小さなコンプレックスを拾ってはエネルギーに変えていた
どれぐらい他愛ないかというと、クラスメイトに「明日は『都民の日』だから学校が休みだけど、真由ちゃんは北海道民だから休んじゃいけないんだよ」と、からわかれた、とか。そういうことにいちいち傷つき、その傷を癒やすために勉強を頑張ろう、となる。セルフ傷つき、セルフ頑張り、みたいな感じですね(笑)。体の傷って、治るときにより強くなっていくじゃないですか。それと同じで、より努力をして自分を強化していっていた。そうやって、コンプレックスを自分が前に進むエネルギーに変えるのが得意な子どもだったんだと思います。
ただ面白いのは、それだけ劣等感を感じるくせに、根っこのところではものすごく自分に自信もありました。私はやれば絶対できるんだ、と。それは、母の私に対する信頼が大きかったと思います。母は私が幼いころから、「アナタはまだ人見知りをしない月齢のころから人見知りをしていた。すごい」などと、ずーっと言っていたんです。後で調べてみると、それは正常の範囲内だったんですけど(笑)。でも言われ続けていると、人って信じるものなんですよ。だから私は表面的には傷つきやすいんですけど、根本的には強靱な自信があって。どんなことがあっても「必ず最後は克服できる」という確信を持っている子でした。
人生で一番勉強した司法試験
その大学時代ですが、私は3年生のときに司法試験にも挑戦しました。実はこの試験が、私の勉強人生の中でも一番大変だったものです。というのも司法試験には口述試験があるから。私は筆記試験は得意なんですよ。でも人の話を聞いて自分の考えを表現する、ということがめちゃくちゃ苦手で。人前で話そうとすると緊張しすぎて涙が出る、というほどだったんです。しかも合格率が低い筆記試験に対して、口述試験は9割が受かると言われていたんです。受かるほうがマジョリティというものに落ちたりしたら、私はきっと一生立ち直れないだろうと思って。もう怖くて怖くて、あのときは本当に人生で一番勉強をしたと思います。
だから後にアメリカ・ニューヨーク州の司法試験にも挑戦するのですが、これは英語ではあるけれどもマークシートなどの筆記のみなので、むしろラクに感じたほどでしたね。
私をあそこまで勉強に駆り立てたものは何だったのか?
私の父は、とくに学歴が高い家の出でもないんですけど、自ら勉強を頑張って医者になった、という人。その父に言われたのが、「お金を稼ぐ方法は、究極的に言えば2つだ」ということ。それは、他の人がやりたくないことをやるか、他の人ができないことをやるか、だと。父は、「他の人がやりたくないことは苦しいに違いない」ということで、“資格”という参入障壁がある医者になってお金を稼ぐ、という道を選んだわけです。その話を聞いたとき、私は幼心に覚悟が決まったというか。無意識に、「私には特別な容姿も抜群の運動神経もない。となると勉強して資格を得ることでお金を稼いでいくしかないんだな」というふうに悟った瞬間だったと思います。
山口真由
1983年生まれ。北海道出身。2006年、東京大学法学部卒業後、財務省に入省。主に国際課税を含む租税政策に従事する。その後、日本での弁護士経験を経て、ハーバード・ロースクールを修了。ニューヨーク州弁護士資格を取得する。’20年、東京大学大学院法学政治学研究科総合法政専攻博士課程修了。’21年より信州大学特任教授。著書に『世界一やさしいフェミニズム入門 早わかり200年史』、『「ふつうの家族」にさようなら』などがある。
山本 奈緒子
1972年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。 『ViVi』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、 インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、 主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。
1972年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。 『ViVi』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、 インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、 主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。
げんき編集部
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki
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