31のアイデアが実現! 子どもたちを本気にさせた品川区「公園ワークショップ」の中身

シリーズ「インクルーシブ公園」最新事情#4‐1 品川区・公園建設担当インタビュー ~子どもたちのアイデアを取り入れた公園づくり~

ライター:星野 早百合

2022年3月に行われた「品川区立大井坂下公園」(東京都品川区)の完成お披露目会に参加した子どもたち。  写真引用/品川区HP

障がいの有無や年齢などに関係なく、みんなが遊べるインクルーシブ公園。これから既存の公園をインクルーシブ公園に再整備したり、新たにインクルーシブ公園を設置しようという自治体も多いといいます。

そんな中、東京都品川区では、子どもたちを対象に【公園づくりワークショップ】を開催。子どもたちのアイデアを取り入れて、2022年3月、「品川区立大井坂下公園」をインクルーシブ公園としてリニューアルオープンさせました。

子どもたちのアイデアの数多くが実現した【公園づくりワークショップ】とは、どのような内容だったのでしょうか。

品川区防災まちづくり部公園課公園建設担当主査・種元浩(たねもと・ひろし)さん、同じく公園建設担当付主査・佐藤健人(さとう・けんと)さんにお話を伺いました。

※全2回の前編

取材にご協力いただいた品川区防災まちづくり部公園課公園建設担当主査・種元浩(写真左)さん、同じく公園建設担当付主査・佐藤健人さん。  Zoom取材より

障がいを知り体験して「楽しい公園」を考える

──子どもたちを対象に【公園づくりワークショップ】を開催した経緯を教えてください。

佐藤健人さん(以下、佐藤さん) 私たち公園建設担当は、公園の建設や改修工事、それに伴う設計などを行う係です。

品川区では、2008年に「品川区の基本構想」を策定し、その中には【区民と区の協働で、「私たちのまち」品川区をつくる】という理念があります。

2008年ですので少し前の話になるのですが、当時、子どもたち自身がさまざまな議論を行って、子どもたちのアイデアを生かした公園づくりがスタートしました。

それから10年以上が経過し、時代とともに公園にも新しいニーズが生まれました。子どもたち自身が公園を計画するというコンセプトは引き継ぎつつも、ユニバーサルデザインに配慮した公園をどう整備していけばいいか。

そのアイデアを子どもたちから募るための取り組みとして、新たに「障がいの有無に関わらず、みんなが一緒に遊べる公園」というテーマでワークショップを開催することになりました。

──子どもたち自身が考える、というのが画期的ですね。どのようなワークショップだったのでしょうか。

種元浩さん(以下、種元さん) 2019年10月から2020年7月まで、全6回実施しています。

公園利用頻度の高い区内の小学3・4年生を対象に参加者を募集したのですが、定員25名のところ65名の応募があり、少し増やして30名の子どもたちに参加してもらうことになりました。

佐藤さん 内容は大きく3つに分かれていて、第1~3回は「ユニバーサルデザインについて知る」、第4・5回は「公園整備や遊具のアイデアを考える」、第6回は「自分で考えた公園計画案を発表する」という流れです。

「ユニバーサルデザインについて知る」では、「東京都立品川特別支援学校」の先生をお招きして、特別支援学校のことや障がいについて教えていただき、みんなで公園にできる工夫を考えました。

先生から順番待ちが苦手な人、にぎやかな場所が苦手な人など、いろいろな子どもがいることを知り、苦手を解決してみんなで楽しく遊ぶにはどうすればいいか、子どもたちにアイデアを出してもらったのです。

順番待ちの工夫では「待っている間も楽しく遊べる遊具にする」「足跡のマークを地面につけて並び順がわかるようにする」など、子どもらしいユニークなアイデアが出てきて驚きましたね。

種元さん 「世田谷区立二子玉川公園」(東京都世田谷区)にも見学へ行きました。ここは住民の意見を取り入れて2013年に整備した先進的な事例の公園で、子どもたちと一緒に現地を見て歩きました。

公園では車いすで移動したり、アイマスクや白濁ゴーグルをつけて歩いたり、そのまま遊具で遊んだりと、障がい疑似体験も行っています。

子どもたちには車いすに乗る人と押す人、アイマスクをつける人と手をつないで歩く人、そのどちらも体験してもらいました。障がいを持つ子ども自身の気持ちだけでなく、介助する親御さんや一緒に遊ぶ子どもの気持ちも体験しようという狙いです。

──障がい疑似体験によって、リアルなアイデアが生まれそうですね。

佐藤さん 体験後、子どもたちからは「砂場は車いすのまま遊べるけれど、手が届きにくい」「砂場の角がつまずきそうで危ない」「車いすのままだと、水を出すボタンが押しづらい」「複合遊具は階段が上りにくい。手すりやスロープをつけるといい」など多くの意見が出ました。

体験を通して、今まで気づけなかったあらゆる発見があったのではないでしょうか。

「品川区立大井坂下公園」(東京都品川区)の複合遊具。子どもたちのアイデアにより、車いすや歩行器のままでも上にあがれるスロープが取り入れられました。  写真引用/品川区HP
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