高尾山(夜の部)で見つけた昆虫を紹介します!
はると君とゆのさんの親子は昼の部だけの参加となりましたが、ここから新たにしんご君(12)親子とりょう君(11)、がく君(7)兄弟とお父さまが仲間に加わります。午後6時45分発のケーブルカーに乗り込み、山の上へ向かいます。
高尾山は、スダジイやカゴノキなどの南方系とマタタビやブナなどの北方系の植物が両方見られる非常に面白い山で、タカオスミレやタカオヒゴタイなどここで発見された植物もたくさんあります。植物の種類が豊富ということは、昆虫もそれだけ豊富ということ。
ここには何千種類もの昆虫が生息しています。幸い高尾山での昆虫採集は今のところ禁止されていないので、安心して虫採りができます(人が目で見つけた昆虫をいくら採集したところでその虫が絶滅するようなことはありません)。*ただし、人の迷惑になるのでケーブルカー営業中に駅構内で網を広げるのは禁止です。
私(伊藤)は、1990年から2000年代にかけては夏になると毎年のように、虫友や家族と一緒にこの高尾山ナイター採集をしていました。最終ケーブルカーで山の上に上がって一晩中、明かりに来る虫を探すのです。私たちの目的はいつも珍品、ヨコヤマヒゲナガカミキリを採ることでした。
ヨコヤマヒゲナガは、体長約35ミリほど。ゴマダラカミキリと同じくらいの大型のカミキリで、ブナとイヌブナに依存しています。高尾山はこのカミキリが生息している東京の都心から最も近い山なのです。因みに私は何十回も通ってこれまで2回オスを採ったことがあるだけ(そのうち一回は息子が採集。笑)です。
今回も目標は一応このヨコヤマヒゲナガカミキリとしました。一応と言ったのは、はなから誰も採れるはずはないと思っていたからです(笑)。さぁ、何が見つかるか? みんなヘッドランプや懐中電灯を片手にわくわくしながら参道を進んでいきます。
ここ10 年ほどカシノナガキクイムシという小さな甲虫が全国的に大発生して、カシやナラの仲間を枯らしているのですが、高尾山にも確実に入りこんでいて、樹齢100 年を越えるようなコナラの大木がほとんど枯れかけていました。
ベンチでくつろいでいた私に電話がかかってきました。誰かがヨコヤマヒゲナガを採ったというのです。半分信じていなかったのですが、現場へ行ってみるとしんご君がニコニコしていました。
しんご君、エラい!
何組かの親子は下りのケーブルカーが動いている午後9時半までにケーブルカーでふもとへ降りていきました。残ったのはれいいちろう君、しんご君親子と佐藤編集長。夜も更けて、お腹がすいたところで佐藤さんが持ってきたガスバーナーでお湯を沸かしてスープを作り、ウィンナーを焼いて振る舞ってくれました。
残念ながら今回は見られなかったけれど高尾山にはムササビが数多く生息していて、私は何度も観察しています。一度など、頭上でムササビとアオダイショウが絡み合っていて、夢中で見ていたらそのアオダイショウが目の前にドスンと落ちてきたこともありました。朝まで夜明かししてもよかったのですが、今回は午前0時すぎに山を下りることにしました。
帰りは一号研究路を歩いて下ります。真っ暗ですが、この道は舗装されており、ライトさえあれば安心して下りられます。途中、木のベンチに美しいガが止まっていました。ハグルマトモエ。その名のとおり、上ばねの「巴模様(ともえもよう)」が美しいガです。
食べている獲物かと思ったのは脱皮殻でした。普通は茶色いゲジが青っぽかったのは脱皮中で、まだ体が柔らかく、充分に固まっていない状態だったからでした。森の中ではそこら中で私たちの知らない世界が広がっていますね。
伊藤 弥寿彦
1963年東京都生まれ。学習院、ミネソタ州立大学(動物学)を経て、東海大学大学院で海洋生物を研究。20年以上にわたり自然番組ディレクター・昆虫研究家として世界中をめぐる。NHK「生きもの地球紀行」「ダーウィンが来た!」シリーズのほか、NHKスペシャル「明治神宮 不思議の森」「南極大紀行」MOVE「昆虫 新訂版」など作品多数。初代総理大臣・伊藤博文は曽祖父。
1963年東京都生まれ。学習院、ミネソタ州立大学(動物学)を経て、東海大学大学院で海洋生物を研究。20年以上にわたり自然番組ディレクター・昆虫研究家として世界中をめぐる。NHK「生きもの地球紀行」「ダーウィンが来た!」シリーズのほか、NHKスペシャル「明治神宮 不思議の森」「南極大紀行」MOVE「昆虫 新訂版」など作品多数。初代総理大臣・伊藤博文は曽祖父。