0歳児のお世話Q&A 子どもの発達の専門家に聞いた目からウロコの真実14(後編)

【オンラインセミナーレポート】榊原洋一先生「0歳児にしてあげたいこと」#3

小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一

赤ちゃんのかわいい笑顔を守っていくために親ができることとは? 写真:アフロ
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0歳児の育児にいったいどう取り組んだらいいのか? 赤ちゃんとどう向き合えばいいのか?

赤ちゃんが生まれる前にも、生まれたあとにも、子育てにさまざまな心配事や不安を抱えているパパママがいらっしゃいます。

そこで、子育ての問題解決サイト「コクリコ」の会員サービス「講談社コクリコCLUB」では、会員を対象としたオンラインセミナー「正しく知って安心! 『0歳児』にしてあげたいこと」を開催。

子ども発達研究の第一人者であり、現在も小児科医として診察を続けているお茶の水女子大学名誉教授の榊原洋一先生を講師にお迎えし、パパママから寄せられた「0歳児の育児」に関するさまざまな質問に答えてもらいました。

セミナーレポート第3回は、第2回に続き、質疑応答編の後編です。
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榊原洋一先生プロフィール

榊原洋一(さかきはら・よういち) 1951年東京生まれ。小児科医。東京大学医学部卒、お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学。発達障害研究の第一人者。著書多数。監修を手がけた年齢別知育絵本「えほん百科」シリーズは大ベストセラーに。現在でも、子どもの発達に関する診察、診断、診療を行っている。

Q7

赤ちゃんがお腹にいるときに、何か発達のためにできることはありますか?

A7 「胎教」がもたらす本当の意味

いわゆる「胎教」というものですよね。

たとえば、聴診器のような器具を使ってお母さんの声をお腹に響かせるという人がいます。アルファベットを一文字一文字、頭で念じながら発音して聴かせると英語教育として効果的という人もいます。

しかし、このような話は眉唾物で、科学的な根拠は一切ありません。

胎教として聴かせていた音楽を、生後にまた聴かせたら反応がよかったといった話も聞きますが、お腹にいる赤ちゃんには聴こえ方がまったく違っていて、ちゃんとした音楽としては届きませんから、どこまで信憑性があるかはわかりません。

では、意味がないかというと、意味はあると私は思います。

赤ちゃんへの直接的な影響はわかりませんが、その行為によってお母さんが赤ちゃんのことを想い、達成感を得られるなら、とてもいいことです。達成感を得るとストレスホルモンが減ります。

妊娠期間中のストレスホルモンは赤ちゃんの発達に悪い影響があることは科学的にわかっていますから、お母さんのストレスホルモンを減らせるなら、胎教を行う意味はあります。

Q8

0歳児は保育園に預けずに、家庭でみたほうが発達のためにはいいと聞きますが、本当ですか?

A8 保育園でも家庭でも発達に差はない

結論から言いますと、保育園でも家庭でも、発達に差が出ることはありませんので、ウソです。

かつて「3歳児神話」が叫ばれた時代があり、今もそれが信じられる傾向があります。

「3歳児神話」とは、子どもが3歳になるまでは母親が育てないと将来に悪影響が出るという何十年も前の学説です。

しかし、現代ではこれは科学的にはっきりと否定されています。

育てる人は母親ではなく、他の人でも発達には差が出ないことがわかっているのです。育てる人は、親でも、祖父母でも、保育士でも構いませんので、誰か2~3人いるといいんです。

「誰がお世話をするか」よりも、ずっと大事なのは「どんなふうにお世話するか」です。

アメリカの国立小児保健発達研究所が、1000人もの赤ちゃんを10年にわたって観察し続ける壮大な研究を行いました。それによると、育てる人が子どもに対してポジティブな言葉を投げかけるように努めると、子どもの発達によい影響があることが証明されたのです。

ダメ、ダメと否定するのではなく、いいことをできるだけ褒めて、肯定してあげる。

この接し方できるかどうかが重要なのです。母親のほうが他人よりそれができるかもしれませんし、母親だからこそできないかもしれない。それは、立場などに関係なく、「人」による話なのです。

科学的根拠はこうですが、「母親が育てないとかわいそう」といった無責任な声に対して罪悪感を抱いてしまうお母さんもいると思います。はっきり言いますが、罪悪感を感じる必要はまったくありません。

本人は罪悪感があると話していても、よくよく聞いたら「一緒にいられなくてさみしい」という感情であることも少なくありません。できるだけ一緒にいたいなら、保育園に通うのを遅らせるのもいいと思います。

いずれにせよ、保育園で母親と離れるから、家庭で年中母親と一緒だからという違いで、発達にとってどちらが環境的に劣っているということはありません。

保育園に預けることについては、人からどう言われようが、罪悪感を感じる必要は一切ありませんよ。

Q9

いい保育園とはどんなところですか?

A9 保育士の感受性こそが大切

子どもからのさまざまなサインをキャッチできる感受性があることが、子どもの成長にプラスに働きます。

ところが、この感受性というものは、人によって異なります。

保育士にも感受性の高い人、低い人がいますし、親にも感受性の高い人、低い人がいます。感受性は非常にあいまいで、見極めづらい要素です。同じ保育園の中でも保育士によって感受性には差があるのが普通です。

預けてみて、もし担当の保育士に感受性の面で疑問を感じるようなら、年次が変わるときなどに、園に相談してみるといいかもしれません。

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