お話をしてくださったのはひきつづき、絵本の文章を担当した大塚健太さんと、絵を担当したくさかみなこさん、そして、すみだ水族館でチンアナゴの飼育員を務める柿崎智広さんの3人。
お気に入りのシーンについてなごやかに話していたはずが、驚きの展開に!? 最後はチンアナゴ好きの3人に、チンアナゴの魅力を存分に語っていただきました。
目次
絵本のオチに、まさかの新事実発覚!?
大塚健太さん(以下、大塚さん):僕はこの最後の、チンアナゴたちがぐったりしてる姿がお気に入りです。実際こういう姿はしないと思うんですけど、大冒険でちょっと刺激強かったかなって感じのポーズがいい(笑)。
大塚さん・くさかさん:えー!?
柿崎さん:立ち上がってるというのはやっぱりすごく力がいるので、調子をくずしてしまうと、くたっと砂の上に寝ちゃうんです。僕も何度も見ていますが、力尽きて倒れるっていう……、こんな話、記事には使われないですかね(笑)。
くさかさん:疲れた感じを出したかっただけなんだけど(笑)!
柿崎さん:実際に疲れたとき、休みたいときは、巣穴に引っ込むんでしょうね。
大塚さん:寝るときはどうですか?
柿崎さん:寝るときも引っ込みますね。
くさかさん:安全ですもんね、そのほうが……。
3人が考える、チンアナゴの魅力とは…
柿崎さん:チンアナゴには本当に、わからないことが多いんです。どうやって産卵するかは水族館で観察できたということを報告させていただいたことがあるんですけど、それ以降どうやって成長していって、どう移動して群れになるのかっていうのはわかってないんです。子どものときはふわふわ浮遊して過ごしている、いわゆるウナギの仲間なんですが。
僕らとしたら、そういうわからないところを追究できるのが、チンアナゴの面白い点です。
ただ、子どもたちにどうしてこんなに人気があるのかを考えたとき、自分自身をすごく投影しやすいんだろうなって思いました。表情があるし、けんかもするし、食べて寝るし……。そういうことがあるからこそ主人公になりやすいんだって。自己投影をしやすく、人間と共感を生みやすいのも魅力のひとつなんだろうなと僕は思います。
あとはストレスがたまったおとなから見ても、癒やされますよね。「君はなんにも考えてなくていいね」みたいな(笑)。
さきほど人間に慣れるという話を聞きましたが、コロナ禍のときにある水族館が休館してお客さんが来なくなったら、人間のことを忘れてしまったのか、ちょっと飼育員さんが通りかかっただけ隠れるようになっちゃったチンアナゴの話を見たことがありまして。
柿崎さん:ありましたね。
大塚さん:それでまた慣れさせるために、映像で人間の顔を映し出して、チンアナゴに見せるなんてこともやってらっしゃっていました。2~3日で効果があったようでそういうのもすごくびっくりしたし、面白いなと思いました。
本当に人間ぽいっていうか、人間くさいところがあるんですよ。感情がすごい読み取れるようなところが、すごく魅力的だと思います。
柿崎さん:チンアナゴって本当に僕らなんですよ。
くさかさん:うん、自分みたいですね。
大塚さん:3冊目の彼らは、どこへ行くんでしょうね。
柿崎さん:空じゃないですか?
くさかさん:それも前回一瞬、考えましたよね。飛行船の中が水でいっぱいになってるみたいな。
大塚さん:チンアナゴが見たことない世界を見せてあげたいんです。なかなか行かない場所へ。普段はあんまり動かないから、そこを通る魚しか見られないけど、乗り物に乗せてあげられたらって……。
柿崎さん:絵本にはありえないこと、事実と違うことがあるかもしれない。でも僕はこういう生き物が主役になって、ファンタジーとしていろんなたのしみを持って、想像できることがすごくいいと思うんです。
そして、水族館には、それだけでなく野生の生き物の生態を正しく伝える役割があるので、これからもいっぱい、さらなる彼らの魅力を紹介できる場所になれたらうれしいです。
撮影/嶋田礼奈(本社写真映像部)
深海には、見たこともないおどろきがいっぱい!
窓から海中を観察し、大きな生き物が現れたらびっくりして砂に隠れて……。この記事でチンアナゴの生態を知ったあなたが読むと、クスッとできるシーンがあるかもしれません。
『ちんあなごの ちんちんでんしゃ』につづく、シリーズ第2弾の絵本です。
平和な旅も、チンアナゴたちにとってはドキドキなんです
シリーズ第1弾のこっちも見てね!
お話を聞かせてくれた人
大塚健太
くさかみなこ
すみだ水族館
東京スカイツリータウン・ソラマチ5F・6F
電話:03‐5619‐1821(開館時間~18:00)