていきます。

たとえば、外に出かけて乗り物やお花にお子さんが興味を示したとします。家に帰って本を広げ、同じものがあれば、「あったよ。今日見たね」とその名前を言い合いながらお話すると、お子さんは、より鮮明にその名前を覚えることができます。

自分の行動を繰り返しお話し、本にあった情報と照らし合わせ、また追体験ができるのです。

ものの名前などを覚えるだけはありません。「えほん百科」シリーズには、大人の人とお子さんが話し合えるイラストや情報がたくさんありますので、コミュニケーションの経験値も増えることでしょう。

生活の習慣についても無理なく学べます

『3歳のえほん百科』より
歩けるようになると、大人の手をふり切って走っていく子どもたち。そんなときに、生活のリズムやルールを本で見ていれば、自然と身に着くようになるかもしれません。

例えば、食べた後は歯を磨く。おしっこした後は手を洗う。

衛生的なことも生活のリズムの中の一つですね。自分のやっていることを本で追体験することで、お子さん自身が自分のおこなった行為を認識することができます。

「できた」という自信と喜びをえて、「ほかのことにも挑戦しよう」という心の糧(かて)が生まれます。

好きなところから読んでOK

「えほん百科」は、テーブルの上に置いて、読み手と聞き手2人が横に並んで読みあいっこするにはベストな大きさです。まだ字の読めないお子さんと一緒に見やすいですね。

最初から順番に読んでいく必要は全くありません。

お子さんと一緒に右上のインデックスを見ながら、今日は歌を歌いたいと思えば、そのページを素早く開けることができます。お子さんの状態や希望に合わせて本を開いても大丈夫です。

動物園に行くまえに、「いきもの」のページを見ながら、「○○に会えるといいね」などとお話できるといいですね。そんな会話から、本の役割なども伝えることができるのではないでしょうか。

子どもが何に興味を持つのかは計り知れません。「えほん百科」シリーズは、その年齢のお子さんが理解できること、興味をもつことがのっています。家族で共有できる時間が生まれるきっかけになればと思うシリーズです。

高木 須惠子
(たかぎ すえこ)

児童書担当書店員。40年以上もの間、絵本・児童書の魅力にどっぷりつかっている。児童書専門店、紀伊国屋書店梅田店、ジュンク堂書店三宮店、京都店を経て2020年3月より丸善京都本店勤務。さまざまな形で児童書の魅力を発信している。『週刊しんぶん京都民報』で「とっておきの絵本」連載中。

おうちに1冊! 安心の「えほん百科」シリーズ