
ブランコも、クマも、魚たちも──いま地球に起きている“ひとつながりの異変”
【第1回】絵本『あちちち地球とだいじなやくそく!』発売記念! さかなクン×国連広報センター所長・根本かおるさん スペシャル対談! (2/2) 1ページ目に戻る
2026.02.24
根本さん:まさに、この本のタイトルですよね。「あちちち地球」。もう、地球はその状況にあります。2024年の地球の平均気温は、産業革命前と比べて1.55度も上昇し、観測が始まって以降、トップ3に入る暑さとなりました。(※2)
大気だけでなく、海水温も上昇しています。海水には熱をためこむ性質があるので、さかなクンの専門でもある海の生き物にも、大きな影響を及ぼしているんです。
子どもたちにとっても、夏は暑すぎて外で遊べない、ブランコやすべり台を触ると火傷してしまう──そんな状況が当たり前になりつつありますよね。
それから、去年から今年にかけて注目された「クマの被害」。これも気候変動を背景に、クマたちが主食にしていたどんぐりや果物が育たなくなり、エサを求めて町や村にまで出てくるようなになった結果です。(※3) ありとあらゆる形で、気候変動が私たちの暮らしに影響を与えているんです。
撮影/日下部真紀
※3 ウェザーニュース“近年、クマ被害が急増している理由 気候変動による影響は? ”
出典:森林総合研究所
さかなクン:近年の気温と水温の上昇は、本当に著しいものがありますね。たとえば、さかなクンの地元でもあります千葉県館山市の漁師さんのお船に乗せていただき定置網漁業の網に入るお魚を見ると、「ギョギョギョ〜! 南の海のお魚ちゃんがいっぱいだ〜🐟」という状況もギョざいます。
「ぐるくん」(※4)の名で沖縄県の県魚として有名なタカサゴちゃんやその仲間が、千葉県の漁師さんの定置網にたくさん入ることもあります。房総半島の海の中を、実際に潜ってみると、以前は海藻が生い茂っていた藻場が減り、サンゴの海へと変わっています。枝サンゴやテーブルサンゴが広がる光景は、まるで南の海のようです。(※5)
泳いでいても、かつて多かったメバルちゃんやアイナメちゃんなどの磯魚より、チョウチョウウオやスズメダイちゃんの仲間など、カラフルな南のお魚たちを目にする機会が増えてきました。
私たち人間にとっては、数℃の変化でも、自然界の生き物にとっては、暮らす場所そのものがガラリと変わってしまうほど大きな出来事なんです
さかなクン:そうなんです。海域によっては海水温が数度上がっているといわれます。(※6) 海の生き物の多くは変温動物ですから、水温の変化は体温の変化になります。海水温が高いと、私たちにとって「これは高熱だ〜」という状態になってしまうんです。
そうなると、しっかりと泳げる生き物たちは生息地を変えなければいけない。より北へ、より深い場所へと、近年、生息域を変えているお魚たちも知られています。
根本さん:それで、北海道や東北で獲れる魚が変わってきているわけですね。
さかなクン:そうなんです。北海道の海は、暖かい海で獲れていたブリちゃんやマンボウちゃん、シイラちゃんといったお魚が漁業でも多く獲れるようになったといわれています。(※7)
根本さん:漁師さんは、どう対応しているんですか?
さかなクン:これまでシャケちゃんが獲れていた漁場の多くが、シャケちゃんではなくブリちゃんに変わってきているそうです。日本には昔から「北から東はシャケちゃん、西はブリちゃん」という食文化がありました。ブリちゃんは美味しいお魚であることは間違いないので、北海道の地域によっては、最初は普及を目的に学校給食に取り入れられたそうです。
すると、ブリちゃんは北の海を回遊するあいだに、プランクトンちゃんや小魚ちゃんやイカちゃんなどをたっぷり食べて、ものすギョく脂がのって美味しく、今では北海道産のブリちゃんはとっても人気で喜ばれます。
多くの生き物は、気候変動によって暮らす場を変えていきます。私たちも、昔からの食文化を大切にしながら、移り変わる「暮らし方や食」のあり方を見つめ直して、柔軟に変化させていくことが大切だと思います。
撮影/日下部真紀
世界の現状を伝える根本かおるさんと、長年、生き物たちの変化を現場で見てきたさかなクン。その言葉から浮かび上がるのは、「地球はもう変わり始めている」という静かな事実です。
では、そんな変化に、私たちはどう向き合えばいいのでしょうか。
次回は、魚や食卓の話を手がかりに、日々の暮らしの中でできることを、二人と一緒に考えていきます。
※5 国環研View LITE “ 地球温暖化で海藻が減る?” 出典:国立環境研究所(NIES)
※6 水産庁“(1)我が国近海等での海洋環境の変化” 出典:気象庁(海洋の健康診断表)
※7 水産庁“(2)漁場環境をめぐる動き” 出典:水産庁「水産白書」
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●さかなクン
魚類学者・タレント・イラストレーターとして幅広く活躍し、東京海洋大学名誉博士・客員教授も務める。中学生時代にカブトガニの人工ふ化に成功、2010年には絶滅種クニマスの再発見に貢献した。テレビや講演では、魚への深い愛情とわかりやすい解説で人気。最新著書は『さかなクンのギョギョッとサカナ★スター図鑑4・5』(講談社、2025年11月)。
●根本かおるさん
国連広報センター所長。国連の活動や地球規模課題を日本社会にわかりやすく伝え、人々の行動につなげる広報・啓発を担っている。気候変動、SDGs、生物多様性、平和や人権などをテーマに、メディア出演や講演、教育現場での発信を通じて、国内外をつなぐ役割を果たす。対話を重視した姿勢で、次世代に希望を手渡すメッセージを届け続けている。




































