ブックスタートで配付される絵本を読んでみよう! 赤ちゃんとの「つながり」を感じられる絵本4選 

NPOブックスタート事務局長が赤ちゃんと楽しみたい絵本をピックアップ

編集者・ライター:山口 真央

絵本の読み聞かせが子どもの情操にいいと聞くけど、いまいち効果がわからず、面倒だと感じてはいませんか。実際に「コクリコ」の調査によると、約9割の親御さんが読み聞かせを「つらい」と感じる結果がでています。

しかし、NPOブックスタート事務局長・小林浩子さんは、絵本が親子の「共通言語」をつかうツールになると語ります。絵本を通して、赤ちゃんとどのようなコミュニケーションが取れるのでしょうか。

この記事では小林さんに、絵本の読み聞かせが赤ちゃんとの交流にもたらす効果や、赤ちゃんとのコミュニケーションが楽しめる絵本、NPOブックスタートの具体的な取り組みについて、お話を伺いました。


赤ちゃんへの読み聞かせと絵本を考えるシリーズ全3回の第2回。第1回はこちら

赤ちゃんとの交流に有意義な2つの「会話」

ブックスタートのボランティアが読み聞かせする絵本を、食い入るように見つめる赤ちゃん。どんな絵本が、赤ちゃんの心に響くのだろうか。 写真提供:NPOブックスタート
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赤ちゃんに読み聞かせをするとき、親御さんは赤ちゃんに絵本の意味がわかっているか、気になるかもしれません。言葉が通じない月齢の赤ちゃんに言葉をかけても、相手が言葉で返してくれることはありませんから、張り合いに欠ける気持ちもわかります。

でも赤ちゃんは、たとえ意味が分からないとしても、絵本を介してあたたかく語り掛けてもらうことで、自分が大切にされていると感じ取る重要な体験をしているんです。

赤ちゃん絵本の多くには、愛着形成を促す「スキンシップ」が自然に行える表現が多く見られます。絵本の言葉に合わせて、抱きしめたり、手足をタッチしたり、顔を見合わせたり。

赤ちゃん絵本には「オノマトペ」もよく使われます。お腹の中にいたころに聞いていた音を聞くと赤ちゃんが安心すると言われますが、リズミカルなオノマトペにはそれに近いのかもしれませんね。

スキンシップもオノマトペも、赤ちゃんと気持ちが通い合う、言語以前の「会話」になり得ると思います。

ブックスタートで自治体がプレゼントする絵本は、子どもの発達や絵本に詳しい5名の委員による様々な視点や経験を踏まえ、3年に1回の選考会で30冊が選出されます。その中から、絵本を紹介します。

『じゃあじゃあびりびり』

作 まついのりこ/偕成社
1983年に出版された、ロングセラー絵本です。「じどうしゃ ぶーぶーぶーぶー」「みず じゃあ じゃあ じゃあ」など、繰り返しのリズムが楽しいオノマトペがカラフルな絵に添えられた小さな絵本です。

先日、見学したある地域のブックスタートでは、一人の赤ちゃんがこの絵本に釘づけ。ボランティアが他の絵本をすすめても「これがいい!」と言うかのように自分から絵本を叩いて教えてくれました。

『ぎゅう ぎゅう ぎゅう』

文 おーなり由子、絵 はた こうしろう/講談社
赤ちゃんの手をお母さんが「ぎゅう」としたり、大好きなぬいぐるみを自分が「ぎゅう」としたり。絵本に抱きしめる描写が登場するたび、お子さんを自然と「ぎゅう」と抱きしめたくなる絵本です。全身で「ぎゅう」っとする心地よさをお互いに感じられるため、視覚や聴覚に障害のある親子でも存分に楽しめます

また「ぎゅう」と繰り返されるリズミカルな文章は、絵本の音読に慣れていない親御さんでも、無理なく楽しみながら読めると思います。

『いないいないばあ』

文 松谷みよ子、絵 瀬川康男/童心社
「赤ちゃんに絵本?」と思われていた1967年に出版された、赤ちゃん絵本の古典。「いないいないばあ」が繰り返し描かれるシンプルなつくりに、多くの赤ちゃんが夢中になってきました。

これも、あるお父さんのエピソードです。この絵本をひらいて「いない、いな〜い……」とお父さんが声をかけると、赤ちゃんが「ばあっ!」と答えて、それが親子の初めての会話になったそうです。

「ばあ」は、赤ちゃんでも発音しやすい言葉です。親子での言葉のやり取り、ゆったりした文章のリズム、ページをめくると必ず正面顔が登場する安心感。半世紀以上も愛されてきた人気の理由がたくさん詰まっています。

『さわらせて』

作 みやまつともみ/アリス館
「いぬさん ちょっとさわらせて」とたずねると、「いいよ せなか さわっていいよ」と背中を見せてくれる。次は誰が出てくるかな、とページを繰りたくなる絵本です。

この絵本の魅力のひとつは「いいよ」と肯定してくれるところ。読んでもらった赤ちゃんだけでなく、親御さんもこの言葉を口にすることで、安らかな優しい気持ちになれます。描かれている動物の絵に手を伸ばし、親子で一緒に手触りを想像するのも楽しい絵本です。

絵本選びは図書館を活用して

赤ちゃんが大好きな「スキンシップ」や「オノマトペ」は、絵本の読み聞かせを通じて、気軽に取り入れられることがお分かりいただけたでしょうか。また絵本をひらいて語りかけることで、赤ちゃんは親御さんから大切にされている満足感や肯定感を得られます。

赤ちゃんにとって絵本は、読んで理解するもの(read books)ではなく、共に過ごす楽しさを分かち合う(share books)ツールのひとつ。生活の中にどんどん取り入れていただけたらと思います。

でも、お子さんがどの絵本を気にいるかわからないし、すべての絵本を買うのは大変ですよね。そんなときに活用してほしいのが地域の「図書館」です。

前回の記事で「ブックスタート」のお話をしましたが、会場では図書館の利用案内や赤ちゃん絵本のリストなどを配付してくれる自治体も多く、ブックスタートをきっかけに、親子で図書館や子育て支援センターなどを利用する機会へとつなげています。もし(残念なことに)お住まいの自治体がブックスタートを実施していない場合でも、多くの図書館では赤ちゃん絵本のよみきかせタイムや、司書の方の選書相談などが行われています。

こうしてお気に入りの絵本が見つかったら、つぎはぜひ本屋さんへ! お気に入りをお子さんだけの大切な絵本にして、ぼろぼろになるまで楽しんでください。1冊の絵本に沁み込んだ親子の懐かしい思い出は、お子さんが大人になったとき自分自身を支えてくれるものになるでしょう。
小林 浩子
特定非営利活動法人ブックスタート事務局長。出版社勤務を経て、2017年からNPOブックスタートに勤務。
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赤ちゃんへの読み聞かせと絵本を考えるシリーズ第2回は、多くの読み聞かせに立ち会ってきたNPOブックスタートの小林さんから、読み聞かせが楽しくなる絵本をご紹介いただきました。第3回は、子どもの学力と本との関係などについて、図書館司書の伊藤明美さんにお話を伺います。
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やまぐち まお

山口 真央

編集者・ライター

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。