特大のナナフシ、無数のマダラコオロギ……度肝を抜かされた西表だから見られた生きものたち

サイエンスライター・柴田佳秀の「生きもの好きの聖地・西表島紀行」その1

サイエンスライター:柴田 佳秀

2022年夏に実施した、MOVEラボ企画「子どもの夢をかなえる“図鑑旅”」。目的地は、2021年7月に世界自然遺産に登録された“東洋のガラパゴス”とも呼ばれる西表島! 子どもたちに、西表ならではの希少な動植物と出会い、雄大な自然を五感で思いっきり感じてきて欲しい、という旅の目的を実現すべく、今回、モニターとして“図鑑旅”をしてくれたのは、MOVEラボ研究員とご家族。

そして、「たくさんの生きものに会いたい!」という研究員の夢をかなえるための強力な助っ人が、現地のネイチャーガイドの赤塚義之さん。そこに、MOVEでおなじみのサイエンスライター、柴田佳秀さんが加わり、いよいよ旅のスタート! 自然観察の醍醐味、生きもののおもしろさ、島の魅力......。西表島の今を柴田さんがレポートしてくれます!

珍しい生きものだらけの島

ヤエヤマツダナナフシ。触るとミントの臭いがする液体を噴射する。
見てください! この巨大な昆虫を。名前はヤエヤマツダナナフシといいます。

1989年に八重山列島の西表島で発見された日本最大のナナフシで、アダンというトゲトゲの葉を食べる昆虫です。今回、私が訪れた西表島は、こんな珍しい生きものがわんさかいる島。
有名なイリオモテヤマネコをはじめ、ここでしか見られない固有の生きものが数多く生息する生物多様性に富んだ場所として知られ、世界的にも価値がある地域として、2021年に奄美大島、徳之島、沖縄島北部と共に世界自然遺産に登録されました。
海から見た西表島。山々が連なり亜熱帯の森に覆われる。
西表島とは
西表島は、1年の平均気温が23度の亜熱帯の島。沖縄県で2番目に大きな島で亜熱帯の森に覆われた標高300~400mの山々が連なっています。また、沖縄県最長の浦内川をはじめ、大小何本もの川が流れているのも大きな特徴の一つ。その川には数々の滝があり、河口にはマングローブの森が広がっています。人が住んでいるのは、島の海岸近くの平らな部分だけ。とにかく島のどこを見ても大自然ばかりというのが西表島なんです。
生きもの好きの聖地

そんな西表島は、生きもの好きにとっては正に聖地。一度は訪れてみたい憧れの島なんです。

私は1992年に訪れたことがあり、カンムリワシなどのたくさんの生きものに出会い、夢のような時を過ごした思い出があります。今回は実に30年ぶりの訪問。出発前日の晩はワクワクしすぎてなかなか寝つけませんでした。今回の西表島への旅は、3泊4日の短いものでしたが、それでも出会った生きものは125種。そのなかで、特に印象深かったものを紹介したいと思います。

ホテルの森を探索する

ホテルの敷地にある森。生きもの観察のための道が整備されている。
島に着いて、まずはウォーミングアップとして西表島ホテルの敷地内にある森林トレイルを歩いて生きもの探しをすることにしました。
無数にいたマダラコオロギ

森の中に入ってすぐに出合ったのは、マダラコオロギ。日本では南西諸島に分布する昆虫です。最初は木の幹に止まっている1匹を見つけたのですが、目が慣れてくるといるわいるわ。そこら中の木の幹にたくさんのマダラコオロギが止まっていて、生きものの数が半端なく多いことを否応なしに実感させてくれます。
マダラコオロギ。コオロギと名がつくがマツムシのなかま。
マダラコオロギの数に圧倒されていると、今度は幹を素早く走るトカゲを見つけました。サキシマキノボリトカゲです。

これは西表島に来たら是非とも会いたい生きものの一つですが、いとも簡単に見つけることができました。ちなみに西表島にすむ生きものの名前には、リュウキュウ、サキシマ、ヤエヤマという単語が頭につくのがたくさんいます
サキシマキノボリトカゲは褐色と緑の2タイプがいる。
これはその生物が分布するだいたいの地域を表していて、リュウキュウは種子島以南の南西諸島に分布する生きもの、サキシマは宮古島以南の先島諸島、ヤエヤマは石垣島以南の八重山列島に分布する種につけられているのです(一部例外もあり)。

ということはこのサキシマキノボリトカゲは先島諸島に分布するトカゲで、西表島がその代表的な生息地というわけ。是非とも会いたいのはそういうことなんです。

オオコウモリを発見!

ヤエヤマオオコオモリは果実や花の蜜を食べる。
さらにトレイルを進むと、木の枝に止まる黒い塊を見つけました。双眼鏡で確認すると、なんとヤエヤマオオコオモリです。

昼間はこうやって逆さまになって枝にぶらさがって休み、暗くなると飛び立って行動を開始します。西表島では夜に飛び回る姿はよく見るのですが、昼間休んでいる姿を見られるのはちょっとラッキーなことなんです。

ホテルの森を小一時間探索しただけで、数々の珍しい生きものに簡単に出合えるなんて、本当に驚きです。トレイルはよく整備されており、小さなお子さんでも安心して歩けるのでご家族連れにはお勧め。また、西表島ホテルではガイドさんが案内する「イリオモテガイドウォークジャングルコース」というツアーも行われているので、それに参加するのも良いでしょう。(第2回へつづく)

写真提供/柴田佳秀

「子どもの夢をかなえる“図鑑旅”プロジェクト」とは?

コロナ禍での行動制限や活動自粛に伴い、子どもの自然体験や旅の機会が減っていることに憂いや不安を抱いている保護者が増えている昨今。MOVE編集チームでは、図鑑編集に携わる私たちならではの「好奇心を刺激し、夢をかなえるような旅を子どもたちにしてほしい」、「濃い思い出として記憶に残る数日を親子で過ごしてほしい」—そんな思いを込めて家族で楽しめる旅を企画しました。

図鑑がきっかけで興味をもったり、好きになったものを自分の五感で見たり、触れたり、感じることができる旅。実物に触れることで、図鑑からスタートした好奇心を、さらに刺激してあげることができる旅。これを編集部では、“図鑑旅”と名付けて、これからも様々な目的地を探っていこうと思っています。

また、今回の旅の実現に向けて、全日本空輸株式会社様、株式会社星野リゾート様には、企画のスタートの段階より、目的地やそこでの過ごし方について相談し、多くのご協力をいただきました。

MOVEラボ研究員・ゆうとのレポートもチェック!

しばた よしひで

柴田 佳秀

Shibata Yoshihide
サイエンスライター

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。