日本初!赤ちゃんが誕生した【マルミミゾウ】に会いに安佐動物公園へ!

〈新連載〉ドリトル柴田の「動物園に行ってみた!」vol.3

科学ジャーナリスト:柴田 佳秀

日本では安佐動物公園でしか見られないマルミミゾウ
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憧れの動物マルミミゾウに会いに行く

こんにちは。科学ジャーナリストのドリトル柴田です。私は、日本各地の動物園を巡る旅を続けています。
これまでの記事はこちらから(①日立市かみね動物園②のんほいパーク

「ここでしか見られない!」
この言葉を聞くと、なんだか無性に見に行きたくなりませんか?
動物園の魅力のひとつは、まさにここだけ”の動物に会えることです。

私が長年憧れていたのは、世界に3種いるゾウの中で最も珍しいマルミミゾウ。日本で見られるのは広島の安佐動物公園だけです。先日、ついにその夢がかない、念願の対面が実現しました。しかもその日は、マルミミゾウ以外にも思わぬ発見がいっぱい。今回は、その訪問記をお届けします。

\\動物学者・本郷峻先生監修!//
マルミミゾウも載っている!MOVE「動物 新訂二版」

安佐動物公園といえば、このロゴマーク。よく見るといろいろな動物が隠れています。

入ってすぐに驚かされる展示が登場!

東京駅から始発の新幹線に乗り込み、一路広島へ。
やっぱり広島は遠いですね。残念ながら開園時間には間に合いませんでしたが、焦る気持ちを抑えて正門から園内へ。入ってすぐ、視界に飛び込んできたのはサル山です。
正門を入ってすぐのところにあるサル山
「お、定番のニホンザルかな?」と近づいてみると予想外の光景が!

それがこれ。
アフリカ中央部に分布するアヌビスヒヒ
なんとアヌビスヒヒです。そして、その数がとんでもない!
まさに“サル山”ならぬ“ヒヒ山”です。日本でもアヌビスヒヒを飼育している動物園はいくつかありますが、これだけ大きな群れで展示しているのは、ここ安佐動物公園くらいでしょう。
まさに“ヒヒ山”という光景
野生のアヌビスヒヒは、大きな群れを作って暮らすことで知られますが、この展示はその生態を見事に再現。到着早々、「ここでしか見られない光景」に出会えて、遠路はるばる来た甲斐がありました。
おやつの時間。たくさんのアヌビスヒヒの群れは圧巻です。

ついに本命のマルミミゾウにご対面

さあ、次はいよいよ本命のマルミミゾウに会いに行きます。気がつけば、期待に胸が高鳴って足取りも自然と早まっていました。歩くこと5分ほど、遠くのほうにゾウの姿が見えてきました!
お! ついにゾウの姿が見えてきた!
「おお、これがマルミミゾウか! 」
ついに念願が叶って、希少種マルミミゾウとご対面です。

でも、思ったよりも体が大きく、聞いていた感じとはなにか違います。
「おかしいなあ」と思いながら、解説板を見るとこのゾウは、サバンナゾウ(アフリカゾウ)のタカくんでした。どおりで大きいわけです。
マルミミゾウと早とちりしたサバンナゾウのタカくん。
「あれれ? マルミミゾウはどこ?」と思いながら、サバンナゾウの放飼場の隣を見ると小さなゾウがいます。
そう。こちらがマルミミゾウだったのです。
マルミミゾウのメス。名前はメイで、西アフリカのブルキナファソから2001年に来園しました。

マルミミゾウの小ささは想像以上!

マルミミゾウは森に暮らすゾウで、障害物の多い環境をすり抜けるように移動するため、小型化したと考えられています。私が執筆した講談社の動く図鑑MOVE『動物 新訂二版』にも、3種のゾウを比較した図を掲載しましたが、正直なところ、そのときはマルミミゾウが実際にどれほど小さいのか、あまり実感できていませんでした。
3種のゾウの比較。講談社の動く図鑑MOVE「動物 新訂二版」P36より
ところが今回、本物のマルミミゾウに対面してみると、想像以上の小ささにびっくり。しかも、小さいながらも姿かたちはサバンナゾウをそのまま縮めたようで、不思議なミニチュアモデルを見ているような感覚になりました。
奥にいるサバンナゾウより手前のマルミミゾウのほうが小さいのがわかりますか。

マルミミゾウがペアで飼育されているのは安佐動物公園だけ

安佐動物公園には、マルミミゾウがもう1頭いました。
こちらはオスで名前はダイ。2001年にメイと同じ西アフリカのブルキナファソから山口県の秋吉台自然公園サファリランドへ来園。2022年に繁殖目的でこの安佐動物公園へやって来たのだそうです。

メスよりも大型ですが、それでもサバンナゾウと比べればかなり小さい感じです。マルミミゾウがいるだけでも驚きなのに、しかもペアで飼育しているのは、世界でもあまり例がないのではと飼育員さんからこのときにお聞きしました。
オスのダイくん。曲がりが小さく下向きのキバはマルミミゾウの特徴のひとつです。

マルミミゾウの赤ちゃんが誕生!

私がマルミミゾウを取材したのは2025年6月で、じつはこのとき、メスのメイのお腹には赤ちゃんがいました。繁殖計画がうまくいって、オスのダイとペアリングが成功し妊娠したそうです。

そして、2025年8月5日の早朝、ついにメイは赤ちゃんを出産。日本で初めて、マルミミゾウの赤ちゃんが生まれました。おめでとうございます!
野生では絶滅した動物も!

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