2022.01.17

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子どもの交通事故 加害者への請求に関わる「過失割合」の決まり方〔子どもの法律相談〕

こんな時、どうすればいい? 子どもに関わる法律相談〔第2回〕

弁護士:西田 穣

写真:アフロ

子どもが事故にあった時、まずは優先させなければいけないのはケガの治療ですが、治療のめどがたったころに出てくるのが治療費や慰謝料の話です。もちろん、体や心の傷はお金に代えられるものではありませんが、しっかり治療を受けて健康を取り戻すためにも、必要なお金は補償してもらう必要があります。今回は、子どもが交通事故にあった場合に加害者に請求できる金額はどうやって決まるのかを、自身も1児の父である西田穣(にしだみのる)弁護士に伺いました。

損害賠償額を左右する「過失割合」の決め方は?

写真:アフロ

子どもが事故にあった時、加害者には治療費や慰謝料などが請求できます。ここで関係してくるのが、交通事故のニュースなどでよく耳にする「過失割合」です。過失割合とは、事故を起こした当事者それぞれに、責任がどの程度あるのかを示した数値のことです。例えば、「8:2」だったら、加害者の過失は8割、被害者の過失が2割ということです。

例えば、子どもが足を骨折して2週間の入院と3ヵ月のリハビリで30万円かかったとします。過失割合「8:2」の場合、30万円の8割24万円は加害者の負担となり、被害者の支払いは2割の6万円になります。

この過失割合は、事故の状況によって変わってきます。

事故があったのが信号機のある交差点なのかそうでないのか、横断歩道がある場所だったかそうでないか、また、細い脇道から急に飛び出してきたのかある程度見通しの良い道路だったのか……さまざまなケースによって基準となる過失割合が定められているのです。

さらに、車がどのように走っていたか、ドライバーが適切に運転していたかなども考慮されます。スピードが出すぎていたり、一時停止を守っていなかったり、酒酔い運転やスマホを見ながらの運転の場合は、車のほうの過失割合が基準よりも大きくなります。

一般に、車と歩行者を比べた場合、車のほうが過失をより重く問われます。たとえば横断歩道上だと、歩行者が赤信号を無視して車とぶつかっても過失割合は「7(歩行者):3(車)」となります。歩行者の過失が10割になるケースはほとんどありません。さらに、子どもの事故の場合は、歩行者が大人だった場合よりも過失割合が基準よりも低くなります。まだ年齢的に状況判断が正しくできない子どもに、大人と同じ責任を問うことは難しいからです。

もちろん、6歳未満の「幼児」なのか、6歳以上13歳未満の「児童」なのか、またその子自身にどれくらい判断能力があったかによっても変わってきますし、幼児の場合は親や周囲の大人などの監督責任が過失割合に関わってくる場合もあります。しかし、子どもがうっかり飛び出してしまったことが原因で事故になったとしても、車より大きな責任を問われることはないと考えていいでしょう。

過失割合は誰がどうやって決めるの?

写真:アフロ

では、この過失割合は誰が決めるかというと、被害者と加害者がお互い話し合って決めるということになります。これを示談交渉と言います。「警察が決めるのではないの?」と思うかもしれませんが、警察には民事不介入の原則があるため、示談交渉に関わることはありません。

ただし、多くの場合当事者同士は法的知識や根拠を持っていないため、通常は加害者側の保険会社から被害者に「過去の判例を参考にするとこれくらいの過失割合になると思われる」と連絡が来ます。そこで、被害者側が承諾すれば、その割合に基づいた金額が支払われることになります。保険会社の提示に納得がいかない場合は、交渉することになります。

ここで少し注意したいのが、保険会社の提示してくる損害賠償額は、裁判所基準(裁判になった時に認められる基準)よりも低くなることがほとんどだということです。

もっとも、裁判を起こすにはお金や時間がかかります。依頼するかどうかは別として、納得できない場合には、まずは弁護士に相談してみるのがいいでしょう。「弁護士の知り合いなんていない」という場合は、法テラス(国が設立した法的トラブル解決の総合案内所)などの無料相談を利用するとか、ネットなどで法律事務所を探すという方法があります。

「交通事故専門」と掲げていなくても、交通事故の案件を対応している事務所は数多くあります。交渉や手続きを依頼した場合のことを考えると、よく話を聞いてくれるか、丁寧に対応してくれるかなどを基準に選ぶといいと思います。

繰り返しになりますが、一番大切なのはお子さんの命、ケガの治療であることは言うまでもありません。しかし、事故によって子どもの健康や将来が損なわれた時、それを補うためにお金が必要となることも少なくありません。納得ができないまま押し切られてしまって後悔することのないよう、また、いざという時に頼れる場所があるということも知っておいてください。
(取材・文/永坂佳子)

にしだみのる

西田 穣

Minoru Nishida
弁護士

慶應義塾大学文学部(史学科)卒業。西武鉄道株主訴訟弁護団(2004年~2016年)、日本弁護士連合会取調べの可視化本部事務局次長(20...

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