「障がいのある人を子どもが指さしてしまう」対処法を左上肢機能障害の三上大進がアドバイス

初エッセイ「ひだりポケットの三日月」を出版記念インタビュー #3

げんき編集部

三上大進
大学卒業後、外資系化粧品会社でマーケティングに従事。2018年に日本放送協会入局。業界初となる障がいのあるキャスター・リポーターとして採用され2018平昌、2020東京パラリンピックにてレポーターを務める。生まれつき左手の指が2本という、左上肢機能障害を持ち、自身のセクシャリティーがLGBTQ+であることをカミングアウトしている。現在はスキンケア研究家として活動。スキンケアブランド「dr365」をプロデュース、運営。
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2024年7月22日に初エッセイ「ひだりポケットの三日月」を出版した、三上大進さん。生まれながら左手に障がいをもっている三上さんが、自身の障がいやセクシャリティーなどについての思いがつづられています。

そんな三上さんご自身も、障がいがもとで街中で指をさされたり、理不尽な注目をあびることも多かったそうです。そんなときの親としての正しい対応や、いじめなどで傷ついた子どもへの対処法を伺いました。

「僕はかわいそうなのか?」

最初に「障がい」という言葉に出会ったのは、小学校の入学式の翌日。担任の先生が「三上くんの左手には障がいがあります。不自由なので、絶対にいじめてはいけませんよ」ってみんなに話したんです。

「あ、僕って障がいなの?」って、その言葉の大きさに驚いた。「不自由って? 僕はかわいそうなのか?」
言葉の一つ一つがセンセーショナルでした。

人との違いに打ちのめされたというか。どういうふうに受け止めたらいいのかが分からなかった。女子の何人かからは「かわいそう」って言われて、男子はもう大注目なわけ。「本当に!?」って。

そんな理由で注目を浴びてしまって、中には面白がる人もいて。なるべくなら知られたくないし、それで傷つきたくないって気持ちになって、そのときから左手を隠すようになってしまったのかもしれません。

障がいのある人を指差してしまう……子どもの対処法

──「障がいとはなにか?」がわからない小さな子どもは、障がいをもっている人を悪気なく指差してしまうこともあります。そんなとき、親はどんな行動をとるべきでしょうか?

「子どもって本当に正直で、ときにとても残酷ですよね。でもそれは罪の意識が全くないし、傷つけようと思ってるわけでもない。気持ち悪いと思ったら『気持ち悪い』『怖い』って口に出る。でも『子どもだからしょうがない』とあきらめないでほしいし、頭ごなしに𠮟るのも違うかなと思います。だって自分と違う人を見て、怖いじゃん。それは経験がなくてわからないから。自然なことだと思います。そこで𠮟っても、本人は『何で怒られているんだろう?』ってなっちゃうと思うんです。

子どもが悪意もなく誰かを傷つけるような一言を言ってしまったら、それを言われた相手がどんな気持ちになるのかを一緒に考えてあげるのが理想ですよね。

相手の方にもよりますが、無視したり、『見ないの!』なんて言うのは、本当の正解じゃないと思います。私、子どもがいないので具体的に想像できませんが、実際私もジロジロ見られたりしたことはあります。親御さんはみなさん、大概一言謝ってくれます。

でも、例えば自分の子どもがもし車椅子の人に『どうして座っているの? 変なの』なんて言ったりしたら、『なんてこと言うの!』とその場で𠮟ったりせずに、『○○ちゃん、あとでお話があります。うちの子が大変失礼しました。良い一日をお過ごしください』と相手に気遣いを渡しておく、とか。お家に帰ってから、お話ししてくれたらいいかなと思います」

言葉を我慢するか、言葉を引き出すか

──子どもがいじめられて帰ってきたとき、親はどう接してあげたらいいと思いますか?

「誰しも、何か嫌なことがあっておうちに帰る経験って一度はありますよね。私ももちろんあります。私は言葉は何もいらなかったかもしれない。ただ、子どもがもし100%悪かったとしても、絶対に味方でいてくれる人がそばにいる、その安心感を与えることは大事だと思っています。

親としては、『あきらかに何かあったな』ってときは見ればわかるじゃない? そのとき『誰かに何か言われたの?』と詳しく聞きたくなりますよね。だけどそこをグッと飲み込んで、言葉よりも一緒にいてあげる。その子が話してくれるまで待つ姿勢も必要かな。言葉をかけること以上に、何かできることってあるかもって気もします。

きょうだいがいる場合と似ている気がしていて、『お兄ちゃんにはこうしたら良かったけど、弟にも同じことをすればいい』というわけでももちろんない。

私はあまり根掘り葉掘り聞いてほしくなかったから、『おかえり。好きなもの食べる?』とか、その話題にふれずにいてもらえるほうがうれしかった。

たぶん、お子さんと親御さんの関係にもよりますよね。しっかり話を聞いてもらうことで消化できるタイプの子もいるだろうし、私のように、いつもどおり何も気づかないふりをしてくれることが心地良い人もいるかもしれない。もちろん言葉も大事。

だから日常的にどういう関係値を親子で築いているかということと、その子の特性をどれほど理解できてるかってことかもしれない。日頃からお子さんとどういうふうに対峙していくか、それによって対応は変わってくると思います」

初エッセイ「ひだりポケットの三日月」

NHKでのパラリンピックのリポーターとしての奮闘や、自身のセクシャリティー、美容で変わった人生など、さまざまな人を勇気づける内容がつづられたエッセイ「ひだりポケットの三日月」。障がいのある子、他者との違いに悩みを抱える子を育てる親御さんに響く、説得力にあふれた子育て論も必見です!
「ひだりポケットの三日月」
定価:1540円(税込み)/講談社
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げんきへんしゅうぶ

げんき編集部

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki

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