第41回講談社絵本新人賞受賞  渡辺陽子の制作日記 第3回「ラフの練り直し その2」

渡辺 陽子

※この記事は、講談社絵本通信(2020年6月)掲載の記事を再構成したものです。
 
こんにちは、『にんじゃいぬタロー』の、渡辺陽子です。

今回は、前回に続きラフの練り直しについて書かせていただきます。

去年の12月初旬 修正したラフを提出し、編集長のチェックを待っていました。

ドキドキの12月中旬 Kさんから「編集長から戻ってきました」とメールが届きました。ストーリーはおおむねOKとのことで、ホッとしましたが、2ヵ所、再検討のご意見をいただきました。


1点目、ふろが古すぎやしないかな?
主人公のけんたは、古い和風の家に住んでいる設定なので、五右衛門風呂にしていました。

2点目、最後のシーンをもう一考
最後32ページ目は、応募時もかなり悩んで、最終的に2人で野原を走るシーンにしていました。
五右衛門風呂のラフ 『にんじゃいぬタロー』(著・渡辺陽子 講談社刊)
応募時の最後のシーン 『にんじゃいぬタロー』(著・渡辺陽子 講談社刊)
ということで、上記2点の再検討と、担当Kさんのもろもろの赤ペン添削を修正して、再提出する事となりました。お風呂はすぐに描き直せたのですが、問題は最後のシーンです。ん~~~どうしましょう!? またまた、悩んでしまい、20日の提出日を過ぎても、決め手がないまま、最後のシーンを4パターン描いてご相談という事で、年末ギリギリに再提出しました。

その時期Kさんは、すでにお休みに入っていたにも関わらずお返事をくださいました。お風呂はヒノキ風呂でOK。そして問題の最後のシーンは、“犬がよくする行動”の絵を採用する事にしました。それは応募時、わかりにくいかな? と思いボツにした案でしたが、Kさんも気に入ってくださり復活となりました。どんな絵になったかは、ぜひ絵本を見ていただけたらうれしいです。

さて、すでに当初のスケジュールより遅れていたので、これで彩色に進める! と思ったのですが……Kさんから「応募作に比べて、手裏剣をなげるシーンの迫力がなくなったのと、犬がつみあがるシーンがわかりにくくなったのでは!? ここは盛り上がりの重要ポイントだと思う」とのご指摘が……

ということで、お正月もラフの練り直しとともに過ぎて行きました。でも、ご指摘いただいて本当に良かったです。お蔭様で以前より良いシーンが描けたのではないかと思っています。

1月中旬 修正したラフをKさんへメールし「いいですねー!」と、お返事をいただきました! 
次は編集長のラフ最終チェックですが、その前に、雑なラフを清書させていただく事にしました。下絵のつもりで細部まで描き込みをしていると、「秋の出版だけど、けんたは半袖でいいのかな?」「家では靴下ぬいでいるかな?」など、細かい(どうでもいい)所が気になりだして、Kさんに相談し、丁寧に「どちらでもいいと思いますよ」とお返事をいただいて、こんな事聞いちゃって恥ずかしい~と思ったりしながらも、1月末 やっとラフの清書を提出し、編集長のチェックを待ちます。

ドキドキの2月中旬数点の直しがあるものの、彩色のOKが出ました! ということで、次回は「彩色について」書かせていただきます。
最後のシーンで、けんたの表情も何度も悩みました。(笑)
そして、現在はというと、やっとやっと原画の彩色が全て終わり、装丁デザインへ進んでいます。

次回の制作日記は7月末頃ですが、どうか新型コロナウイルスがこのまま収束に向かい、平穏な生活を取り戻せるよう心から願っております。皆様におかれましても、くれぐれもお身体ご自愛ください。
できあがった絵本です。まだまだ道のりは遠い!
ある日、ケンタのうちに、ふろしきをせおったあやしい犬がやってきた。その犬は、一生おつかえする、とのさまをさがしているというが……。第41回講談社絵本新人賞受賞作。
わたなべ ようこ

渡辺 陽子

絵本作家

第41回講談社絵本新人賞を受賞。はじめての作品となる『にんじゃいぬタロー』を刊行。神奈川県在住。

第41回講談社絵本新人賞を受賞。はじめての作品となる『にんじゃいぬタロー』を刊行。神奈川県在住。