講談社の壁からジュラ紀の地層が出現! 伝説のアンモナイトの化石ついに発見か!?
10月15日は「化石の日」。身近にある化石を探してみよう!
2023.10.15
都市伝説? 講談社社屋のアンモナイトを探せ!
「化石」は、大昔の生物が生きていた痕跡です。化石は、何万年どころか、何億年も前の地球の様子まで教えてくれるという点で、とても重要なものです。古生物学者は、こうした化石をいろいろな方法で調べることで研究を行います。
読者のみなさんのなかには、「化石」というと、ティラノサウルスの全身骨格のようなとんでもなく貴重なものを思い浮かべてしまい、「博物館でしか見ることのできない珍しいものだ」と思ってしまう方も多いのではないでしょうか? しかし、実際には化石は、皆さんのすぐ近くにも隠れています。
この記事では、「講談社の七不思議」を例に、意外に身近なところにある化石と、その楽しみ方を紹介します。
紹介してくれるのは…三上智之先生
国立科学博物館地学研究部 日本学術振興会特別研究員PD
動く図鑑MOVEシリーズ『あつまれどうぶつの森 島の生きもの図鑑』アンモナイトパートなどの執筆を担当。
YouTubeチャンネル「ゆるふわ生物学」
進化生物学の入門書『ナゾとき進化論 クイズで読み解く生物のふしぎ』好評発売中!
ここに、30年前の講談社の社内報があるのですが、この中に「講談社の七不思議」の特集があります。七不思議のなかでも、今回注目するものはこちら。
というわけで今回、講談社の社屋に潜入して、講談社の建物にはどんな化石が潜んでいるのか、そしてなにより、アンモナイトはいるのかを調査してみました。
講談社の新館のロビーに入ると、実は周り一面の石材は化石だらけ。実はこの石材は、イタリアのジュラ紀の地層で、巻き貝や腕足類やサンゴといった、殻をもった生物の化石がたくさん入っています。しかし、ロビーの石材には、いくらさがしてもアンモナイトはみつかりません。
というのも、ジュラ紀には大繁栄していたアンモナイトですが、だからといってジュラ紀の化石を含む地層であれば、どこでもアンモナイトが見つかる! ……というわけにはいきません。たとえば、砂漠でカエルを探しても見つからないし、海の中で昆虫を探しても見つからないように、アンモナイトが生きている時代の地層であっても、そこにアンモナイトがいたとは限らないのです。
ロビーの化石をしっかり観察した後は、本館に行ってみました。講談社に限りませんが、同じ会社のビルであっても、部分ごとに違う石材を使っていることはよくあります。とくに、建てられた時期が違うと、違う石材が使われている可能性が高いでしょう。果たして本館にはどんな化石が潜んでいるのか……?
見つけたのはこちら。
ウニ・ヒトデ・クモヒトデ・ナマコ・ウミユリは、棘皮動物とよばれるなかまです。棘皮動物は、五放射相称といって、同じ構造が5つ放射状にくりかえすことが特徴的(たとえば、ヒトデの体を思い出してみてください)。石材の中で見られるウミユリ化石のなかにも、きれいな五放射相称の星形をしているものがある場合もあります。
調査の最後に訪れたのは、新館の地下。ここの石材をしっかり探すと、断面が丸い棒状の構造がたくさんあります。実はこれ、ベレムナイトといって、中生代に栄えたイカのような形の生物です。
講談社のアンモナイトでも、アンモナイトの殻が隔壁でたくさんのちいさな部屋に分かれていることが観察できました。
というわけで、今回の調査では、講談社の社屋の石材でアンモナイトを見つけることができました。これで講談社の七不思議の一つが解き明かされた……と言いたいところですが、実はそうともいえません。
というのも、今回アンモナイトを見つけた新館ができたのは、「講談社の七不思議」が紹介されている社内報が出たときよりも後の話。そうであれば、社内報が出たときには講談社のビルにはウミユリはいてもアンモナイトはいなかったのか、はたまた、本館にもまだ隠れているアンモナイトがいるのか……。まだまだ調査の必要がありそうです。
今回は、講談社社屋を例に、アンモナイトを探してみました。講談社社屋に限らず、デパートやホテル、駅の石材などに、アンモナイトをはじめとする化石が隠れていることはよくあります。みなさんも、街に出かける際には、ぜひ石材に注目して、化石を探してみてください。
街の石材で化石を探す際には、こちらの本(『街の中で見つかる「すごい石」』)を読んでみるのがおすすめです。