自然観察がもっと楽しくなる生きもの系アプリを使ってみよう

身近な生きもので自分だけの図鑑が作れると大人気!

画像識別のAIを使って、水族館や動物園ではもちろんのこと、近所の公園に生息する動植物の写真を撮って、すぐに「これなんだろう」を解決してくれるところが生きもの系アプリの良いところ。「googleレンズ」や「リンネレンズ」など、最近では、たくさんの生きもの系アプリが登場しています。そんな中から今回は、代表的な生きもの系アプリ「Biome」の開発者・藤木 庄五郎さん(株式会社バイオーム)に、開発秘話や使い方を教えていただきました。

MOVEの読者、生きものが好きなご家庭で流行っているという噂!

「バイオーム」とは、写真を投稿すると、独自の名前判定AIにより、日本国内で確認されている生物ほぼ全種を判別できるスマートフォン向け無料アプリケーション。“自分だけのいきもの図鑑””いきものクエスト”と、生きもの好きの子どものみならず、大人心もくすぐるキャッチーなサービスが並び、2019年4月の公式リリース以来、すでに38万ダウンロードを突破。MOVE読者の中でも話題となっているこのアプリを開発されたのは、京大発のスタートアップ、株式会社バイオームの藤木庄五郎さん。開発のきっかけとはなんだったのでしょうか。

「京都大学在学時に生態学の研究をしていました。生物多様性保全というテーマだったのですが、生物多様性を数字で評価するための生物のデータがほとんどないことに気がつきました。そこで、生物の分布状況をちゃんと知らないといけない、そのためにはどうしたらいい、アプリを通してデータ収集ができるのではと思ったのがきっかけです。生物収集アプリによって生物の分布状況を把握し、生物多様性保全の基盤情報として活用していくことを目的としました」(藤木さん、以下同)
しかし、思いついたが良いものの、システムを1から作り上げていかなければならなかった。どのような仕組みで、瞬時に同定(分類上の所属を決定すること)ができるシステムを作れたのでしょう。

「開発中は苦労続きで大変でした。まずはアプリのプログラミングの勉強から始めて、本を読みながら0から作っていって、アプリができるまでに3年くらいかかりましたね。思ったよりもすごく時間がかかりました。今まで同定は非常に高度な専門性が必要な領域でした。それが一般に広がりにくい部分でもあると考えて、図鑑のようにそれを教えてくれる仕組みができればと思いました。とにかく誰でも使えるというところを意識して考えました。その上でまずは『生物の名前判定A I』に着手しました。日本国内で確認されている生物ほぼ全種動植物を扱うために、昆虫や魚の専門家に話を聞いて回って、どういうふうに分類されているのか、始める前の学習用のデータ集めに非常に苦戦しました」

京都にオフィスを構えるバイオーム。zoomで藤木さんにお話を伺いました。

例えば、鳥はとっても身近なようで扱い方が難しいところがあります。鳥の専門家の先生からはどういった指摘を受けたのでしょうか。

「主に保全上の問題をアドバイスいただきました。営巣地に人が近づいてしまうのではないかという危惧や、ヒナが巣から落ちた時はどうするべきか、などです。アプリでもブログなどで営巣地には近づかないようになど発信できるように心がけています」

生きもの投稿だけでなく「生きものクエスト(調査お題を設けたイベント)」生きものブログなどコンテンツも充実!

日本国内のほぼ全種を扱っている、その膨大なデータをどのように集めたのでしょうか。それはバイオームのA Iの仕組みと繋がっているようです。

「バイオームでは2種類のA Iを扱っています。一つは、画像解析。ただし、常に最新の論文に沿うようにしているとはいえ、画像だけではどこかで限界がきてしまうと考えました。なので、うちでは画像にあまり依存しないAIを使っています。それが位置情報のA Iです。生物の分布は場所と時期に制限されます。例えば、京都の鴨川に4月にいる蝶となると、それだけで5種類くらいに絞られます。画像を使わなくても、場所と時期がわかれば、ある程度名前を特定していけると考え、画像というデータソースと位置情報というデータソースを組み合わせて判定する仕組みを作りました。なので、その2つの情報を集めないといけません。サービスの初期は過去の文献、使えるものならなんでも使ってAIに学習させる方法でスタートさせました。今はアプリで集まったデータのみでAIが学習し、精度も上がっています」
「位置情報」がバイオームの決め手。実際に使用する際は、写真を撮る際の設定をオンにしてから使用しましょう。しかし、子どもが使う場合は、位置情報を非公開にして投稿することを推奨しています。位置情報を非公開にすると、アプリ上で位置が表示されることは一切ありませんので安心して使用できます。

「位置情報がないと名前判定ができないのと、分布情報を集めるために始めたサービスでもあるので、どうしても位置情報はマストになります。鳥など一眼で撮ったものは位置データを後でつけたり、デジカメは位置情報がつきますのでスマホ以外でも使えます。ただし、普通種だけは地図上で見られるようにしていますが、位置情報の検索まではできないようにしています。希少種は地図上でも見られないようにしています」

MOVEを監修してくれる専門家の先生に画像を見せると「それはいつどこで撮ったの?」と必ず聞かれます。バイオームが大事にしている「位置情報と時期」は、正確なデータを取るために不可欠の情報ということが分かりますね。

そして「バイオーム」に参加する最大の喜びとも言えるのは自分が撮った動植物のデータが研究機関や行政機関などのしかるべき場所に提供され、環境保全に活用されるという点。子どもたちは研究者になった気分で楽しめるのだとか。

「研究目的の場合は、基本は無償で全国の博物館さんや大学さんに提供しています。例えば、実際に小学3年生の子が見つけたヒラズゲンセイの分布地が最北端だったという情報が上がってきたり、これは新しい分布域の発見ということでニュースにもなりました。外来種では、新分布記載ということで、いくつか論文が発表されている。あと、例えば大阪府の環境農林水産総合研究所さんのような研究所にデータを提供し、それが外来種防除に使われたり、帯広畜産大学さんにはロードキル(動物の交通事故)のデータを提供して、それを防ぐための解析をしていただいたり、環境省さんには、温暖化の影響を受けている生き物、分布域がどんどん北に移動している生きものや開花時期が変わった植物のデータを提供して温暖化の影響評価に使ってもらうなど、実際にたくさんのところで活用いただいています」
世界中の生物・環境をビッグデータ化し「生物多様性市場」を創り出す事を目指して設立された「バイオーム」。開発者・藤木さんが考える生物多様性市場とは、どのような市場なのでしょう。

「生物多様性を守ることが産業(ビジネス)になるという状態を全世界で作っていかないといけないと思いました。例えば、最近ではグリーンインフラと言われているグリーンを活かしたまちづくりに、生物多様性の観点を取り入れていく。その結果、街の不動産価値が上がるなど、生物多様性が守られていることが、きちんとお金にも繋がっていくという話です」

今後、写真だけでなく音声も取り入れて、アプリをどんどんブラッシュアップしていきたいという。鳥や動物、昆虫の鳴き声、自然が発する音を取り込んだサービスは想像するだけでも楽しそうですね。そんなバイオームが目指している未来はどのようなものでしょうか。

「今は国内だけですが、世界中の生物の分布の状況を把握できるようにして、そのデータを生きものの保全のために国や企業に使っていただきたい。世界中の生物を見守って、それを未来につないでいく活動をしていきたい」
これからバイオームを始めるお子さんへのメッセージや注意点があればお願いいたします。

「生物のデータを集めたいというアプリの裏側の話はありますが、お子さんたちにはやっぱりアプリそのものを楽しんでほしい! 今まで苦手に思っていた生きものがいたら、そんなこと思わないで、そういうのも含めて地球は回っていると楽しんでほしいですね。注意点で言うと、決して人物や虫のおもちゃの写真や図鑑の写真を使ったりしないでくださいね!」
生きもの保全のために生きものアプリを開発してしまうなんて、藤木さんはどんな生きもの大好き少年だったのでしょうか? スタートアップ企業を設立して夢を叶えたこれまでの道のりは?

「僕自身は大阪市内出身で大自然の中で育ったわけではなかったのですが、小学生の頃によく釣りをしていました。フナ釣りだったのですが、週末になるたびに行っていて、その頃からブルーギルばっかり釣れるなあと。小学生ながらに、これは生態系が崩れていっているんだと実感して本を読んだり調べたりするようになりました。生態系や外来種の本ですね。その頃から将来は生態系が崩れていかないようにな活動をできる大人になりたいなーと思っていました。そう考えると小学生の頃から思いは変わらないですね。進学するにつれて京大の農学部が良いと聞いて、そこを目指していきました」

そんな絵に描いたような子どもの頃の夢を叶えた藤木さん。これから大きな夢を持ち、それを叶えるために走り出す子どもたちにアドバイスをお願いします!

「とにかく外に出て、身近な自然を観察してほしい。そこにいろんな学問の基礎が全部詰まっていて、しかもめちゃ面白い。物理的な現象も、植物が光合成をしてどういうふうに暮らしているか、生態系がどのような関わりで生きものたちが支え合っているか、数学的なこともそうですし、いろんなことが自然の中にあって、それを見て疑問に思ったり、これなんでだろうと気づいて調べてみてほしい。テレビゲームするより面白いと思う。何せ現実のことなので自分と近いから。そういうものに楽しさを見つけてほしい。それが後々に絶対生きてくるはず。研究者になっても絶対に役立つ。疑問に思ったら大人に聞いたり、図鑑で調べたりしてほしいですね」

調査お題を設けたイベント「いきものクエスト」も盛り上がっています!

現在開催中のたくさんの生きものクエストの中から環境省との連動イベント「気候変動いきもの大調査」をピックアップ。

今回は秋・冬の生きもの調査。自分が見つけた生きものを投稿することで地球温暖化の影響を学べ、イベントコンセプトである"自分たちにできる「ゼロカーボンアクション30(脱炭素社会)」を考える"きっかけにもなるはず。

2022年1月31日まで開催中!
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