「美少女戦士セーラームーン」担当編集者が語る 漫画原作とアニメの秘密

美少女戦士セーラームーン ミュージアムをレポート 武内直子先生お気に入りの部屋

編集者・ライター:山口 真央

武内直子先生が「美少女戦士セーラームーン ミュージアム」のために描き下ろした作品。  
©Naoko Takeuchi
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長いあいだ、ファンの心を摑んで離さない「美少女戦士セーラームーン」。1991年の連載開始から、30年の時が経ちました。

そんな「美少女戦士セーラームーン」の特別な展覧会が、東京で開催中です!

初めて公開される貴重なカラー原画や、過去に発売された数々のグッズ、展覧会のために描き下ろされた武内直子先生のイラストまで、展示の内容は盛りだくさん。

今回は、「美少女戦士セーラームーン」の担当編集をしていた小佐野文雄さんの解説付きで、展覧会の見所をまるっとお見せします!

作品の舞台となる街にミュージアム出現!?

「美少女戦士セーラームーン ミュージアム」が開催されているのは、麻布十番から徒歩10分のところにある六本木ミュージアム。これを聞いただけでも、興奮するファンはいるかもしれません。

というのも、麻布十番が「美少女戦士セーラームーン」の舞台というのは、ファンのあいだでは有名な話。しかもミュージアムの隣にある女子校は、セーラーマーズこと、火野レイちゃんが通う学校のモデルだと言われているんです……!

ミュージアムの外壁には、セーラー戦士10人のイラストが。  
©Naoko Takeuchi

ミュージアムで出迎えてくれるのは、セーラームーンをはじめとした10人のセーラー戦士たち。このイラストは、武内直子先生が今回の展覧会のために描き下ろされた特別なイラストです。

ミュージアムのエントランスにある、巨大なセーラームーンのイラストも、今回のための描き下ろし。
珍しくマントをまとったセーラームーン。サイズは見上げるほど大きい。  
©Naoko Takeuchi
月明かりの下で、おなじみのムーン・スティックを手にしたセーラームーン。担当編集者の小佐野さんは「描き下ろしイラストの見せ方は、当初の予定から変更された」と話します。

「今回のミュージアムにあわせて、武内先生はいくつかのイラストを描き下ろしてくださいました。最初は、原画の展示の入れ替えに合わせて、描き下ろしのイラストも入れ替えようと考えていたんです。

しかし武内先生は、訪れた皆さんに描き下ろしのイラストを見てもらおうとおっしゃいました。それなら盛大に飾ろうということで、このような巨大な展示となりました」
セーラームーンのイラストの前で話す、編集者の小佐野文雄さん。
「なかよし」で「美少女戦士セーラームーン」を連載している当初から、ずっと武内先生を担当している小佐野さん。今回の展覧会について、こう語ります。

「『美少女戦士セーラームーン』の連載がはじまって30年。記念プロジェクトの目玉として、『美少女戦士セーラームーン ミュージアム』が開催されることになりました。

武内先生は、設営がはじまった6月から、何度もミュージアムを訪れています。展示をご自分の目で確認なさって、なるべく目線を女性の身長に合わせるようにと、アドバイスしてくださったこともあります。

展示一つ一つに、武内先生や僕たちスタッフの想いが込められていますので、ぜひミュージアムを訪れて、体感していただけたらうれしいです」
「時空の扉」が描かれたストリングカーテン。 
©Naoko Takeuchi
ミュージアムの入り口には、作中にも登場した「時空の扉」が。こちらは訪れたお客さんに、時空を飛び越えて美少女戦士セーラームーンの世界へ飛び込んでほしいという思いから設置されました。

小佐野さん曰く、武内先生は「お持ち帰りになりたいぐらい、この扉が好きだとおっしゃっていました」とのこと。「時空の扉」をくぐって「美少女戦士セーラームーン」の世界へ突入しましょう!

30周年だからこそ実現した展示の数々

世界観に引き込まれる! 没入型体験シアター

懐かしいメロディーと映像に心が躍る〈セーラー・プリズム・シアター〉。©Naoko Takeuchi
最初に体験するのは、〈セーラー・プリズム・シアター〉。4.5×8メートルの大スクリーンには、アニメのオープニング曲「ムーンライト伝説」とともにセーラー戦士たちの名シーンが映し出されます。

「まずは映像をみて、子どものときにセーラームーンが大好きだった気持ちを思い出してほしい」と話す小佐野さん。大音量で「ムーンライト伝説」のイントロを聞くだけで、子どものころにタイムスリップする感覚を味わえます。

また同じ部屋には、セーラー戦士のロッドとスティックが。セーラー戦士の身長にあわせて、ほぼ原寸大でつくられているアイテムだそうです。
セーラームーンのキューティ・ムーン・ロッド。  
©Naoko Takeuchi

漫画の名シーンが集結! ホログラム原画

「美少女戦士セーラームーン」の漫画を、ホログラムで展示した部屋。  
©Naoko Takeuchi
次に私たちを迎えるのは〈セーラーガーディアンズ・ヒストリー〉と呼ばれる、ホログラムの原画展示。5年間連載された漫画のなかから、名シーンをピックアップしています。

ぐっとくるあの名シーンや、あのキャラクターの登場シーンなどが、美しいホログラムで彩られており、小佐野さんも「思った以上に、作品と演出がフィットしている」と感じたとのこと。

また、武内先生はキラキラしたものが大好きで、このお部屋を大変気に入られていたそう! 天井のミラーボールがセーラー5戦士それぞれのイメージカラーに光るのも、ファンの心をくすぐる仕掛けです。
ホログラム展示で輝く「美少女戦士セーラームーン」の名セリフ。 
©Naoko Takeuchi

ファンは垂涎もの! 歴代アニメの資料&グッズ

アニメ「美少女戦士セーラームーン」の、全シーズンの絵コンテや場面写真がずらり……!  
©Naoko Takeuchi 
「美少女戦士セーラームーン」は、漫画だけでなく、アニメシリーズも大変な人気がありました。こちらの部屋には、1992年から放映されたアニメ第1期の「美少女戦士セーラームーン」から、最新の劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」までの設定などがずらりと並べられています。

「初期のアニメには、つかえる色は180色前後しかなかった」と話す小佐野さん。「黒猫のルナは、黒で塗ると表情が見えなくなるので、アニメでは紫色をつかうことにしました」と、アニメ制作の裏話を明かしました。

2014年にスタートした「美少女戦士セーラームーンCrystal」のころには、アニメでつかえる色はほぼ無限に増えていたのだそう。アニメ制作の歴史を辿ることができるのも、本作ならではです。
劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」の場面写真。初期のアニメと比べると、色づかいが細かく、鮮明な映像になっています。
©Naoko Takeuchi 
隣の部屋では、懐かしのアニメグッズが大量に並べられています。子どものころに欲しかったあの変身アイテムや、お小づかいで手に入れた文房具などなど、ファンなら思い出の品が見つかるはず。

部屋の中央には、セーラームーンやセーラー戦士をイメージした、ウエディングドレスなどがディスプレイされています。
所狭しと「美少女戦士セーラームーン」のグッズが並べられた部屋。  
©Naoko Takeuchi 
担当編集の小佐野さん曰く「ルナは昔より今のほうが人気がある」のだそう。 
©Naoko Takeuchi 
機械にコインを入れてハンドルを回すと、ベロンとでてきた下敷き。懐かしすぎて震えます。 ©Naoko Takeuchi
「美少女戦士セーラームーン」の、ミュージカルの衣裳。
©Naoko Takeuchi

武内先生の生原稿を味わえる! 美しいカラー原画

武内先生が描いた「美少女戦士セーラームーン」の原稿の数々。  
©Naoko Takeuchi
3期にわけて、各期60点ずつ、毎回違った原画が公開されている展示室。

2022年9月10日から11月6日までの2期では、原作第3部<デス・バスターズ>編、第4部<デッド・ムーン>編を、11月から12月30日までの3期では原作第5部<シャドウ・ギャラクティカ>編と21世紀以降の原画が公開されます。

今回、初めて公開される原画がたくさん。今回の展示にあたって、手を入れて直されたものも多数あるそうです。

「武内先生はカラーの色彩感覚が、大変優れていると思う。今見てもかっこいいイラストばかり」と小佐野さんは話します。
「美少女戦士セーラームーン」が表紙を飾る雑誌「なかよし」。  
©Naoko Takeuchi
隣の部屋では、漫画雑誌「なかよし」で「美少女戦士セーラームーン」が登場した表紙や、扉ページが展示されています。

連載していた1991年から5年間は毎月、武内先生のカラーイラストが雑誌に掲載されていました。イラストをずらっと並べると、とても贅沢な感じがします。

小佐野さんは、自身が考えたキャッチコピーについて「女の子っぽい、かわいい文章を書いたところ、女性部員たちから『ダサい。かっこよく書かなきゃだめだ』と怒られた。いま改めて見ると確かに恥ずかしいものがある」と話しました。
「なかよし」で連載を読んでいた人にとっては、懐かしい扉がいっぱい。  
©Naoko Takeuchi

ミュージアムを訪れた記念を残そう グッズショップ&カフェ

武内直子先生は、この部屋のデザインが大変気に入られているのだそう。 
© Naoko Takeuchi
ミュージアムを堪能したあとは、グッズショップでお土産を手に入れましょう!

武内先生のイラスト入りのノートや、セーラー戦士が描かれた缶バッジなど、ここでしか手に入れることのできないグッズが揃います。
武内先生のイラストが表紙を彩る「豪華版ノート」1540円(税込み)。  
©Naoko Takeuchi
「缶バッジコレクション(ブラインド)」440円(税込み)。どのセーラー戦士が出るかはお楽しみ。
カフェには、セーラー戦士をイメージしたフードやドリンクなど、目移りするメニューがたくさん。月の形の卵がかわいい「月にかわっておしおきオムライス」は1650円(税込み)です。

カラフルな「セーラー戦士のペアソーダフロート」は950円(税込み)。セーラームーン&ちびムーン、セーラーマーキュリー&セーラージュピターなど、セーラー戦士たちがペアになったドリンクです。

「美少女戦士セーラームーン ミュージアム」の開催は2022年末まで!

こちらは、今回のために新たに描き直された、美しいセーラー10戦士のイラスト。  ©Naoko Takeuchi
「美少女戦士セーラームーン ミュージアム」は、武内直子先生や、担当編集者・小佐野さんをはじめとしたスタッフの皆さんが、作品のファンをとことん楽しませたいという想いの詰まった、特別な場所でした。

ミュージアムの開催は2022年12月30日まで! ここまでの数の原画が見られるのは、今回が最後かもしれないとのこと。この機会を見逃さないでくださいね。
美少女戦士セーラームーン ミュージアム
会期/2022年7月1日(金)~2022年12月30日(金)
   vol.1 7月1日(金)~9月4日(日)
   vol.2 9月10日(土)~11月6日(日)
   vol.3 11月12日(土)~12月30日(金)
休館日/9月5日(月)~9日(金)、11月7日(月)~11日(金)
時間/10:00~18:00(最終入場17:30)
   vol.2以降の土日祝は10:00~20:00(最終入館19:30)
場所/六本木ミュージアム 東京都港区六本木5‐6‐20
料金/〈前売〉一般 2000円、中学・高校生 1200円、小学生 600円
   〈当日〉一般 2200円、中学、高校生 1400円、小学生 800円
※日時指定制。前売券はイープラスにて販売。当日券はイープラスまたはミュージアムの窓口にて館内の滞留人数に余裕がある場合のみ販売します。
写真/金 栄珠
取材・文/山口真央
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やまぐち まお

山口 真央

編集者・ライター

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。