
発達障害の特性がある子と暮らす家族へ 子育ての難しさと「頼る勇気」〔言語聴覚士/社会福祉士〕が解説
#20 発達障害の特性のある子どもの「家族」へ~最終回~ (2/3) 1ページ目に戻る
2025.12.13
言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也
発達障害の特性のある子にとっての「家族」
発達障害の特性のある子どもにとって、もっとも身近でもっとも長い時間をともに過ごす存在である家族には、その子に対して「できること」がたくさんあります。
このコラムでは、その中でも大切なこととして
①子どもの健康を維持すること
②子どもの「自分らしさ」を育てられるように関わること
③ワクワクすること、やりたいことを持てるようにサポートすること
④選択の機会を作ること
についてお話ししてきました。
家族は大きなストレスを抱えがち
第10回のコラムでは同時に、家族自身が生き生きと生活することこそが、子どもの生き生きとした暮らしにとって重要であることをお伝えしました。
しかし、実際には発達障害の特性のある子と暮らす家族は、大きな不安とストレスを抱え、自分らしさや喜び、幸せを感じられなくなっていることがとても多いのです。
母親にとっては、子どもとの関わり方や育て方がわからない、定型発達の子どもとの比較、集団生活での他の子どもとの関わりについての不安、他のきょうだい(きょうだい児)の養育が十分にできないことなどが大きなストレスになります。
さらに子どもの状況について父親との認識の違いから夫婦の関係にヒビが生じ、本来、助け合う関係であるはずの夫婦なのに「助け合う」ことが難しくなることも多々あります。加えて祖父母の思いや意見、感情によって、状況はさらに悪くなったりもします。
きょうだい児はそういった家族の危機を察知して幼いうちから「いい子」にふるまうことが多いものの、それはいつガタガタと崩れ落ちるかわからない危うさをはらんでいます(第16回)。
発達障害特性のある子の子育てはなぜ難しいか
発達障害特性のある子どもを育てる難しさの多くは、脳の機能的特性からくる彼らの「困った行動」に起因します。
例えば、いわゆる「触覚過敏」は極端な偏食や決まった服しか着ないなどの行動につながります。また「コミュニケーションの不器用さ」のせいで、スムーズに人間関係を築きにくいため家族をはじめさまざまな困難が起きてきます。
強い「こだわり」があると、登園中に工事中だからいつもと違う道に行こうとすると「いつもの道でなきゃいやだ」と暴れる、などのことが起きます。
新しい場所やいつもと違う状況が苦手な子、みんなと一緒に活動することに興味がない子だと、運動会などの催しに参加するのが難しく、ひとりでぽつんとしている姿を見たり、隣の子を過剰にかまったり泣き叫ぶのではないか、と行事のたびに身の縮む思いをする保護者はたくさんいます。
衝動性が高い子だと握った手を振りほどいて道路に飛び出しかねないので、外出時は一瞬たりとも気を抜くことができません。
「困った行動」への対処が難しい理由
これらの行動への対処が難しいのは、定型発達の親にとって、発達障害の特性のある子がなぜそういう行動をとるかがわからないからです。自分自身も、定型発達のきょうだい児やよその子もそんなことはしない。なのになぜこの子はこうなのだろう?
子どもの行動の理由がわからなければ、どう対処していいかわからないのは当然です。しかし、わからないとはいえ、とにかくこの子を育てなくてはならない。
だから両親や家族は、𠮟ったり、なだめたり、放置したり、いろいろやってみるけれど上手くいかない。その繰り返しの中で、家族は消耗します。そして本来の親子のあたたかいつながり、家庭の安心感といったものがくもってしまうこともあります。親も人間である以上、それは無理からぬことでもあります。





















































































